有機JASなのに必ずしも信頼できないのはなぜ?農学博士が教える、有機JASの肥料に使われているカリウムから解く有機JASの真実。
今まで、リン酸、窒素、土壌コロイドの話をさせていただきました。
下記にまとめているので、時間のある際に目を通してくださいね!
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これからは土で野菜を選ぶ時代です| 植物の栄養にとって最重要栄養素である、意外と知られていない窒素②「農学博士」スエタローが教えるオーガニック農業講義vol.4〜
これからは土で野菜を選ぶ時代です| 植物の栄養にとって最重要栄養素である、意外と知られていない窒素③「農学博士」スエタローが教えるオーガニック農業講義vol.5〜
これからは土で野菜を選ぶ時代です| 植物の栄養にとって最重要栄養素である、意外と知られていない窒素④「農学博士」スエタローが教えるオーガニック農業講義vol.6〜
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今回の記事では、カリウムについて学んでいきましょう。
カリウム、と言われてもピンとこない方も多いのではないでしょうか?
カリウムは、植物体内における養水分の移動に大きく関係しています。
トウモロコシの子実・芯・茎葉の分析で、カリウムは茎葉に多いです。
これは、養水分の移動と大きく関係しているのではないか?と考えているのです。
カリウムついて学習していくと、実は、有機JAS認定資材の落とし穴にぶち当たるのです。
私は、個人的には、「有機JASを信用するな!」ということを伝えたいです。
有機JASが必ずしも、
『オーガニック・健康な野菜等の生産』というものにつながっていかないという事例を報告します。
有機JASの肥料に使われているカリウムの実態
ブラジル、サンパウロ州の日系移住地での事例
図1にカリウムの動態結果を示します。
ここは、雨季は毎日ゲリラ豪雨(雷ゴロゴロの強い雨)です。
そして、リン酸は簡単に土壌の下の層に落ちないことを示していました。
しかしながら、カリウムはどうでしょうか?
トウモロコシ栽培前後、葉が生い茂った頃(穂ができる前の葉が青々とした状態)の含めて、
どのように変化をしていますか?
土壌の表層を見てみましょう。
トウモロコシの種を植え付ける前は●印ですね。
青々と育っていた時期が▲、そして収穫した跡が■ですよね。
どうでしょう?
種を受け付けた時期が一番多く、だんだん減っていることに気が付きませんか?
これは、「トウモロコシによってカリウムが吸収された」と考えることができますが、
これだけではありません。
下層30cm付近に注目しましょう。
▲と■のみですけど、青々としていた▲が1.5mmolc/dm3だったのに対して、
収穫後の■では3.0 mmolc/dm3にまで増えていますよね。
青々とした状態から収穫までの間に、カリウムの量が倍に増えているわけです。
これはどういうことでしょうか?
実は、「カリウムはトウモロコシに吸収された以外、表層の養分が下層に落ちた」と考えることができるのです。
さらに、50cm付近はどうですか?
30cm付近ほどではないですけど、収穫後の■が青々とした状態よりも▲よりも若干多くなっていますよね。
これは、カリウムは比較的移動しやすい塩基類であるということがいえるのです。
つまり、『溶脱(ようだつ)』しやすいということですね。
×のサンパウロ大学の圃場でのデーターと比較しても分かりますように、
カリウムも過剰に使われてきたことが伺えます。
ですから、作物による吸収量も高いことの他、
吸収しきれなかった余ったカリウムは、溶脱しやすいということも考えられます。
このことが、この土壌の断面調査によって明らかにすることができたということです。
京都市西京区での事例
図1はブラジルの広大な土壌であるため、露地での栽培でした。
今度は、京都市西京区にあるコンサル先有機野菜栽培メーカーでの結果を見てみましょう。
ここでは、施設野菜の圃場と露地の両方を示します(図2)。
共通事項はもうお分かりですよね。
表層が高くて、下層に下るにつれて、カリウムが低くなっています。
図1のブラジルと同じ状態です。
施設も露地も、当たり前のような図なのですが、
施設では、露地よりも明らかに過剰に集積しているということが想像できますよね。
雨がなく、灌水のみですから。
それに対して、露地では雨にさらされます。
溶脱はしていますけど、表層と下層30cmに注目してみましょう。
施設の表層は2.64、下層30cmは0.57meq/100mlですけど、
露地は表層が0.89、下層30cmは0.29meq/100mlですね。
なお、露地はマルチングしています。
同じ有機野菜栽培メーカーの借地です。
ですから、有機JAS認定のカリ肥料の施用量は基本的に同じでした。
しかし、施設は雨がありませんから、
この土壌の表層のカリウムは露地よりも高いことが分かりますね。
他方、露地はカリウムの溶脱量が高いわけですが、
下層30cmおよび50cmにおいても、施設よりも低い結果です。
これはおそらく、雨による溶脱の影響でしょう。
しかしながら、両圃場とも、表層のカリウムが下層よりも高いということは、
やはり過剰施肥の影響が大きいといえます。
これは、Vol1号で報告したリン酸の過剰施肥と同様です。
それでは、なぜ、私がカリウムにおいても過剰施肥であったといえるのか?
これについては続きを読んでくださいね。
有機JAS認定のカリ肥料とは
草木灰
有機JAS認定資材とは、簡単に記すならば、
化学的(人工的)に合成された資材ではなく、天然の資材であるということです。
ですから、有機肥料全てが有機JAS認定ではなく、
別途、天然の鉱物系土壌改良資材(酸性白土やゼオライト等)や次に説明する塩化カリにおいても、
有機JAS認定資材があります。
さて、この草木灰(ヤシがら灰等、種類も多い)ですが、
一般的にもよく知られている有機質資材の一つです。
もちろん、園芸店や大型スーパーの園芸品売り場でも、よく見かけますよね。
表1に、今まで使用着てきた草木灰の全分析の結果を示します。
実は、この草木灰が、有機JAS認定の唯一のカリ肥料と称しても過言ではありません。
しかし、これはカリウムの他、リン酸、カルシウムおよびマグネシウムも含有していますし、
実際、カリウムよりもカルシウムの含有率が高いことにお気づきでしょうか?
また、アンモニア態窒素よりも硝酸態窒素が多いですね。
これは想像ですけれど、施用されたアンモニア態窒素が、
速やかに硝酸化成作用によって硝酸態窒素に変化し、植物体に集積されていったことが考えられますね。
この草木灰というのは、植物の茎葉等を燃やして残った灰が主成分ですから、
基本的には『無機物』なのです。
ですから、これらの養分は、速やかに土壌表層に流れ込んで、集積していくと考えられます。
そうです。
カリウムを与えているつもりであっても、この草木灰の連用が、
不要なリン酸、カルシウムおよびマグネシウムを蓄積させてしまう可能性があるのです。
Vol2のトウモロコシの子実・芯・茎葉の養分吸収量を見ても分かりますよね。
リン酸、カルシウムおよびマグネシウムの吸収量は、窒素やカリウムよりも少ないですよね。
有機質カリウム肥料として施用しているつもりが、
実は過剰施肥土壌を形成してきたという一つの実証データーともいえるのです。
塩化カリ
私は偶然、ある肥料メーカーから、
有機JAS認定の塩化カリ(天然のカリ鉱床から)を入手することができました。
カリ欠乏が激しい状態であった場合(写真1)、緊急的にカリ肥料を施用することも重要でしょう。
しかし、私の経験から、カルシウムおよびマグネシウムが過剰集積した土壌では、
その施用効果もあまり期待できなかったということです。
これは、カリウムが移動しやすく、かつ流れやすいということが要因だったと考えています。
ですから、カルシウムやマグネシウムが過剰集積した土壌ではなく、
塩基飽和度として50-80%程度の適当な土壌条件であれば、
カリウム欠乏に対するカリ肥料の施用効果が期待できると考えています(パナマの経験からも)。
それに対して、カルシウムおよびマグネシウムは溶脱しにくく、
土壌コロイドにへばりつきやすいものであると考えてください。
以前、土壌コロイドの説明もしましたよね。
覚えていますか?
覚えていない方はぜひ読んでみてくださいね。
カリウムに関しては、後程、
ケイ酸塩粘土鉱物と併用した形での土壌改良法のところで、話をしようと思っております。
有機JASを100%信用するな!
完全な有機物による有機農業はあり得ない
『オーガニック』ならびに『私たちの健康』をテーマとしたいのであるならば、
完全な有機物による有機農業はあり得ないと思ってください。
極論のように思えるかもしれませんが、実は、有機JASの落とし穴を説明したいと思います。
このことは有機JAS認定資材に限らず、
副成分を含んだ有機肥料というのは、どこかで何かがだぶるものです。
つまり、施用される肥料養分の過不足を効率的に調節することができないのです。
ですから、以前、鶏糞堆肥を有機窒素肥料という形で用いた場合、
植物の養分吸収の特性の違いも含めて、リン酸の過剰蓄積を招いてしまうことは説明しましたね。
草木灰もそうです。
京都のコンサル先においても、有機質カリ肥料として使用してきたということでしたが、
リン酸、カルシウムおよびマグネシウムの過剰蓄積を促進させてしまう等、
いろいろな問題があったわけです。
これは、土壌分析によって実証済みです。
有機肥料100%がオーガニックではない
全ての事例を紹介してもきりがないですが、基本は、
「有機肥料100%がオーガニックではない」ということを宣言します。
私はどこに着目しているのか?
もうお分かりですよね。『土壌』です。
土壌の健康であって、不必要な養分を過剰に蓄積させてしまう有機農業であるのならば、
そんな有機農業は実践しないほうがいいです。
完全に不必要な養分を集積させないことは難しいですが、
土壌分析によって、有機肥料や化学肥料、土壌改良資材等を効率的に配合し、
施用することが土の健康+高付加価値野菜類生産にもつながり、
これこそ、正しく、本当の意味での『オーガニック』であると考えております。
ですから、『全て有機肥料を使っていることがオーガニックである』
という固定概念が築き上がっているのであるならば、その壁は壊すことが先決です。
このことについては、カルシウムおよびマグネシウムのところでも取り上げていきます。
ヨーロッパの有機肥料の真似をするな!
追伸として、日本は、
ヨーロッパが基準としている有機農業を推奨することには無理があることも徐々に説明していきます。
その主な理由は、ヨーロッパは西岸海洋性気候、日本は大陸性気候だからです。
中学社会の地理、高校地理をもう一度見直してみてくださいね。
今日はこの辺で。引き続きよろしくお願いいたします。
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