実践編|これさえ覚えれば簡単!コマツナポット試験の方法とは?【緊急特別編そ①】「農学博士」スエタローが教えるオーガニック農業講義vol.8
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はじめに
本号と次号は『緊急特別編1』とさせていただきます。
本号では、前号で報告してきたコマツナポット試験におきまして、
永続的に長く続けられるやり方をお伝えいたします。
「長く続けられるってどういうこと?」と思われることでしょう。
土壌条件あるいは生産者の土壌別、
または使用したい有機肥料、有機質資材等が数多く存在する場合、
一度に全部のポット試験を行うことは不可能ですよね。
例えば、「今回のポット試験で60個のポットを設けなければいけないとなったらどうしますか?」
これは、同じものを3つ用意して平均値を出すにしても、20種類の試験を同時にやることになります。
口でいうのは簡単ですけど、とてつもない数になりますよ。
嫌になって、「あーどーでもいいや!」で終わって、
結局は中途半端になっていまうことは目に見えています。
「どうやったら続くのか?」 簡単です。
分割すればいいんです。最初に10個、残りは別の日にやる。
でも一つの疑問がありますね。「だって、季節の違いも含めて、
同じ条件で試験しないと比較にならないんじゃない?」
確かにそうですね。春先に行った試験と夏場であれば、同じ施設でも気温差がありますから、
生育は違いますよね。夏場が旺盛な生育をしますよ。
まして、単純なビニールハウスでやるならば、なおさら、季節の違いが出てきます。
「じゃ、どうするの?」
この季節感や時期による違いを無視することができ、
かつ永続できる有益なポット試験の仕方を説明していきます。とっておきの究極法ですよ。
私の学生時代の卒論の成果を例にして説明していきますね。
いずれにしましても、生産者に限らず、家庭菜園レベルでも、
「どの資材がいいかな?」という場合においても、自分の目で確かめられる簡易的な方法ですよ。
1.簡易コマツナ栽培比較試験における
収量比の概念を用いることの便利さ
1).農家さん別の土でのコマツナを用いたポット試験の実施例
前号で報告した『収量比』という言葉を覚えておりますか?市販牛糞バークと自家製堆肥における比較試験で用いた言葉でしたね。
今回、私が学生時代に実施した、
北海道網走地方の営農集団内・別でのサトウダイコン栽培跡地土壌を用いて、
これをコマツナによるポット試験を実施したのです。
この目的は、必要以上の肥料のやりすぎ(有機物も含めて)により、
土壌の診断基準値を上回る結果であったことです(卒論の成果の発表ではないので、
土壌の分析結果の報告は避けます)。こういう状態で、作物はどのような生育を示すのか?
今回は、40名以上の生産者の圃場の土壌を持参し、同じ施設の中で、
生育の違いを比較したというものなのです(卒論の一部です)。
2).対照区(たいしょうく)を設ける
実は、私はこの40種類もの土壌におけるコマツナ幼植物ポット試験※を完結させるには、
もちろん、一度にはできません。一人でやるわけですから。
そうすると、重要なことはこれを分割して、評価することで、
4分割して実施したのです(表1)。
※ 播種して3~4週間程度で収穫する。
コマツナは幼い子供状態で、幼植物という言葉を使います。
ちょうど昭和63年、その翌年が平成元年ということで、今思うと貴重な時期ですよね。
ここで重要なことは、各幼植物ポット試験毎に対照区という、
別の土を設けて、コマツナ幼植物試験を実施したのです。
この対照区を設けることが大切なのです。
2.収量比を用いたコマツナ幼植物全体の収量の違い
1).対照区のなす意義
表2に、各農家別のコマツナの乾物収量(コマツナを収穫後、よく洗ってから、乾燥機で乾燥させた後に電子天秤で測定しました)の他、
対照区の収量比を1としたときの各農家でのコマツナの収量比を示します。
どうですか?
第一回から第四回までの試験において、それぞれ対照区を設けていますよね。
さらに、写真1に第一回目幼植物試験の写真を示します。
例えば、第一回幼植物試験の農家1の乾物収量は1.20gでした(三つの平均値です)。
第一回目の対照区の乾物収量1.17gでした。
前号でも紹介しましたね。対照区の収量を1にしますから、
対照区の収量比は、1.17÷1.17)1ですね。
農家1の場合は、1.20÷1.17=1.03になるんです。
このように計算していくと、第一回目試験の全農家さんの収量比が計算できます。
2).第二回目と第一回目幼植物試験における乾物収量の違い
第二回目はどうでしょうか?お分かりですね。
第二回目も第一回目と同じ土で対照区を設けています。
第一回目の対照区の乾物収量は1.17g、二回目は1.79gですね。
これらは乾物ですから、新鮮状態ですと、
その生育は大きく違いますよ。コマツナですから、90%は水分ですからね。
ほとんどの野菜類がそうですけど。
当初の疑問のように、乾物収量は、春先と夏場では大いに開きがありますから、
単純に比較できないことは明白ですよね。夏先の高温時が生育が良好なのは当然ですよ。
3).各幼植物試験における対照区を1としたときの収量比では?
第二回目の対照区の乾物収量を1としたときの収量比ではどうですか?
例えば、農家10の乾物収量は1.24gでした。第一回目の農家1とほぼ同じ乾物収量です。
でも、対照区の乾物収量は第一回目と第二回目では大きく違います。
ですから、第二回試験における収量比は、もちろん、
第二回目に同様に栽培した対照区の収量比を1にして求めますよね。
1.24÷1.79=0.69になりますね。
どうですか?夏場だからといって、収量が高いと思ったら大間違いですね。
対照区を設けるって面白いでしょ。
全てを説明しているときりがないですが、
このように、農家さん別の圃場の土壌であっても、各試験実施事に、
対照区(必ず、対照区の土壌は同じ対照区の土壌を使いますよ。
違うのは、栽培時期だけです)を設けることで、
季節や気温差等を無視することができるのです。
全試験に用いた農家さんの土壌は、同一条件で試験されたことになります。
4).幼植物ポット試験は多様な目的で使用できる。
4)-1.市販有機肥料・有機質資材と自家製資材との肥効比較
前号でも報告しましたように、市販の牛糞バークと自家製堆肥の肥効比較試験もできますね。
これこそ、正しく幼植物ポット試験を実施しなくてはならないという、
本当の大義名分だと思っております。
前にも書きましたように、未熟な状態とはいわなくても、
まだ、雑草の胞子が死滅していない状態であったら、
この堆肥を散布した後、雑草の繁茂が怖いということになります。
それと同時に、多くの自家製資材を比較したいけど、
一度に大量に実施できない場合は、私の卒論で実施したのと同様、
別の土を用いた対照区を試験実施事に設けることです。
この他、わざわざ、別の土を用いた対照区でなくとも、
市販堆肥の収量を対照区代わりに使うことも可能ですよ。その代わり、
この処理区を毎回、幼植物試験を実施する毎に設けないといけませんよ。お分かりですね。
4)-2.私の卒論→農家さん別の土壌の地力の比較
私の卒論内容は、農家さん別の土壌の過剰施肥の実情と同時に、
そのことが地力とどう関係あるのか?でした。
結論は、『作物が要求する以上の施肥をしている。
だからといって、そのことが収量に結びつきません。
だから、ムダだから減らしなさい!』ということだったんです。
3.対照区を設ければ
何回に分けてポット試験が継続→永続する
1).コンサル先における試験概要の説明
京都市西京区での野菜栽培メーカーのコンサルティングにおいては、野菜類不適重粘土ならびに過剰施肥土壌の改良であったのです。
これは、代表取締役の借地における重大なミスです。
土壌の断面調査、化学分析をきちんと実施しないで、
立地条件で決めてしまったということが挙げられます。
そのこともあり、適地適作や土の理化学性をきちんと把握していないという一事例であり、
このことは多くの就農者にも該当します。
写真2 京都市西京区における野菜栽培メーカーにおける
コンサル業務におけるコマツナ幼植物ポット試験, 2017-18.
そういう中でも、写真2でも示しますように、多くのバリエーションに富んだ栽培比較試験を実施し、
有機JAS認定の資材に限り、これを効率的に配合する等、駆使して取り組んできました。
そして、同メーカーによる従来のベビーリーフの培養土※2において、
塩類集積等の問題を発見し、従来法に対して、
私が改良したものが写真左上になります(『私による改良法の展開』と表示していますよね)。
※2 写真右上で、再生培養土として、
一度使ったら、鶏糞堆肥や米ぬか等を混入して再発酵して使ったいた
とにかく、生産者に限らず、私たちもこのような実情を受け止め、あらためて、
「オーガニック・私たちの健康」について真剣に取り組みたいのであるならば、
その前に『土の健康』→『高品質・高栄養価食材(野菜や果物等)の確保』と同時に、
『環境保全』ということを考えてもらいたく、連載を開始したことになります。
2).土壌改良に関する主な二つの戦略
2)-1.化学療法戦略
別号で、この幼植物ポット試験における成果を報告していきますが、分母だけ記しておきます。それは、医療でいう『化学療法』戦略です。
土壌は、田んぼ後の粘土質かつ過剰施肥で、施設野菜の栽培に不適な土壌です。
露地も不適で、一部、ナスは適しており、近隣の生産者は栽培しておりました。
このような悪条件土壌を、有機JAS認定土壌改良資材を駆使して、土壌改良試験を行ったということです。
もちろん、対照区を設けて、すべて収量比でコマツナの生産の違いを比較しております。
結論は限界ありでした。
2)-2.骨髄・臓器移植+化学療法戦略
『骨髄・臓器移植』とは何を指すのか?前号でも触れましたように、これは『客土』です。
実際、医療の現場では、適合する骨髄や臓器等、大変な問題ですよ。
それ待っている患者んさんは・・・。
まっ、それから考えたら、土壌の客土は簡単ですよ。
ここが、ラテンアメリカにおける劣悪な貧栄養土壌の改良という仕事、
日本農業のタイムマシーン(農地改革前、化学肥料普及前の時代等)ではないですが、
この活動を通じて、いつしか、初心に戻ることができました。
肝心な客土資材として、野菜類の栽培に適する火山灰を由来とした黒土
(関東ローム層の土:栃木県宇都宮市近郊から産出)を、
野菜を栽培する畝に客土するという考えです。
この場合、粘土質土壌に混ぜるのではなく(混ぜても過剰施肥土壌は改良されません)、
小型のバックホーを使って、野菜栽培畝土壌に的を絞って、
深さ30cm位まで掘り下げて、左側に置きましょう。
その後、右側に置いた新しい酸性の黒土を、
スコップ等(バックホーが使えたらそれでもいい)で入れていくという作業です。
それプラス、前記、化学療法、
つまり有機JAS認定土壌改良資材を駆使した形での土壌改良法の実践でした。
この試験は、コマツナによるポットのみならず、植木鉢での簡易いちご栽培試験、
微生物活性による評価、圃場でのカボチャ栽培簡易試験も実施しております。
「こんなの無茶だよ!無理だよ!」という言葉が多かったのは事実ですが、
「全部の圃場とはいわず、小規模でやってみて、
高品質・高栄養価。高付加価値がつくものが生産できることが実証できたら、
次どうするのか?少しずつ客土していく手もある」とコメントしました。
これはあくまでも非常手段です。
ですから、『骨髄・臓器移植』という言葉を使わせていただきました。
いずれにしましても、これらの結果もすでに取りまとめておりますので、機会を見て、ご報告いたします。
次の緊急特別編は、エクアドルでの乾燥アンデスにおける調査研究からの、
過剰施肥土壌における適地適作・高栄養価植物の生産についてです。
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