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1食白米3合のノルマの弊害。スポーツに励む子どもの成長に必要な栄養素と食生活とは。

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先日、「1食3合の米を食べろ。」と
過酷なノルマを課される小学生達の記事を読みました。

記事では、強豪少年野球チームが、放課後から夜9時まで練習を行い、
帰宅後は夕食に米3合のノルマが待っており、
夜0時までかかって食べるという、壮絶なもの。
少年は投手でもあり、「食べないと試合で投げさせてもらえない。」
と監督から米3合のノルマを与えられているとのこと。

しかも、「おかずは食べなくていい、米だけを食べればいい。
塩だけで米を食べろ」と選手達に言っているという。

引用:毎食「米3合食え」と迫られる野球少年の壮絶 東洋経済新聞社 2018年11月03日

近年は食育に取り組む部活動やクラブチームが多い。



ここ最近、プロスポーツに励む選手を支える奥様やお母さまが
メディアでも多く紹介され、
食に対する意識が非常に高くなってきた、と年々感じています。

今社会人の息子や大学生の娘が小学生だった10年以上前にさかのぼりますが
当時2人が所属していたミニバスのチームでは、
今ほど身体作りにおいて食を重視していなかったように思います。

しかし5年程経過し、野球をしている次男が高学年になってから、
そういった『食トレ』と言われる言葉を聴くようになりました。

そしてクラブチームでも「食トレ」と呼ばれるトレーニングを
採択されているチームも多く見受けられるようになりました。

5年前、息子が中学で所属していたクラブチームに入団する前の個人面接では
「野球は無差別級スポーツ。
だから家でも持参する弁当でもたくさん食べさせてください。」と言われました。



そのチームも弁当は米2合以上、おかずも同等というノルマがやはりありましたが
普通に食べて、練習が終わってから寄り道をして補食、
家に帰っても2合とおかず、フルーツを食べていました。

平日練習がない日は、帰宅後、
夕飯までの間に近くの牛丼屋や定食屋で補食をする生活を3年間続けた結果、
中学時代は身長25cm伸び、体重は25kg増加しました。

しかし息子のように「食トレ」に関してあまり苦にならない選手もいれば
そうでない選手もいることも事実です。

しかも、冒頭で触れたように
「おかずは食べなくていい、米だけを食べればいい。
塩だけで米を食べろ」というのはどうでしょうか。

しかも記事内はまだ小学5年生。
米3合だけを練習後に食べなければならない、
その根拠はなんでしょう。

米に含まれる栄養をおさらい。



素早くエネルギーに変わる、炭水化物。
筋肉、皮膚、内臓を作る材料になる、たんぱく質。
多くのエネルギーを生み出すと言われている、脂質。
糖質のエネルギー化をサポートし、疲労回復を促すビタミンB1。
脂質のエネルギー化をサポートし、身体の成長を助けるビタミンB2。
腸のおそうじをして、便秘や病気を防ぐと言われる食物繊維。
骨や歯の材料となり、筋肉の動きをサポートする、カルシウム。
体内の血圧や水分を調整する、ナトリウム。

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満腹になることと栄養素が十分ということは、イコールではない。


ご飯だけを食べることによって起こりうる弊害とは?

ご飯(白米)の成分の中では、
7割以上が炭水化物で構成されており、
体内ではこの炭水化物が糖として分解されていきます。

食べ物を「ご飯だけ」に偏ると常に糖が補充されている状態が続き、
血糖値が上昇します。
以下でそれを説明しますね。

血糖値が上昇するとそれを下げるためにインスリンが放出される

ご飯は糖のなかでも「多糖類」に分類され、
食物として口から摂取した糖類は体内で消化酵素によって
1個1個のブドウ糖に分解されて血中に放出されます。

このときに血糖値が上がらないように、膵臓からインスリンが出てきて、
余ったブドウ糖を筋肉細胞に取り込み、グリコーゲンへと変えていきます。

しかし、このグリコーゲン。細胞内に取り込める量には限界があり、
あまったブドウ糖は中性脂肪に形を変えて脂肪細胞に取り込まれます。
これが肥満の原因でもあるのです。

ちなみに中年男性のポッコリお腹の中の脂肪は、油っぽいものを食べたからではなく、
糖質を過剰摂取したことで、余ったブドウ糖が中性脂肪に姿を変えたものです。

常に満腹になるまで食べる生活を続けていると、
膵臓からのインスリンの分泌コントロールがきかなくなり
糖尿病を引き起こす原因にもなりかねません。

出典:ダイヤモンド社 医学博士 牧田善二著

「おかずはいらない。ご飯だけを食べろ。」とご飯のみに偏った食事を促すことは
そういった危険性もはらんでいるということなのです。

人間の身体は血糖値が上がると、満腹感を感じてしまいます。
血糖値を上げないよう、以下に挙げる三大栄養素である
炭水化物・タンパク質・脂質、そして微量栄養素のビタミン・ミネラルといった、
栄養バランスのとれたおかずと一緒に食べることで、
美味しく栄養を摂取することができます。ご飯3合も食べなくてもいいのです。

では”食べる量”はどうやって増やせばいいのか・・・。

それを次で説明しますね。

成長期に必要な摂取カロリー



成長期に必要なエネルギー必要量(Kcal/1日)はおおよそですが、
一般的には以下の数値と言われています。

小学生はだいたい1,800~2,000Kcal/1日、
中学生はだいたい2,500Kcal/1日、
高校生になると、だいたい3,000~3,500Kcal/1日
※高校野球をするお子さんの場合になると摂取量が2~3倍と増えます。

ご飯3合だと1500kcal に相当しますが、
ご飯だけで、しかも一度に補うことは前述にもあるようにおすすめできません。

身体の成長に必要なエネルギー源として働くのはバランスのとれた”エネルギー産生栄養素。

日本人の食事摂取基準2015によると、1日に必要なカロリーのうち、
タンパク質、脂質、炭水化物の理想の摂取バランスは、
タンパク質 15%(13-20%):脂質 25%(20-30%):炭水化物 60%(50-65%)
が望ましい
と言われています。

食事は、私たちが生きていくうえで不可欠なものです。

食事を摂ることによってエネルギーを産生し、
組織・細胞をつくり、からだの機能を維持することができます。

からだが必要としている栄養素は、
主にエネルギー源となる炭水化物・脂質・タンパク質、
からだの組織をつくるタンパク質・ミネラル、
これらの機能を調節するビタミン・ミネラルです。

これら5つの栄養素(炭水化物・脂質・タンパク質・ミネラル・ビタミン)を
「五大栄養素」と呼んでいます。

その中で、エネルギー源として働く3つの栄養素が「エネルギー産生栄養素」です。

(出典:森永製菓『簡単、わかる!プロテインの教科書・エネルギー産生栄養素とは?エネルギー産生栄養素の基本、理想のバランスなどをわかりやすく解説

炭水化物だけ(ご飯だけ)、またはタンパク質だけ、といった
偏った食生活を続けていると、からだの組織作りがうまくいかず、
パフォーマンスの低下を招く原因にもなりかねません。
また糖質ばかりだけ(ご飯だけ)を摂ることにより、
糖尿病になるリスクを自ら作ってしまうことにもなりかねません。

まさに私達のからだの細胞は私達が食べるものでできているのです。

たんぱく質

*たまご・魚・肉・豆腐など
*アミノ酸まで分解される。
*一度に多く食べてもオーバーした分は排泄されてしまう。

脂質

*植物油・ナッツ類・チーズなど
*細胞膜の構成部分として役立っている。
*体脂肪として蓄えられる

ビタミン・ミネラル(カルシウム含む)類

*野菜類・海藻類・乳製品
*骨を作る。代謝をスムーズにさせる。
*体内で貯蔵することができない。

これらは一度に食べても貯蔵ができないものが多いため、
小分けにして食べればいいのです。
米に塩だけではなく、栄養バランスの摂れたおかずと一緒に摂ることが
何より必要なのです。


晩ごはんに気をつけるべき食事法とは?


プロ野球選手の食生活で大切にしているのは、”食物を消化すること”と”疲労回復”。


プロ野球選手の奥様方からのお話では
「帰宅して一度に大量の食事はしない。させない。」とお聞きしました。

少年野球の監督が「米3合食べろ。」ということとは真逆のことですよね。

理由としては、「消化に時間がかかるから。」ということなのです。

プロ野球選手は仕事柄ナイターの日程が多くなります。
帰宅後、食事を摂る時間がどうしても遅くなってしまうため、
とにかく消化の良いものをメニューに盛り込み、
疲れを取ることを優先に考えているとお聞きしました。

夜遅くご飯を食べるときにはなぜ消化が必要か?

夜寝ている間も消化活動は体内で行われています。
そのため脳が働き浅い眠りとなり睡眠不足を引き起こす場合もあります。
また、夜間は体の修復の方が優先されるため、
ドカ食いをする、油っこいものを食べるなど消化に時間がかかるものを食べると
消化不良をおこし、胃もたれなどを引き起こします。

(参考:東京西川 『寝る前の食事にはご注意』

寝ている間も身体に負担をかけないように、
夜遅くの食事の場合は消化のいい食べ物を食べることが重要なのです。


また選手生命の要である身体を労わるためにも、
栄養バランスのとれた食事でケガを防ぐ
またケガをしていたとしても回復するための食事を大切にしているそうです。

メニューの詳細はここではお伝えできませんが、
魚料理が多くみられ、具だくさんの汁物やメインをゆでる、
蒸すといった料理を中心としたものが多く、必ずフルーツも取り入れておられました。
肉料理では、疲労回復効果のために豚肉を使っておられる方が多かった印象です。

栄養バランスの摂れたおかずがあってこそ、
それぞれがもつ栄養の相乗効果で回復をサポートするのです。

献立を考える毎日。時には辛い日もある。そんな時におすすめなのは?

具だくさんの豚汁



ピョンチャンオリンピックでもフィギュアスケートの金メダリスト・羽生結弦選手が
試合前日のメニューのひとつとして豚汁を食べていたそうです。

豚肉、いも・大根・ごぼう・こんにゃく・油揚げなど具だくさんで
出汁には昆布、鰹節、(我が家はいりこも使います)、そして発酵食品である味噌。
食物繊維と発酵食品で腸内環境にもいい食品が
ひとつのメニューとして凝縮されている献立です。

野菜蒸し



野菜を蒸すことで野菜の繊維が柔らかく変化し、
野菜の持つ酵素や甘みが増加します。
そして蒸すことで消化もよくなります。
もちろん無農薬の野菜を使うということが重要です。

これらは疲労回復を助けるメニューとして我が家でもよく作っています。
まずは「その日の疲れをとる」「消化のよいものを食べる」ことが何よりも重要です。

「ベストを尽くす」よりも「ベターを続ける」こと



「毎食3合の米だけを、おかずなしで食べる。」

冒頭に出てきた監督の仰るとおりにしていれば
これだけを続けて体重は増加するかもしれません。
しかし身長は白米だけの栄養では難しいと考えます。

栄養面から考えると、炭水化物の摂取だけでは
タンパク質・脂質・ビタミン・ミネラルなど、成長期に必要な栄養分が不足し、
筋肉の動きが滑らかではなくなり、ケガのリスクが高くなる、
なにより血糖値があがり、場合によっては危険なリスクも否めません。

満腹=(イコール)栄養素が十分というわけではありません。
ご飯だけではなく、おかずを一緒に食べることによって
それぞれが持つ栄養の相乗効果が生まれ、
成長期の身体を作っていきます。


それに、お子さんの成長はひとりひとり違うものだという認識が必要です。

食生活は毎日のことです。
そのおかず作りのレパートリーを考えることさえ辛い日もあります。
しかもずっとこれから先何十年も続いていくもの。
毎日ベストを尽くそうと考えていらっしゃる、サポート側の皆様、本当にお疲れ様です。

完璧にしようとすると毎日のことなので本当に大変です。
しかし、ベターを続けていくのはどうでしょうか。

食生活であればちょっとチーズを足してみる。
トッピングにごまやナッツなどを足す。運動後は疲労回復の食べ物を摂る。

また、なるべく生産者の顔の見える有機・オーガニックの物を選ぶなど、
素材に気を配ることも大切です。

体に有害な物質を避けられるだけでなく、栄養の多い皮も食べられたりと、
その恩恵は計り知れません。

生活面では、
夜更かしをさせず、親御さんもお子さんが安心して眠りにつけるような環境づくりをサポートする、
といったことが成長期、特に運動しているお子様にはとても大切なことです。

成長期にとって必要なのは
バランスの良い食事・運動・睡眠。

完璧を目指さなくても、今日からできる事は沢山あります。
みなさまのお子さま方が心身ともに健康に成長されることをお祈りいたします。

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