有機農産物を食べれば農薬の体内濃度が50%以上も下がる!?|再認識したい、ネオニコ系農薬の多大なる危険性
有機農産物を食べると農薬の体内濃度が50%以上も下がる!?再認識したい、ネオニコ系農薬の多大なる危険性
人体に害は無く、害虫のみに対して選択的な毒性を持つとされる、
ネオニコチノイドと呼ばれる成分をベースとした農薬・殺虫剤
(以下、ネオニコチノイド系農薬)が、現在、広く販売・使用されています。
ところが、このネオニコチノイド系農薬が出回るようになってから、
世界中でハチの姿が消える現象が起きたり、
人体における健康被害が報告されたりと、
環境・人体共にその危険性が世界規模で問題化しています。
そこで今回は、このネオニコチノイド系農薬の危険性について改めて振り返るとともに、
スーパーなどで購入できる通常の慣行食材の代わりに
有機農産物を継続して食べることによって、
ネオニコチノイド系の農薬への人体の曝露(=晒されること)を
減らすことが出来たという、最新の話題についてもご紹介したいと思います。
ネオニコチノイド系農薬とは?
一般にネオニコチノイドと呼ばれる化合物は、
・アセタミプリド
・イミダクロプリド
・クロチアニジン
・ジノテフラン
・チアクロプリド
・チアメトキサム
・ニテンピラム
の7種類です。
これらを主成分とする農薬や殺虫剤は、総称としてネオニコチノイド系農薬と呼ばれています。
1990年代から市場に出回り始め、”脊椎動物より昆虫に対して選択的に強い神経毒性を持つ“ため、
害虫を駆除するがヒトには安全、という画期的な農薬(殺虫剤)として注目されました。
これらは、ヒトへの毒性が高い有機リン系の農薬に変わる効率的な製品として、
また、2000年代に入ると農業を始め家庭用の害虫駆除やペットのノミ対策薬として、
幅広い商品展開を続けてきました。
特に農業においては、根から葉先まで植物の隅々に行き渡る浸透性殺虫剤として、
“作物全体を害虫から守ることの出来る効果的な農薬”という宣伝文句の元で流通し、
現在、農地等で大規模に商業利用されています。
画像引用元:一般社団法人アクト・ビヨンド・トラスト
ヒトに一切害は無く、花や葉を食い荒らす害虫だけを選択的に駆除するというのですから、
農家や園芸家にとっては作業の効率をあげ、その上、虫喰いの無い、美しい野菜や花を
出荷することが出来る画期的な農薬と言われた「ネオニコチノイド系農薬」。
ところが、2000年代に入った頃から、世界中で環境や健康被害に関するある懸念が囁かれ始めました。
そしてその時期は、ネオニコチノイド系農薬が大々的に売り出された頃と一致しています。
こんなにある!
ネオニコチノイド系農薬の人体への悪影響
繰り返しになりますが、ネオニコチノイド系農薬の使用拡大と同時期に、
世界各地でハチの大量死が相次いで報告されるようになりました。
ハチは雄しべから雌しべへ花粉を運ぶ受粉媒介者として、
農業において重要な役割を果たしています。
このハチがいなくなることによって、農業の生産現場に深刻な影響が出るようになりました。
そして、時を同じくして、人間の健康被害も報告されるようになりました。
死亡例も!ネオニコチノイドによる健康被害の実態
2012年までに、世界各地で、ネオニコチノイドであるアセタミプリドとイミダクロプリドによる急性中毒での死亡例が10件以上も報告されています。
急性中毒の主な症状は、血圧や脈拍などに現れる循環器系異常、痙攣やめまい、
意識障害などの中枢神経系異常、呼吸器および消化器系の異常です。
また日本国内でも、群馬県で松枯れ対策としてネオニコチノイド(アセタミプリド)を主成分とする
農薬が散布された後に、不調を訴えて地域の病院に訪れた患者が急増したという報告があります。
報告によると、患者の数は農薬の散布地点から近いほど多く、年齢は下が2歳から上は86歳まで、
100人近くもの患者が散布後の数日間に来院したそうです。
彼らが訴えた主な症状とは頭痛や全身倦怠感、睡眠障害や記憶障害などの中枢神経症状、
肩こりや痙攣などの骨格筋症状、循環器および体温症状など、
ほとんどの患者に心電図異常があったといいます。
他にも、農薬の残留量が高いと思われる食品を長期間・大量摂取したことが理由と
考えられる患者やその症状についての報告もあります。
「亜急性毒性」と呼ばれるこの症状は、1ヶ月から3ヶ月ほどの比較的短期間に
繰り返し毒性成分に晒されることで生じる中毒のこと。
症状としては全身倦怠感や頭痛、震えや記憶障害で、病院を受診した患者の半数が、
受診前の数日間、果物や茶飲料を摂取していました。
そして、その果物や茶飲料の摂取を止めたところ、1ヶ月以内に症状は改善。
さらに、これらの患者の尿からは、やはりネオニコチノイドであるアセタミプリドや
その代謝物が検出され、その多くは国産の果物を1日に500g以上、茶飲料を500ml以上
摂取していました。
参考:一般社団法人アクト・ビヨンド・トラスト
実は私はこれまで、個人的に「国産」というものに信頼感があり、
「国産」であれば大概のものは安全なのだという意識を強く持っていました。
ですがこ上のような事例を見ると、何の根拠も無く「自国のものは安全、大丈夫」と
思い込んでいた自分にハッとする思いがしました。
考えてみれば、地産地消のものだから安全、と考えるのも間違いかもしれません。
オーガニックの記載や有機JAS認定マークがついていない限り、
例えば近隣地域で作られたものでもネオニコチノイド系農薬を使って
作られているかもしれないわけですから。
さらに言うと、現実に、日本は世界でも指折りの農薬使用大国です。
オーガニックに関心の高い方なら既によくご存知のことかもしれませんが、
日本では農薬の残留基準も外国に比べ非常に緩く設定されているのです。
例えば、アセタミプリドの茶における残留基準は、
日本で30mg/kgなのに対し、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドでは
0.1mg/kg、EU諸国では0.05mg/kgという値です。
参照:農林水産省 諸外国における残留農薬基準値に関する情報
「国産」が必ずしも安全ではないという現実は、自分の意識を変えるきっかけになりました。
「吸い込む」、「飲む・食べる」ことで
ネオニコチノイド系農薬は体内に侵入!
ネオニコチノイド系農薬はどうやって体内に入るのでしょうか?農薬を取り込む、いわゆる”曝露経路“には主に吸入と経口の2つがあります。
また農薬が直接皮膚に触れて体内に取り込まれるケースもあり、これは経皮曝露と呼ばれます。
吸入は、農業従事者や農地周辺に住む人々に多く、
農薬が散布される際に肺や粘膜などを通じて体内に吸収されます。
一方、経口曝露には農薬の原液を誤って飲んでしまう誤飲や、
食べ物に残留している農薬を食事と共に摂取してしまう場合が考えられます。
農薬の誤飲は高濃度の毒物を大量に摂取するため、生命に関わることもあって大変危険です。
それと同時に、ネオニコチノイド系農薬を使用して栽培された食物を食べることも、
直ちに生命に関わるわけではないからといって安全だとは言い切れません。
たとえ栽培中に使用された農薬の濃度が低くても、水に溶けて作物の隅々まで浸透するというその特徴から、
調理前に農作物を洗っても取り除けず、残留量の多いものを食べ過ぎると健康を害する恐れがあるのです。
脳や神経の障害を引き起こす
「ネオニコチノイド」
引用:一般社団法人アクト・ビヨンド・トラスト
ネオニコチノイド成分は、体内の「アセチルコリン受容体」に作用を及ぼすとされています。
アセチルコリン受容体とは、もともと体内で生産される神経伝達物質の「アセチルコリン」と
結合して反応を起こし、人体の様々な機能を制御する部分。
脳を始めとする神経系組織のみならず、免疫系、皮膚、生殖器にも存在し、
私達の体の多くの働きに関与する重要な器官です。
このアセチルコリン受容体には、ニコチン性アセチルコリン受容体と
ムスカリン性アセチルコリン受容体の2種類があります。
この内、ニコチン性アセチルコリン受容体は、
タバコに含まれるニコチンと結合することからこの名前がつけられました。
そして、ネオニコチノイドはこのニコチン性のアセチルコリン受容体に作用します。
そのため、喫煙に起因する健康被害と類似した影響が懸念されています。
そして、ニコチン性アセチルコリン受容体は、神経から筋肉や自律神経への信号伝達や
記憶・学習・認知といった脳の機能、そして神経回路の形成などにも重要な役割を果たしています。
これらの機能は、細胞から細胞へ次々に信号が伝わることによって成り立つ為、
ネオニコチノイドがこの受容体に作用するとその後の信号が正しく伝わらず、
そこに障害が発現してしまうのです。
胎児の発育不善も危惧されている
「ネオニコチノイド」
さて、親の喫煙が、胎児の発達に悪影響を与えるということはよく知られています。アセチルコリン受容体は、胎児期から幼児期までの脳内の神経回路形成にも重要な役割を果たしており、
ニコチンと同じ受容体に作用するネオニコチノイドが発達障害を引き起こす可能性が懸念されています。
妊娠中に母親がネオニコチノイドに曝露されると、胎児も同様に曝露され、発達途中の脳に影響します。
胎児だけでなく、幼児でもまた、脳を有害物質から守る血液脳関門が未発達である為、
ネオニコチノイドが脳内に入り込みやすく、脳内の様々な部位の神経回路の形成を阻害する恐れがあります。
ここから、自閉症や注意欠陥・多動性障害(ADHD)の原因となる可能性も示唆されているところです。
これは、「喫煙習慣の無い女性でも日常の食べ物によって胎児の発達障害へのリスクに曝され得る」という、
非常に深刻な事実を示します。
こうした健康上の被害から胎児を守る為には、
ネオニコチノイド系農薬を使用する地域への居住を避けることや、
食べ物にも十分注意するといった、対処を取ることが非常に重要です。
改めて認識しておきたい。
ネオニコチノイド系農薬への日本の対応の遅れ
ネオニコチノイド系農薬の環境や健康への被害に対する懸念が高まるにつれ、
既に、世界各国では活発な対応への動きが始まっています。
驚くほどスピーディーだった
ヨーロッパの規制対応
ヨーロッパでは、2000年代の初頭からネオニコチノイド系農薬の使用を規制する動きが始まりました。そして2013年半ばには、欧州委員会がクロチアニジン、イミダクロプリド、チアメトキサムの
3種類のネオニコチノイド系農薬を、その年末から2年間、暫定規制することを決めました。
この決定は、環境保全や化学物質の安全性などに関して、環境や人への影響・被害の因果関係が
科学的に証明されていない場合においても、予防の為に政策的決定を行うという考え
「予防原則 Precautionary Principle」に基づいて行われたものです。
「因果関係がはっきりしないから規制しない」ではなく、
「因果関係がはっきりしないからこそ規制する」という、積極的な取り組みだと
言えるでしょう。
その後、欧州委員会はこの3種のネオニコチノイド系農薬の使用を段階的に制限していき、
2018年の12月には屋外全面使用禁止の措置を施行。
フランスに至っては、2018年9月よりネオニコチノイド系農薬の使用を全面的に禁止し、
同じ浸透性殺虫剤でネオニコチノイド系農薬と似た性質を持つフィプロニルについては、
2014年以降使用禁止とするという断固たる措置を取っています。
参考:有機農業ニュースクリップ
世界の流れに大きく逆行する、
日本のネオニコチノイド系農薬対策
一方、日本においては2015年から2017年にかけて、イミダクロプリド、チアメトキサム、クロチアニジン、アセタミプリドの4種類の
ネオニコチノイド系農薬の残留基準値を逆に緩和、
更には2015年から2018年にかけて、スルホキサフロル、フルピラジフロン、
トリフルメゾピリムの3種類のネオニコチノイド系農薬を新規承認するといった、
他の先進国とは逆行する対応となっています。
参考:有機農業ニュースクリップ
日本のネオニコチノイドの残留基準値はヨーロッパの数倍から数百倍(の緩さ)に達することも多く、
既に国内の生態系に大きな影響を与えている可能性があります。
そして、同時にネオニコチノイド系農薬を使って作られた農作物を
日常的に購入して食べている人体への影響の恐れも見逃せません。
もっと私達一人ひとりが農作物の残留農薬への意識を高めて、
毎日食べているものについて考えてみることが必要だと思います。
増加する生態系リスクの指摘も
ネオニコチノイド系農薬の問題の特徴として、神経毒性、浸透性、残留性の3つが挙げられます。
昆虫に対する選択的毒性があるとされていますが、それは昆虫全般に作用するということであり、
その強い神経毒性は、ターゲットである害虫だけでなく益虫まで殺してしまったり、
それらの昆虫の生存が困難になるような障害を負わせたりしてしまいます。
又、水に溶けることで、水を介して周辺の草木や地下水に浸透し、
農薬を使用していない地域への拡散される可能性もあります。
そして、一度使われるとなかなか除去することが出来ず、
その土地の土壌や水の中に長く留まり蓄積されていく為、
低濃度のネオニコチノイド系農薬に長期間曝された昆虫類が異常行動を起こすなど、
生態系に大きな悪影響を与える可能性が指摘されています。
有機農産物を食べることで
ネオニコチノイドの体内曝露を低減出来る!?
2020年3月、有機農産物を食べることで、
体内に残留するネオニコチノイドの濃度が劇的に下がった
という実験結果が発表されました。
これは、「福島県有機農業ネットワーク」という団体が、
北海道大学獣医学部毒性学教室との連携で行った実験に基づくもの。
地元・福島県の子育て世代の家族、有機農業を実践している家族、
合計で70名以上から尿検査に協力してもらい、
集められた1000を超える検体の内、330検体の分析結果を踏まえての結果発表となりました。
(1000体もの検体を検査するのには時間がかかり、330検体の分析結果が出た時点で発表)
実験の概要は以下の通りです。
①子育て世代の一般市民に、農薬を散布して育てた慣行食材(スーパーで購入)を食べてもらい、
尿からどれほどのネオニコチノイドが検出されるかを
専門家(北海道大学獣医学部毒性学教室)が調べた。(測定は0.1ppb〔ppbは10億分の1〕まで行った)
②ネオニコチノイドについては、アセタミプリド、クロチアニジン、ジノテフラン、
チアクロプリド、チアメキトサム、ニテンピラムとアセタミプリド代謝産物の測定を行った。
(アセタミプリド代謝産物:アセタミプリドは体内で他の化合物に代謝されることが分かっている為、
代謝産物の測定も行った)
③次いで、福島県有機農業ネットワークが無償提供した米・野菜・卵・豚肉・糀・味噌などの
有機食材を5日間食べてもらい、再度尿検査した。
④その結果、慣行食材を食べた後は、合計で5.0ppbのネオニコチノイドが尿から検出された。
検出されたのは、ジノテフランが2.7ppbと最も高く、次がアセタミプリド代謝産物の1.6ppbだった。
他のネオニコチノイドも人によっては検出された。
5日間有機食材を食べた後は、合計値で半分以下の2.3ppbに下がった。
更に1ヶ月食べ続けた場合、0.3ppbにまで下がった。
日常から有機食材を生産して自らも食べている有機農業者も0.5ppbだった。
実験の結果をまとめたものが下記のグラフです。
引用:福島県有機農産業ネットワーク
“切れのいい結果”と言いましょうか、これははっきりと数値に表れた、目に見える実験結果です。
考えてみれば当たり前なのですが、
農薬を使って作られる農産物を食べていれば農薬は体内に入り残留し、
農薬を使わない・もしくは微量しか使っていない有機農産物を食べれば、
農薬は体内に入らない・もしくは残留してもごくわずか、
ということなのですよね。
この実験結果はそのことを、非常に明快に示してくれていると思います。
また、これまで危険性を認識していながらも、様々な理由から
慣行栽培の食べ物を摂取し続けてきた人にとっては、大きな朗報だと言えるでしょう。
毎日口にするものだからこそ、”塵も積もれば…”
私達は、健康の為に多く野菜や果物、米や味噌などを摂ろうとします。
けれど、健康になりたくて毎日せっせと摂っているそれら自体に、
私達の健康を害する物質が含まれているとしたら、どうでしょう?
まるで、コツコツと健康を害する為の貯金を貯めているようなものだとしたら……?
それこそ、目的地があっても、実際には反対に向かって歩いているみたいなものですよね。
でも、実際に体内に蓄積するネオニコチノイド系残留農薬を少しずつでも摂り続けていけば、
体内に蓄積していって、いつかは体調に影響が出る時が来るかもしれません。
今回ご紹介した実験結果でも明らかなように、有機農産物を食べるという選択を取り続ければ、
次の世代の子供達を含む長い目で見た将来には、そのような心配をする必要は無くなるでしょう。
まさに、”塵も積もれば…“です。
毎日口にするもの、体の中に取り入れるものだからこそ、
健康被害の心配の無いものを選んで摂るようにしたいですね。
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