ひとりで悩まないで! 3才の娘のアトピー治療を脱ステロイドで成功させた、看護師ママの体験談
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ひとりで悩まないで!
脱ステロイドでのアトピー治療を成功させた、
看護師ママの体験談
アトピー性皮膚炎の患者数は、近年急増傾向にあるといいます。厚生労働省の調査によれば、2008年に約35万人だった患者は
17年には16万人増の約51万人に、約15万人も増加しています。
それに合わせるようにアトピー性皮膚炎の治療に関する情報が、
書籍、雑誌はもちろん、ネット上にあふれようになりました。
「いったい何を信じたらいいの?」
「ステロイドって本当に使わない方がいいの?」
氾濫する情報を前に、途方にくれてしまう皆さんも多いのではないでしょうか。
そこで今回は現在5才になる私の娘のアトピーを3才で完治させた体験をもとに、
アトピー性皮膚炎とその治療法について考えてみます。
生後わずか1ヶ月で発症した乳児湿疹が、
すべての始まり
およそ5年前に生まれた私の娘はちょうど「1ヶ月検診」の頃、
頰にプツプツと発疹が出てきました。
近所の小児科を受診し、
「これは唾液による接触性皮膚炎、乳児湿疹ですね。」と診断されました。
ステロイドを塗り続けた6ヶ月
初産だったこともあり、はじめて耳にした「乳児湿疹」の言葉。
よくわからないまま、処方された軟膏を塗り続けた日々。
軟膏の中身はワセリンで薄めてあるとはいえ、ステロイド。
自然素材のクリームやオイルを使う、身体に負担のないケアを理想としていた私は、
ステロイドを毎日塗りつづけることに実は、抵抗がありました。
「それでも、早く湿疹を治したい…」
プツプツしているところにステロイド軟膏を塗り、翌日にはツルツルピカピカ。
「きれいになった〜!」と見ると、別の場所にプツプツ。
「…塗ったところ以外にまで湿疹がどんどん拡がってない?」
医師から「これは『アトピー』ですね」
と診断されたのは、生後7ヶ月の頃でした。
アトピーの症状悪化で、「脱ステロイド」を選択
ステロイド剤を塗っても塗っても患部の範囲は拡がっていくばかりで、
治っていく気配は全くありません。
「一体、いつまで塗りつづければ治るの? 数ヶ月? 数年? 大人になっても?
こんなに小さくて純粋な身体に、ステロイドを使い続けても副作用がないって本当?」
皆さんもご存知の通り、皮膚は汗腺や毛穴から老廃物を排出しています。
そして、「湿疹」もこの老廃物の排出の一種です。
「これほど小さい身体でも、老廃物を出そうとがんばってくれている。
それをステロイドで無理に抑え込もうとするから、
別の場所から排出しているんじゃないの?」
子育てそのものよりも娘の皮膚のことばかり考える日々の中、
アトピーの原因、克服の体験談、標準治療や脱ステロイドについて、
アトピーによいとされる食べ物や温泉など、
さまざまな情報をかき集めるようにして収集しました。
そして最終的に、ステロイド剤が娘の肌を悪化させているように思えてならず、
生後8ヶ月目でステロイドの使用をやめたのです。
「脱ステロイド」への無理解
その2日後の38度台の発熱が、リバウンドの始まりでした。強いかゆみのために娘は患部を搔き壊し、服は血まみれに。
本人はまだ見た目を気にしない年齢だったのが救いでした。
出かけた先では、
「お母さん、お薬ちゃんと塗ってあげないとダメよ。」と注意を受けました。
そして検診で小児科へ行くと、ステロイドを勧められます。
「お母さんにここまで放置しておく権利はありませんよ」など
厳しい言葉をかけられることもありました。
脱ステロイドを理解してくれる人は少なく、
「本当にこれでいいのかな」ととても悩みました。
脱ステロイドを支援するグループとの出会い
情報収集を日々続けていたところ、脱ステロイドを支援する自助グループのひとつ
「アトピっ子育児の会」との出会いがありました。
脱ステロイドで子育てをしているママが中心になり、全国で講演会を開いたり、
大阪で活動されている脱ステロイド医との交流会を主催しているグループです。
娘と主人の3人で、脱ステロイド医との交流会に参加。
「娘のアトピーなんて、たいしたことはないんだ…」
と率直に思ったことを覚えています。
その交流会に参加しているアトピーの赤ちゃんたちは、
娘よりもはるかにひどい症状でした。
頭のてっぺんから足の先まで、全身かさぶたで覆われている赤ちゃん。
顔がかさぶたで覆われ、真っ赤になっている赤ちゃん。
「自分だったらステロイドを塗らずにここまで頑張れていただろうか」
「みんな、つらい思いをしているはず」
それでもなお、
「まわりからどう思われようとも、ステロイドを使わないことを選択する!」
という強い決意を参観者の皆さんから感じました。
脱ステロイド医にお会いしたのは初めてでしたが、
「心配しなくても治るから」という言葉にはなんともいえない重みと安心感があり、
心の荷がふっと軽くなりました。
その後、都内で診察してもらえる脱ステロイド医を紹介していただき、
心が挫けそうなときは受診をしたりメールをしたりして対応してもらったのです。
整腸剤、かゆみを抑える内服薬、医師に調合してもらった非ステロイド軟膏を使い、
2才になるころには湿疹のない皮膚になっていました。
脱ステロイドと並行して実践した、6つのこと
脱ステロイド医の治療方針にしたがい、実践、応用してきたことをいくつかご紹介していきます。
①脱保湿
ステロイドを用いた標準治療に保湿は欠かせないものでしたが、脱ステロイドの基本方針は脱保湿です。
乾燥ぎみの肌についつい塗ってしまいたくなるところをグッとこらえ、
なにも塗らない日々を送りました。
「ワセリンくらいはいいんじゃないかな」と、少量塗ったこともありましたが、
赤みが強くなったり掻く頻度が増え、やはりなにも使わないほうが調子が良さそうでした。
②お風呂には浸からせない
痒くてかきこわしたあとの浸出液は、いわば、“天然の絆創膏”です。患部を湿潤状態にし、浸出液の働きでキズの治りがはやく、
跡も残りにくい作用があります。
その大事な浸出液やかさぶたをふやかしまわないよう、
入浴ではお風呂には浸からせず、シャワーでした。
シャワーの勢いも弱く、汗をさっと流す程度。
身体の温度が上がると痒みが出てくるため、ほんの3〜4分です。
冬は汗をかかないため、陰部と足の裏だけを洗い流すだけで、
2日に1回の日もありました。
③石けんは少量使用
脱ステロイド療法では、基本的に石けんは使用しません。石けんを使用することで皮膚本来の表面の保護膜の保湿成分を
洗い流してしまうからです。
また、石けんには保湿成分が入っています。
脱保湿、という点からも石けんやボディーソープは使いませんでした。
ところが全く使わない日々が続くと、
掻きこわした後の浸出液が少し薄緑色になっていたのです。
看護師の目から見て、緑膿菌に感染していることがわかりました。
そこでほんの少量の石けんをよく泡立て、軽く泡で
マッサージすることにしたのです。
すると、みるみるうちにかさぶたが小さくなり、
湿疹のでていた範囲も狭くなり、肌がすべすべになっていきました。
個人の体質や症状によって、治療の方針が合う合わないがあるんだと実感しました。
④刺激の少ない衣服、洗濯洗剤の使用
直接皮膚にあたる下着はコットン100%のもの。縫い目はうらがえしにして、刺激にならないようにしていました。
サイズがぴったりなものは皮膚に密着して蒸れてしまうので、
ゆとりのあるサイズのものを着用するようにしました。
洗濯洗剤は香料なしのもの、粉石けんは溶けにくいので
リキッドのものを少量使うようにしていました。
⑤痒いときは好きなだけ掻かせる
痒みはどうしてもがまんできないものです。痒いときは思い切り掻いていい。
そのために、爪はいつでも短くし、ヤスリで角を丸くしていました。
痒み対策として、アイスノンで冷やすのも効果的でした。
⑥くじけそうなときには理解者と交流する
脱ステロイドにも症状が悪化するサイクルもあります。「これで正しいのだ」と頭ではわかっていても、時に気持ちもふさぎがちになることも。
そんな時には「アトピっ子育児の会」が主催するイベントに参加したり、
脱ステロイド医に相談したりしていました。
医師からは、Facebookで皮膚の写真を送ると診察の合間に返信してもらえました。
こういった支えがなければ、精神的にくじけていたかもしれません。
とても心強い協力者でした。
アトピー性皮膚炎治療にステロイドが利用されはじめた背景
皮膚の炎症を抑えるために使用されるステロイドは、
「副腎皮質ホルモン」を合成したものです。
1948年に初めて臨床で応用され、歩けなかったリウマチ患者に使用すると
歩けるようになったという劇的な効果が見られたそうです。
しかしそのステロイドは、効果的に炎症を抑えることはできても一時的なもの、
炎症の根本解決にはならなかったのです。
それに加え、浮腫(むくみ)、糖尿病、皮膚移植、多毛、骨粗鬆症などの副作用も
問題視されるようになってきました。
このステロイドが日本で使用されはじめたのは1990年代以降のことですが、
1992年の報道番組でステロイドの副作用が特集されると、社会に警戒心が芽ばえました。
これによって多くのアトピー患者がステロイドの使用をやめてしまいましたが、
代替治療が確立していたわけでなく、離脱症状に苦しむ人も少なくありませんでした。
やがて、ステロイドを処方する医師に不信感を持ったアトピー患者たちのために、
民間医療も徐々に出現しました。
しかし、最終的にひどい状態になってまた受診する患者を見た医師たちは、
治療のためのガイドラインを作成します。
それが現在主流になっている、日本皮膚科学会が作成した
『アトピー性皮膚炎治療ガイドライン』です。
医師たちは、ガイドラインに基づくステロイドを使用した標準治療として、
多くのマスメディアを通してアピールしていきました。
対立を続ける「標準治療」と「脱ステロイド療法」
ステロイド治療に戻っていった患者がいる反面、
ある一部の医師たちは、ステロイドを中止したことで症状が自然に軽快していく例も発見しました。
こうして1990年代以降、ステロイド中心の治療に疑いを持ちはじめた医師たちによる、
脱ステロイド療法の実践につながっていきます。
アトピー性皮膚炎に対する見解の相違点
「標準治療」と「脱ステロイド療法」、それぞれにアトピー性皮膚炎に対する見解の相違点には以下の4つがあげられます。
1.ステロイドの使用期間について
・標準治療の場合臨床試験は長くても1年程度。
その期間内に出現した効果と副作用がエビデンスとなり、
ステロイドを10年、20年と長期的なスパンで使用する事態が想定されていません。
ガイドラインには、3ヶ月以内のステロイドの使用では不可逆性の副作用は生じないとあります。
しかし、臨床試験が1年程度と短いため、一生涯使用した場合の不可逆性の副作用は生じないのか、
という点には言及されていません。
・脱ステロイドの場合
10年以上使ってきた人が脱ステロイドを選ぶケースが多くなっています。
ステロイドの使用を中止すると症状がひどくなるため、
長期間にわたって使用せざるを得なかったからです。
2.ステロイドの依存性について
・標準治療の場合ステロイドの長期使用が想定されていないため、依存については想定されていません。
薬を減らして症状が悪化した場合は、もともとのアトピー性皮膚炎の再燃としてとらえられます。
・脱ステロイドの場合
薬を減らしていく際に、今までステロイドを使用していなかったところにも症状が生じるため、
もともとのアトピー性皮膚炎の再燃ではなく、
ステロイドの依存性によって引き起こされたものだと主張しています。
3.治療の目標について
・標準治療の場合症状がない、あってもごくわずかで、日常生活に支障がなく、
薬物療法もあまり必要としない状態を維持することが目標です。
また、このレベルに到達しない場合でも、症状がごくわずかか軽度で、
日常生活に支障をきたすような急な悪化が起こらない状態を維持することを目標とします。
つまり、治療の目標は完治ではなく、対症療法を行いながら
症状を抑えた状態を維持していくことになります。
・脱ステロイドの場合
ステロイドを長期使用してきた、比較的重症の患者に焦点をあてています。
治療の目標は、ステロイドの使用を中止した状態を継続し、
薬に依存しない状態に皮膚を保つことです。
4.身体観について
・標準治療の場合ステロイドに長期的な依存性はないものと想定されているため、
使用さえ止めれば副作用も同時になくなると考えられています。
・脱ステロイドの場合
ステロイドの影響は蓄積されていくため、使用を中止しても
使用しなかった前の状態に戻ることはできないと想定されています。
状況にあった治療法を選ぶ権利はアトピーの患者側にある
アトピー性皮膚炎に対し、ステロイドが問題にあげられることは多々あります。
しかし、たんに薬剤を用いるか用いないかだけの選択ではない、と私は考えます。
娘の場合は、まだ赤ちゃんだったこともあり見た目を気にすることがありませんでした。
脱ステロイドを実践しやすかったのは、まだ赤ちゃんだったからという面は否定できません。
もしステロイドを使用し、劇的に肌がきれいになっていたとしたら、
標準治療に対して疑問さえ持たなっかもしれません。
つまり、外見を気にするような年齢である、人前に出る機会が多いなど、
その人の置かれた環境によってはステロイドを使ってでも
肌をきれいに見せなければならないケースもあるでしょう。
継続的にステロイドを使用し、皮膚状態をきれいに見せたいのか。
脱ステロイドを選択し、薬に頼らない身体を手に入れたいのか。
アトピー性皮膚炎は「個性」、「体質」だと思います。
それを受け止め、それとともにどのような人生を歩んでいきたいのか。
ステロイドは使わないほうがいいと決めつけるのではなく、
患者側が知識を持ち、納得した上で治療法を選択する自由は
あっていいのではないでしょうか。
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