冬の定番ウールは万能なエコ素材だった!大量生産ウールの裏側と、北欧に学ぶエシカルな商品選びのポイント
冬の定番ウールは万能なエコ素材だった!大量生産ウールの裏側と、北欧に学ぶエシカルな商品選びのポイント
冬の衣服の定番素材のひとつ、ウール。
丈夫であたたかいので、愛用している方も多いでしょう。
ウールは古くから人類と深いかかわりを持ち、人間の暮らしに欠かせない素材です。
特に冬の寒さが厳しく、植物があまり育たない北欧をはじめとする国や地域では、ウールは人々を寒さから守るために欠かせないものでした。
現在もその名残で編み物や織物をする人が多く、手芸屋さんでは色とりどりのウール毛糸を見かけます。
同時に、ウール産業の裏側には悲惨な実情や、環境面から見て疑問に思う点もあったり。
いま、わたしたちが動物繊維であるウールをどのように扱うべきなのか?
どうすれば、人も動物も、地球までもが幸せな環境で、ウールを楽しめるのか?
今回は、ウールの持つ魅力や、よりエコでサスティナブルな選択の仕方を、裏側の話にも少し触れながらご紹介します。
みなさんにとって身近なウールについてもっとよく知っていただくことで、ぜひウールのある生活を楽しんでいただきたいです。
ウールとは?
ウール(Wool)とは、羊やアルパカ・カシミヤといった動物から採れる毛、および動物毛を加工した素材を指します。
ここでは「羊」に焦点を当ててお話していきますね。
衣服などのラベル表示では「ウール」と表示されています。
人類は、なんと紀元前1万年前から羊毛を利用していたといわれています。
長い歴史の中で培った羊毛の加工技術は次第に発展し、暖を取るための衣服や上着、帽子・手袋のような小物、ラグなど幅広いアイテムに用いられるようになりました。
GLOBAL NOTEによれば、2018年はおよそ110万頭の羊から、200万トンを超えるウールが生産され、多くがファッションやテキスタイルのために使用されました。
生産量の多い国は、1位が中国(416,824トン)、以下オーストラリア(385,945トン)、ニュージーランド(127,935トン)、イギリス(70,738トン)と続きます。
主にセーターや冬小物のイメージが強く、わたしたちの日常で身近な素材のひとつです。
ウールの種類
ひとくちに「ウール」といっても、元となる羊は3000種以上にもおよびます。
ここでは、みなさんがよく聞くと思われる種類について、いくつか挙げてみました。
メリノウール
羊毛の中でも流通量が多く、質の高さで有名な種類がメリノウール。オーストラリアメリノ、ニュージーランドメリノ、フランスメリノなど、さまざまな国や地域での飼育がさかんです。
1頭から採れる羊毛の量が多く、毛質はやらわかく肌触りがよいのが特徴です。
ラムウール
羊の種類を問わず、1年目の若い羊の毛を指します。ウールとは思えないほどやわらかく、肌への刺激がすくないため、敏感肌の方におすすめです。
ローカル種(原種)ウール
現在、ウール生産のほとんどは、改良された羊によって生産されることがほとんど。ただし割合は低いものの、もともと羊が多く生息するイギリス領シェットランド島、ノルウェー、スウェーデン、リトアニアといった国や地域では、ローカル種(原種)の羊毛を用いる場所が今でも残っています。
国外への流通が少ないのが現状ですが、原種の保護につながり、無理のない範囲で生産を行なっているという証でもあります。
原種の多くは寒くて厳しい環境で育つため、コシのある毛質が特徴です。
原種ウールからできた靴下やブランケット、セーターは本当にあたたかく、古くから地元の人々に愛されてきました。
ウール素材の持つ特性・メリット
簡単にウールについてお話ししたところで、次は「ウールにはどんな特徴があるの?」について紹介します。
素材の特性を知れば、むやみに重ね着したり、服の数をそろえたりしなくても、かしこく活用できますよ。
空気を含んであたたかい
まずは「あたたかい」が一番の特徴として挙げられます。羊毛の繊維同士が絡まって。ふんわり空気をキャッチ。
ジャケットやコートにウール素材が多く使用されるのは、これが一番の理由です。
肌をやさしく包み込んで、寒さから身を守ってくれます。
湿度調整の役割を果たす
化繊の服を着ると蒸れてしまいがちですが、ウールは自然の産物。呼吸しています。適度に湿度を吸収・放出してくれるため、蒸れることがないのです。
急激な温度差で汗をかいても、べたつかずしっとり。
また糸の紡ぎ方を変えたり、コットンなどほかの素材を配合することで、冬以外にも使えるインナーや肌着としても活躍します。
水・汚れをはじき、臭いが付きにくい
羊毛に含まれる油脂がコーティング効果を発揮するため、水や汚れをはじき、いやなにおいを寄せ付けません。多少の雨や雪はへっちゃらで、外出にも便利。
頻繁に洗濯をしなくて済むため、水の使用量を減らせる=長持ちする、エコな素材といえます。
静電気を防ぐ
意外に思われるかもしれませんが、ウールは静電気を防ぐはたらきがあります。普段、みなさんが上着やコートを脱いだときに発生する静電気は、化学繊維が原因かもしれません。
身に着けるものを天然素材に変えるだけで、あのビリビリの恐怖から解放されることもあります。
すぐれた防電機能を活かし、ウールは電気製品や宇宙服(!)の一部に利用されています。
生産過程でエネルギー消費が少ない
Woolmarkによれば、100枚のウール製セーターを生産する際に必要なエネルギー量は、ポリエステルよりも18%少なく、水の使用量はコットンよりも約70%少なくなります。生産過程でも出来るだけ環境に負荷をかけないことは、とても大切ですね。
リサイクルが可能
糸をほどけば繊維質に戻るため、素材として再利用が可能です。最近は、リサイクルウールを使用したアイテムを扱うブランドも増えてきました。
また、編み物をする方はご存じかと思いますが、手編みの靴下や帽子・セーターは、身体に合わなくなったり、違うデザインのものが欲しいな、と思ったときに、ほどいて糸に戻せば、また好きな形に編みなおせます。
まさに、究極のエコ素材です。
最後は土に還り、海水でも分解される
ほかの自然素材と同じく、ウールも動物からできている素材のため、土に還ります。もちろんプラスチックは使用していないため、海水に繊維が流れても安全です。
例えば、ウール製の靴下1足が海の中で完全に分解されるには、約1年から5年ほどかかると言われています。
対するプラスチックの場合、何百年という単位で時間がかかるため、環境への負荷が少ないのがウールの魅力です。
ただし、完全に自然に還すことを考えると、化学染料で色づけしたウールではなく、自然そのものの色あいや植物で染めたウールを選びたいですね。
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Vegan&環境視点で見る、ウール生産の問題点
ヴィーガンの方や動物愛護主義者の中には、動物の命を奪うレザーやファーに限らず、ウール素材を避ける人もいます。
「ウールは羊を殺すわけじゃないし、別に問題ないんじゃない?」
そう思う方もいるでしょう。
しかし、現代の大規模なウール生産には、問題点があるのも事実。
筆者は編み物が好きで、よくウール糸を使いますが、現在はさまざまな事情を知り、理解したうえで素材を厳選するようにしています。
きちんと「仕組みの裏側」を知ることで、より理解が深まり、気持ちよく・大切に使いたいという思いが自然と湧いてくるものです。
みなさんにも、ウールのことをよく知ってもらった上で、羊からいただいた大切な素材を、長く大切に使ってほしいと心から願っています。
そこで今回は”アニマルウェルフェア(動物の健康・権利)”と”環境”の2つの視点から「ウールの何が問題なのか?」を紹介します。
この後には、長く・大切にウールを使うポイントをご紹介しますので、まずは「こんな事実がある」ということを頭に入れてみて下さい。
品種改良
ウールの中でも高品質といわれる、メリノウール。ふわふわの毛を持ち、「やわらかい」と、いいイメージをお持ちの方もいらっしゃるでしょう。
かつての暮らしの中では「必要な分だけいただく」という考え方のもと、自然のサイクルに沿った形で羊毛を採っていました。
ですが、大量生産の時代に入り、より多くの羊毛を求めて急速な品種改良が進められました。
メリノ羊は、わたしたち人間がより沢山のウールをとれるように、と品種改良によって誕生した種類のひとつです。
そのためメリノは皮面積が多く、羊毛を多く抱えることに。
年に2回ほど毛を刈るとはいえ、身体じゅうに不自然な量の羊毛を抱えた羊の苦痛は想像に難くありません。
人間の都合によって品種改良されたメリノ羊には、さらなる問題が起きています。
効率を求めるゆえの虐待行為、ミュールジング
これは、オーストラリアの一部の地域で報告されている話。メリノ羊は皮膚面積が多いため、肛門周辺は虫がたかって不衛生な状態になりやすく、中には病気になってしまう子も。
その対策として行われる残虐行為が「ミュールジング」です。
ミュールジングは簡単にいうと、子羊のお尻の皮を、麻酔もなしに切りとる行為のことを指します。
血が出ても、泣き叫んでも、労働者が手を止めることはありません。
このミュールジング行為は動物愛護団体によって告発され、世界各国で次々と禁止されました。
現在は随分減ってきているとはいえ、「肌触りがいいから」という理由だけでメリノウールを選ぶことは避けた方が無難でしょう。
また、世界じゅうの羊農場で「羊を蹴る」「暴力を加えて死に至らせる」といった事例が相次いで報告されています。
なぜ、そんなことが起きているのか?
大規模な羊毛の生産現場で労働する人たちの多くは、どれだけ羊毛を刈ったかによってお給金をもらえる、出来高制で雇われています。
つまりこのシステム上では「いかに早く・効率よく毛を刈るか」に重点が置かれるのです。
頭数が増えれば、二酸化炭素排出量も増える
羊にまったく罪はないのですが、わたしたち人間が欲望のあまり大量生産・大量消費を続けることで起きる問題は数知れず。中でも、環境面で問題視されるのが二酸化炭素の排出です。
羊も生き物。
牛ほどではないですが、同じウシ科の動物である羊も呼吸によってメタンガスを出しています。
大量飼育によるウール生産システムは、そもそもエコサイクルの面から見ても不自然なのです。
以上の理由から、大量生産されたウールを用いたファッションアイテムの購入は控えることを強くおすすめします。
北欧人に学ぼう!大切な自然の恵みウールを、長く、かしこく使う
北欧の人々は、昔から羊と共に暮らしてきました。
ウールを紡いで服をつくり、ミトンやセーターを編み、うつくしい生地を織りました。
かつて使用されてきた道具たちは、現在もきれいな状態で保存されていることが多く、正しく取り扱えば、長く大切に使えることがうかがえます。
ここでは、北欧の人々に学びたいポイントを挙げながら、大切な自然素材であるウールを長く・かしこく使う方法を紹介します。
アニマルウェルフェアが進むウール生産
北欧の人々にとって、羊は単なる動物ではなく、仲間。近年の研究では、羊は過去に会った人間の顔をきちんと認識しているそうです。
ウールに関するさまざまなデータを公表する国際機関 International Wool Textile Organisation(IWTO)によると、現在はそれぞれの国で、アニマルウェルフェアに関するルールを設定し、順守に努めています。
ただし、先ほども述べた「ミュールジング」は、オーストラリアの一部ではまだ残っているのが現状です。
つまり、大量生産のシステムによるファストファッションへの需要がまだ残っていることを意味します。
この点をよく考慮して、購入するアイテムを選ぶ必要があるでしょう。
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ウールの原産地・種類の明記があるものを
長持ちする素材だからこそ、新しく購入する際は、質のよさはもちろん、生産過程にまで気を配りたいもの。そこでおすすめなのが「どこのウールを使っているのか?」を確認することです。
どの商品を購入するときもそうですが、「どこで・どのように」つくられているのか?を意識することで、必然的に小規模・ローカルのブランドや手仕事を応援できます。
北欧には、小規模・個人経営の羊飼い農場が多く存在し、動物の幸せを優先した、エコでサスティナブルな方法を実践するところが多くあります。
地域の農場や小規模工場で生産されたウールの毛糸は、国外に流通する機会がほとんどない代わりに、地元のショップやイベントで出店していることが多く、手芸好きの人を中心に買い求める姿を見かけます。
そうして手に入れたウールからできた服や生活道具は、大切に使われていくのです。
また数は少ないですが、日本でもウール産業に取り組む農家さんがいくつか存在します。
ほかの国に比べてウールの自給率が少ない日本ですが、こうした生産者さんがつくるウールを購入し、安定した生産の仕組みを応援することも大切です。
ファッションブランドや作家さんがつくるウール製品について詳しく知りたい場合は、各ブランドや製造元のウェブサイトをチェックするのが有効です。
正しい知識を身に着けて、長く着る
北欧人は、あまりウールを洗いません。それは、先に述べたように、汚れやにおいが付きにくいから。
洗う回数が減ることで必然的に水の消費量が減り、しかも長持ちするなんて、これほどお得なことはありませんね。
洗うときは、畳んで30度以下のお水でやさしく押し洗いがおすすめ。
洗剤はウール専用の生分解性が高いものを選びましょう。
ネットに入れて洗濯機で30秒~1分ほど脱水し、形を整えて干せば、型崩れしません。
またエアリングといって、風通しのよい場所に干す方法や、天日干しもおすすめです。
ウールをよく知れば、環境にやさしくエコな素材として大活躍!
身に着けるだけであたたかく、暮らしに身近な素材・ウール。
素材の特性や生産の裏側まで知ることで、「より大切に使いたい」という思いが湧いてきたのではないでしょうか。
わたしたち人間だけでなく羊も健康で、さらに地球にまでやさしくあれる選択をしたいですよね。
まだまだ寒さが厳しい季節、新しいアイテムを購入する前に「どれを選んだらいいのかな?」と迷ったら、ぜひこの記事を思い出して下さい。
正しくウールを選択・使用することで、わたしたちや羊たちの未来が明るいものとなりますように。
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<参考サイト>
・International Wool Textile Organisation | Global Authority | IWTO
・Lithuania’s History: Textiles Through Time, part 1
・羊の種類とウールに関する詳しい特徴 – NAGAO SHOJI K.K.
・Clever boy! Sheep recognise faces. They self-medicate. They’re clever, dammit… | The Independent
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