農業用ドローンの普及は小規模でサスティナブルな農業を目指す生産者を追い詰める?国のドローン推奨に対して私たちが持ちたい視点とは
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農業用ドローンの普及は小規模でサスティナブルな農業を目指す生産者を追い詰める?国のドローン推奨に対して私たちが持ちたい視点とは
無人飛行機と言えば、ひと昔はラジコンが一般的でした。
しかし、近年、特に2010年以降は急速にドローンが普及してきました。
昔は物珍しかったドローンも、今ではホビー用ドローンも現れ、決して珍しいものではなくなっています。
テレビやYouTubeでも、ドローンを使った映像が頻繁に使われるようになりました。
映像分野だけではなく、運輸、測量、警備など様々な分野でドローンの活用が検討されています。
例にもれず、農業分野でもドローンの使用が推進され始めました。
農業は私たちの食生活に直結する分野ですが、今回はドローンが使われるようになると、どんな変化があるのか考察してみました。
日本の農業人口の減少により注目されるようになったドローン
メディアでも良く取り上げられるのでご存じの方も多いでしょうが、日本の農業人口は年々減少しています。
令和二年度の農林水産省の統計では、個人経営の農業従事者は136.3万人です。
平成27年の統計では175.7万人でした。
5年間の間で39.4万人が離農しており、5年間で約20%農業人口が減少、平均して毎年約7.8万人ずつ減っていることになります。
また、農業従事者の平均年齢も67.8歳と高く、高齢化が進んでいます。
一方で、新規で就農する人は、平成25年から令和元年の平均で毎年57.3千人です。
離農する人と新規就農者の数がまったく追いついていないという現状があります。
このような状況の中で注目されたのがドローンです。
ドローンは農業ではどんなことに使われるの?
農業分野でドローンはどんなことに使われているのでしょうか。
農林水産省では、下記のような事例を挙げています。
・農薬散布・肥料散布
・種まき
・受粉作業
・農作物などの運搬
・鳥獣被害対策
・ほ場センシング(ほ場の様々な情報を計測して数値化する)
・種まき
・受粉作業
・農作物などの運搬
・鳥獣被害対策
・ほ場センシング(ほ場の様々な情報を計測して数値化する)
このように、多くの用途があるため、農業に従事する人が少なくなっている現在では、ドローンの活用は行政も期待しています。
特に、今まで人が手作業で噴霧していた農薬散布作業へ活用する動きが加速中です。
規制緩和や補助金でドローンの使用が増加
前述の通り、農業分野でのドローン活用は期待されています。
そのため、補助金や助成金の制度が設けられており、行政としてもドローンの使用を推進しているのです。(※)
それに加え、ドローンに関する規制も緩和されました。
どのような規制緩和が行われたのか見ていきましょう。
・禁止されていた夜間飛行が可能
・最新型ドローンでは技術指導方針が不要
・目視外飛行が可能
・農薬空中散布において、従来必要だった国や都道府県への散布計画提出が不要
・農薬散布までの手続きが国土交通省に一元化され、簡素化
・ドローン用の農薬の登録を行う際に必要な試験成績の簡略化
・最新型ドローンでは技術指導方針が不要
・目視外飛行が可能
・農薬空中散布において、従来必要だった国や都道府県への散布計画提出が不要
・農薬散布までの手続きが国土交通省に一元化され、簡素化
・ドローン用の農薬の登録を行う際に必要な試験成績の簡略化
ドローンについては素人である私から見ても、この規制緩和の内容を見てみるとやはりドローンは「とっつきやすい」アイテムだと感じました。
そういう私ですらそう感じるのですから、これらの規制緩和によって、今後も農業分野のドローン活用は増えていくでしょう。
ドローンの使用増加に伴って起こるトラブル どんなものがある?
ドローンは従来のラジコンに比べると操作が簡単で、初心者でも扱いやすいことが特徴です。
そのため、近年ドローンの使用者は急速に増えています。
それに伴いトラブルも増加することが懸念されますが、特に農業分野ではどのようなトラブルが起こる可能性があるのでしょうか。
代表的なトラブルは
◆ドローンの機械的なトラブル
◆ドローンの墜落や操作ミスによる物損や人身事故
この2つです。
規制緩和によって目視なしで、かつ夜間でも飛行できるようになりましたが、個人的には、暗い場所で目視で確認しないままドローンを飛ばして危なくないのだろうかと不安を覚えます。
いくら操作が簡単とはいえ、農業従事者は農業のプロであって、ドローンのプロではありません。
また、機械的なトラブルに対処できる人は少ないでしょうし、その時の天候や時間によって適切な操作ができるスキルを持った人も多くはありません。
ドローンを使用することへのハードルが少なくなった分、これからこのようなトラブルはどんどん増えていくでしょう。
それに加えて気になるのが、規制緩和されているのが農薬に関することが多い点です。
農薬の散布計画提出が不要になったり、農薬散布までの手続きが簡単になり、ますます農薬が使いやすい状況になっています。
農林水産省の農業用ドローン紹介ページの概要を見ても、使用目的の主なものには農薬・肥料の散布が挙げられています。
ドローン活用方法として前面に出されているのが農薬・肥料散布なのです。
実際に、農林水産省のホームページでは、毎月ドローンで使用可能な農薬が新たに公開され、次々と増加していますが(※)、この中には皆さんもよくご存知の農薬、ネオニコチノイド系農薬であるイミダクロプリド、クロチアニジンなども含まれます。
ドローンが普及することによって、ますます農薬の使用量が増え、農薬を使った野菜が増加する可能性はゼロではありません。
現役有機農家からはスマート農業の推進によって「農薬を撒くことへの罪悪感がなくなる」ことを懸念する声があります。
★【現場からの声】国が推進するスマート農業に違和感あり!農業は効率よく質の高い農産物を作ることだけがすべてなのか?
また、ドローンは薬剤のタンクが小さいため、高濃度かつ少量で効く農薬が必要となります。
いくらドローンが操作しやすいと言っても、操作ミスが絶対ないとは言えません。
一瞬の操作ミスで一部の野菜に高濃度の農薬がかかり、その野菜が市場に出回る可能性があると感じるのは私だけでしょうか。
また、周囲にドリフト(飛散)が起こらないとも限りません。
さらに、今後は、ドローン用の高濃度農薬への変更登録時の作物残留試験の追加実施を不要化する目標も立てられています。
その他、農林水産省では平成31年に、ドローン用の薬品について新しく200種類の登録を推進する目標も立てています。
もちろんこれらの農薬は高濃度で使用され、かつ少量で効くような農薬です。
ドローンの普及を目指すために、どんどん農薬使用の規制が緩和され、専用の農薬の開発も進んでいるのです。
今後、さらにドローンが増えてくれば、これらの農薬を使った野菜が市場に多く出回る可能性があります。
ドローン用に新たに開発された農薬が、今までの農薬より悪いかどうかということはわかりませんが、「少量で効果のある農薬が人間にも悪影響を与えないか」ということを不安に思う人は多いでしょう。
ドローンによって小規模でサスティナブルな農業を目指す生産者の野菜が追い詰められる?
ドローンが急速に普及したと言っても、導入にあたって必要な初期費用は80万円~300万円と高額です。
多くの有機農家さんは家族単位で小規模に行っている方がほとんど。
いくら補助金や助成金が出るとはいえ(※)、高額な費用がかかるドローンを導入できるほど資金的余裕があるところは少ないでしょう。
「ドローンは無農薬での栽培でも活躍する」と言われることもありますが、おそらく導入が可能な生産者の多くは、資金的にも一定の余裕のある大規模な慣行栽培農家ではないでしょうか。
確かにドローンが活用されれば、効率化が進み農作物の生産量もアップするでしょう。
それに付随して、価格も下がるかもしれません。
しかし、価格が下がると考えられるのは慣行農業の農作物が主で、有機・無農薬・自然栽培野菜などとの金額的格差が広がってしまうという可能性もあります。
これでは有機野菜は今以上に「高い野菜」として認識され、敬遠されることになるかもしれません。
農業人口の減少、高齢化が進む中で、ドローンの登場は期待を持って迎えられました。
しかし、このままではその恩恵を受けるのは慣行農業だけになる気がしてなりません。
本来、ドローンは全ての農家の味方として活用が進められていたはずです。
食べる人の健康、安全、そして地球・生態系への配慮をもっとも考えている生産者の視点こそ最重要視されるべきで、単なる食糧生産だけにとどまらない「農業が本来果たす役割」をあらためて考える必要があると思うのです。
ドローンの使用も、そのような視点を保ちつつ、良い方向に活用できる方法を考えていかなければなりませんね。
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参考:農林水産省 農業労働力に関する統計
農林水産省 農業分野におけるドローンの活用状況
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