2021/06/28

胃がんやB型・C型肝炎の予防効果も？欧米で大人気の薬草リコリスに期待できる４つの健康効果

森野

オーストラリアに移住後、日本とは全く違う文化を体験しました。日本では一般的に知られていることなのに、オーストラリアではほとんど知られてないこと、またはその逆に出会うことが多々あります。健康的に生きるための知識をたくさんの人とシェアできたら嬉しいです。

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胃がんやB型・C型肝炎の予防効果も？欧米で大人気の薬草リコリスに期待できる４つの健康効果

みなさんは、リコリスという植物をご存知でしょうか？

リコリスは、はるか昔から東洋・西洋の両方で伝統医療の治療薬として使われていました。

今ではお茶、アメなどのお菓子、サプリメントやドライハーブなどの形で気軽に購入できるようになりました。

さまざまな健康効果が期待できる反面、摂取する際の注意点があります。

今回はリコリスの健康期待効果と食べる際の注意点を紹介します。

リコリスとは？

リコリスは国により名前が少し違い、リコリッシュ、ラクリッツとも呼ばれる、甘草・マメ科カンゾウ属の植物です。

日本語名はスペインカンゾウといいます。

リコリスを使った食品はたいてい真っ黒な色をしています。

また、世界一まずいアメで有名なサルミアッキはこのリコリスを使ったものです。

しかしリコリス自体の味はまずいものではないので安心してください。

どんな味？

リコリスを食べると、甘さと苦味が同じくらい感じられます。

その味はとても独特で、アニスやフェンネルのような風味の強いスパイスのような味がします。

日本人では風邪薬のような味に感じる人が多いようですね。

はじめはその独特の風味に慣れず苦手に思うかもしれませんが、食べ続けると不思議とその薬っぽい味がおいしく感じてくる人も多々いるようです。

リコリスの食べ方

昔は薬草として使われていましたが、今では主に欧米の国々でお菓子やお茶として親しまれています。

特に、リコリス味のチョコレートやグミは子どもからお年寄りまで人気で、たいていどのスーパーでも売られています。

リコリスが入っていないことも？！

リコリス味のお菓子を買っても、実はリコリスが入っていないこともあります。

パッケージに「リコリス味」と書かれていても、リコリスと似た味のアニスオイルが入っているだけで肝心のリコリスが入っていないことも！

味を楽しむために食べるのなら問題ないですが、リコリスの健康期待効果が目的の場合は内容物に目を通し、リコリスがちゃんと入っているか確認しましょう。

リコリスに期待できる４つの健康効果

リコリスには300以上の化合物が含まれており、その中には抗ウイルスや抗菌の性質を持つものがあります。

特に、その甘味成分である「グリチルリチン」はさまざまな症状への治療効果が期待されています。

リコリスに期待できる健康効果１：皮膚の炎症、湿疹

体の一番外側にあり、体を守ってくれている皮膚。

湿疹やかゆみなどの皮膚に起こる不快な症状は、その多くが細菌によって引き起こされています。

◆とびび（膿痂疹）
子どもに発症することが多く、水ぶくれがあっという間に体のあちこちに広がる、細菌による皮膚感染症。

◆蜂窩織炎（ほうかしきえん）
皮膚からその下の皮下脂肪にかけて細菌が入り込む皮膚の感染症。
皮膚だけの症状だけはなく、発熱、リンパ節の腫れなどが起こることも。

◆毛包炎
毛穴の奥の毛根を包んでいる部分に起こる細菌による皮膚感染症。
毛の根元に膿を含んだ吹き出物ができます。清潔でない浴槽などの使用によって広範囲に起きることもあります。

リコリスはその抗菌性により、上記のような、細菌が引き起こす皮膚の炎症に効果があったという研究結果があります。

リコリスに期待できる健康効果２：B型、C型肝炎

リコリスに含まれる物質を静脈内服すると、B型またはC型肝炎の治療に役立つかもしれないという研究結果があります。

C型肝炎は、C型肝炎ウイルス（HCV）の感染により起こる肝臓の病気です。

放置すると長期間肝臓へダメージを与え、約70％の人が、慢性肝炎、肝硬変、肝がんなど、より深刻な病気へ進行する場合がある病気です。

リコリスに含まれるある特定の物質が死亡率を約５０％減少させたという話もあります。

そんなC型肝炎ですが、リコリスに含まれる「グリチルリチン」がC型肝炎ウイルスのサンプルに効いたという研究結果があります。

肝臓がんの原因になるこのC型肝炎ウイルスに関する研究が日々進められています。

リコリスを使った治療はまだ研究段階ですが、リコリスは肝炎に苦しむ人たちの道を照らす明るい光になるかもしれません。

参考：The National Center for Biotechnology ”Antiviral Activity of Glycyrrhizin against Hepatitis C Virus In Vitro”

リコリスに期待できる健康効果３：口臭、口内炎、のどの痛み

その抗菌性を活かし、リコリスには虫歯予防やのどの痛みの緩和の効果が期待されています。

また口内炎の治療や口臭予防など、口の中の健康効果にもリコリスは期待が高まっています。

リコリスに期待できる健康効果４：胃炎、胃がん

さまざまな胃の不快な症状に

ブラインドテストを行ったところ、リコリスの根に含まれるフラボノイドの、「グラブリジン（Glabridin) 」「グラブレン(Glabrene) 」は、吐き気、胃の痛み、胸焼けなどの胃の不快症状を和らげる効果があったという結果が出ました。

実際、病気でもないし、原因ははっきりしていないけど、胃の調子がよくないという方は多いのではないでしょうか。

消化性潰瘍、ピロリ菌、胃がん

ピロリ菌は胃がんの原因となる菌だと聞いたことのある方も多いと思います。

ピロリ菌は胃に炎症を起こし、ゆっくりと時間をかけて胃を弱らせていきます。

胃全体に炎症が広がり、胃の機能が弱り胃が萎縮した結果、ピロリ菌に感染した胃は胃がんを引き起こしやすい状態になってしまいます。

また胃がんだけではなく、ピロリ菌は消化性潰瘍を引き起こす原因ともなっています。

消化性潰瘍とは、食べ物を分解する働きをする胃酸や消化酵素が、胃や十二指腸の壁を傷つけてしまうことで引き起こされる病気です。

消化性潰瘍ができると、腹部に鈍い痛み、吐き気、胸焼けを感じ、進行すると潰瘍から出血することがあります。

口からたくさんの血を吐いたり、血液が便に混じり黒い便になります。

ピロリ菌に感染していても無症状なことが多く、多くの人は炎症が進行してから気が付きます。

消化性潰瘍疾患（PUD）または非潰瘍性消化不良（NUD）を伴う消化不良（ディスペプシア）に苦しんでいる120人を対象とした臨床試験を行ったところ、通常通りの治療にリコリスの抽出物を追加した場合、ピロリ菌の除去が大幅に改善された、という結果が出ています。

参考：
The Brazilian Journal of Infectious Diseases

健康によいリコリスも食べすぎには注意！

リコリスは元々は薬草として使われていたこともあり、年齢を問わず一度にたくさん摂りすぎると健康に悪い影響を及ぼす恐れがあります。

心臓病、高血圧、低カリウム血症、妊娠中に当てはまる方は特に摂取量に注意が必要です。

健康に心配のある方は事前に医者に相談してからにしましょう。

リコリスはどのくらいなら食べてもいい？

40歳以上の人が56gのリコリスを2週間以上食べ続けた場合、不整脈や心臓の不快感で病院に行くことになるかもしれない、という話があります。

WHOでは、リコリスなどに含まれるグリチルリチンを1日100mgまでを「大人が食べた場合、異常を起こさないであろう」量として定めています。

リコリスが入っているお菓子やサプリメントはグリチルリチンの量を明確に表示していない場合もあるので、食べすぎにはよく注意しましょう。

特に子どもは影響を受けやすいので、うっかり子どもがたくさん食べてしまわないよう、保管する場合は子どもの手の届かない場所に置いておきましょう。

リコリスを食べすぎるとどんな症状が出る？

リコリスを食べすぎると、心臓の働きに影響があるようです。

具体的には、不整脈、高血圧、腫れ、むくみ、無気力、うっ血性心不全などがあげられます。

リコリスを食べることをやめれば症状は落ち着くことが多いようですが、大切な心臓に関わることなので、このような症状が出た場合は病院で相談しましょう。

なぜリコリスはこのような症状が出るのか？

ブラックリコリスの甘味成分であるグリチルリチンには体の中のカリウムの濃度を下げる働きがあります。

カリウムは細胞内の浸透圧の調整、筋肉の収縮、神経の興奮などに関わっています。

ナトリウムを体外に排出する作用により、塩分の取り過ぎを調整し、血圧を正常に保つ働きもあります。

カリウムは人体に必要不可欠なミネラルです。

上に書いたような症状は、主に体のカリウム濃度が低くなってしまうために引き起こされるようです。

参考：厚生労働省 e-ヘルスネット

妊娠中のリコリス大量摂取に注意！

妊娠中は特に食べる量には気をつけましょう。

妊娠中にリコリスを大量に食べた場合、お腹の中の赤ちゃんの脳の発達に影響を与えたり、早産になる可能性があります。

薬を飲んでいる人もリコリス摂取に要注意

リコリスを食べるときには、薬との併用にも注意が必要です。

・カリウム濃度を下げる薬
・血圧の薬
・利尿薬
・心臓の薬
・抗凝血剤
・経口避妊薬、副腎皮質ホルモン（コルチコステロイド）など、ホルモンを調節する薬

特にこのような薬を服用する場合は病院に確認しましょう。

摂取量や薬との組み合わせなどに注意してリコリスを楽しんで！

遠い昔から伝統医療の一環として治療に使われたリコリス。

今ではお菓子やお茶など、味を楽しむために加工され、気軽に食べることができるようになりました。

胃がん、肝臓がん予防期待効果など、おいしく味わいながらも健康効果が期待できるのは嬉しいですね。

食べる量や薬との組み合わせに気をつけて、リコリスを楽しみましょう！