あなたのご両親は大丈夫?他人事でない骨折から始まる高齢者の寝たきり認知症。今のうちに知っておきたいこと。
父が介護施設に入り母が毎日見舞いと洗濯物の回収をしていました。
ところがその母が転倒して大腿骨を骨折し手術。
これから3ヶ月の入院リハビリ生活が始まるので、父と母の面倒を
兄弟で手分けしてやらないといけなくなりました。
先日、私の知り合いからこんな内容のメールをもらいました。
まだ現役で働いている方なので、仕事と両親のお世話で大変な毎日になると思います。
老老介護が問題となっていますが、
子による“就労介護”も大変です。
でもこれ、明日は我が身なんですよね。
私にも同居している義母がいます。
そして遠く離れた場所には母が一人暮らしをしています。
先日記事で紹介した末期肺腺がんを克服した母です。
(詳しくは)
我が家も夫婦共働きで小学生の子どももいますので、もし同じ状況になれば生活が一変します。
読者の皆さんも同居や離れて暮らしていても、
ご両親にそういう心配が出てくる年代の人は多いのではないでしょうか。
もし明日
自分の母が大腿骨頸部骨折したら・・・
年間で大腿骨頸部(太ももの付け根)を骨折する高齢者の数、約15万人。
とても他人事とは思えません。
受傷者のうち特に女性が多いのは閉経後のホルモン減少で
骨粗しょう症になりやすいためだというのは周知の通りです。
そして厚労省の統計によると、骨折(上半身含む)した高齢者の約1割が要介護状態</strong>になっています。
下半身に限るとさらに割合は増えますし、中でも大腿骨頸部骨折はただでさえ寝たきりになりやすい部位。
以下、京都府立医科大学大学院運動器機能再生外科学
堀井 基行,久保 俊一著『大腿骨近位部骨折の疫学』より引用
65歳以上を対象とした日本人における大規模調査
で,歩行能力の術前レベルへの復帰率は 67%な
どの報告32)や,屋外歩行が自立していた患者の
うち受傷後 12ヵ月でも自立できていたのは
48.0%,屋内歩行のみ自立していた患者で受傷
後 12ヵ月後に自立できていたのは 40.4%にそ
れぞれ減少したとの報告35)などがみられる.自
宅への復帰率についても,術後1年で 72.8%,
とくに 85歳以上では 4割に満たないとされる.
引用ここまで
とあるように骨折前と同じように生活できなくなる可能性が非常に高くなります。
我が家では急な雨の日の洗濯物の取り込みや、朝のゴミ出し、ペットの散歩、
子どもが急病になったときなど、少なからず義母に助けてもらっています。
もし歩行が困難になったらとても頼めませんし
要介護になったらと思うと、いかに骨折させないかと考えなくてはなりません。
さらに怖いのは、骨折を機に車いす生活になったり閉じこもりがちになったり、
寝たきり、認知症になる確率が非常に高くなることです。
また受傷後1年以内に約10%が死亡しています。
これらは入院による環境の変化や自立生活できなくなったことへの落ち込み、
また誤嚥性肺炎など合併症を起こしやすくなることなどが原因と言われています。
高齢になった親が骨折しないためにできること
上のグラフにある1987年と2007年の大腿骨頸部骨折発生件数では大きく増加していますが
これは高齢者人口が増えているので当然です。
しかしそれぞれ当時の高齢者人口に当てはめて計算したところ意外な事実がわかりました。
高齢者人口に対する大腿骨頸部骨折の発生件数の割合は
1987年 約1250万人に対し53,200件 0.43%
2007年 約2700万人に対し141,000件 0.52%
なんと割合まで増加していたのです。
30年前に比べ公共機関や施設、駅、家屋などあらゆる場所で
バリアフリー化が進んでいますし、骨粗しょう症の知名度や理解も上がっているので
以前に比べて対策も進んでいるはずです。
てっきり発生割合は減っていると思ったのですが意外でした。
高齢者が寝たきりになりやすい大腿骨頸部を骨折するのは屋外より屋内
日本整形外科学会の調査によると、2014年に発生した大腿骨近位部骨折9万件のうち22.6%が屋外、70.1%が屋内となっています。
また高齢になるほど屋内での割合が増えています。
このような高齢者はつまづき
転倒による骨折に要注意!
1.脳卒中などの後遺症による麻痺がある
2.運動をしておらず筋力・体力が衰えている
3.視力が悪い
4.過去に骨折したことがある
5.いつもすり足のように歩く
6.歩行速度が同年代に比べて遅い
このような人は段差などがないところでもつまづく、バランスを崩して倒れる
などのリスクが高くなります。
我が家では義母(74歳)が上記4以外すべてに該当しています。
義母の部屋は6畳間で畳ですが、リビングはカーペットで
よく新聞や広告を広げたままだったり、子どもが絵を描いた紙を
そのまま置きっ放しにしていたりします。
こういうのが一番危ないですね。
また今後次のような点にも気をつけるつもりですが、
読者の皆さんにもぜひ実践していただきたいことです。
これが危険!転倒骨折事故の屋内原因10
・スマホなどの充電コード、家電製品のコードが歩行線上にある
・フローリング部分のキッチンマット、バスマットなどの裏に滑り止めがなく滑る
・床面に置きっ放しの新聞や広告
・手すりや滑り止めのない階段
・冬場は毛糸やフリースの滑りやすい靴下
・いつも何もない場所に物が置いてある
・段差の高い上がりがまち
・夜間トイレに行くときに電気をつけない
・高齢者が使う日用品のストックが高いところに置いてある
・湯船の底がつるつるしている
これはあくまでも私見ですが、30年前に比べて大腿骨頸部骨折の割合が増えた背景には
フローリングが増えたことや高齢者だけの世帯が増えたことにあるのではないかと思います。
また肥満が増え足元がおぼつかない高齢者が増えているのも一因です。
義母を見ていて思うのですが、歩行やバランスに自信がなくなると
転倒に対する不安から外出する機会が極端に減っていきます。
これは運動不足になることで、ますます筋力、体力の低下を招きますし
明らかに体重がこの数年で増えています。
こうした生活習慣が屋内での転倒事故につながります。
自治体で行っている骨粗しょう症検診で自覚をすることが大事
自治体によってまちまちですが、骨粗しょう症検診をし
医師、栄養士などによるアドバイスをもらえる制度があります。
無料や数百円程度で受けられるはずですので、高齢のご両親がいるご家庭では
定期的に受けてみてはいかがでしょうか。
60代以上の女性の3人に1人、70代以上だと2人に1人、男性はおよそ女性の半分の割合で骨粗しょう症
とはわかっていても、実際に自分が、親が、骨粗しょう症だとはっきりわかることで予防意識が高まり、運動や食事、生活環境の改善意識も高まります。
転ばぬ先の杖と言いますが、文字通り転んだら生活が一変する意識が必要です。
脚をひねっただけでも折れる大腿骨頸部“内側”骨折が怖い
ここまで大腿骨頸部骨折という表現をしてきましたが、整形外科的には
大きく2種類にわけられます。
大腿骨頸部外側骨折
大腿骨頸部内側骨折
(出典:一般社団法人 日本骨折治療学会)
どちらも怖いのですが、外側骨折は主に転倒などの外部衝撃で折れます。
つまりきっかけが明確でわかりやすいのです。
ところが内側骨折は、数日前から脚の付け根が痛いと言っていた高齢者が
ある日、急に立てなくなるというものです。
これは骨粗しょう症患者に多いので、やはり骨粗しょう症は
「高齢者ならだいたいみんなそうでしょ」と甘く見ては絶対いけません。
女性は閉経後年率1%の割合で骨のカルシウムが減っていきます。
このことを念頭に運動、食事、そして日光にも良く当たることが大切です。
高齢になるほど食が細くなるのでサプリメントや薬の力も借りましょう。
もし骨折、手術、リハビリ入院になってしまったらとにかく認知症予防!
どんなに気をつけても、対策を施しても骨折が起きてしまうこともあります。その時、家族が真っ先に取り組むべきことは認知症にならないための働きかけです。
高齢者が骨折などで急な入院をすると、落ち込んだり環境の変化の大きさに戸惑い
認知症を発症する可能性があります。そうならないための働きかけや
自宅となるべく変わらない環境作りが重要です。
・入院直後から毎日話しかける(できるだけ長い時間)
・入院までの顛末を教えて、なぜこうなったか理解させる
・家族に迷惑ではないことを伝え安心させる
・患者の趣味を病室でもできるようにする(読書、音楽が好きであればすぐ持ち込む)
・好きな食べ物(病院食だけでは食欲が衰える場合があるため、病院に相談しつつ)
などです。
とにかく落ち込んだまま、孤立したまま、
環境が変化したままにしないこと
そして知っておいていただきたいのは、
一過性の認知症症状が出る場合があることです。
この症状をせん妄と言います。
突然わけのわからないことを言い始める、ボーッとする、会話がかみ合わない、暴力的になるなど
症状は認知症のものと似ています。
こうなることを先に理解しておくことも準備になります。
もしそうなった場合、極力穏やかに話しかけることから始めて下さい。
せん妄もケガや手術、環境変化のストレスが要因になりますので
少しでも家族の働きかけを増やすようにすれば防ぐこともできます。
最後に
私の治療院に訪れている75歳女性は糖尿病で体重過多です。歩行は片杖でトボトボという感じでした。
足を上げた時にバランスを崩すのが怖くて、常にすり足でした。
健康管理士として先月からその方を説得して院内設置の
エアロバイクをほぼ毎日15分間漕いでもらっています。
最初は「しんどい、老人いじめだ」と冗談まじりに文句を言われました。
それから約1ヶ月、体重はあまり変化がありませんが
HbA1Cの数値改善の他に、明らかに歩行速度が変わりました。
また歩行姿勢、バランスもよくなり現在は杖がなくても不安がないそうです。
このように、高齢であっても運動をすればすぐに変化が現れます。
もちろん骨粗しょう症の程度によって、ちょっとした負荷でも禁物な場合がありますので
そのためにも骨粗しょう症の検査は必要だと思います。
私が常々高齢の患者さんに言っているのは
「最後まで子どもの世話にならずに済ませましょう」ということです。
そして子どもである私たちは「転んでも骨折しない丈夫な親にしましょう」です。
重複になりますが、高齢の親に必要なのは以下のことなので
私たちもしっかりサポートしていかなければいけませんね。
・適度な運動による体の強化
・食事、薬などによる骨の強化
・太陽光に毎日当たること(ビタミンD合成のため)
・屋内の安全環境を整えること
高齢のご両親と、一度こういう話をしてみてはいかがでしょうか。
引用文献:http://www.f.kpu-m.ac.jp/k/jkpum/pdf/124/124-1/horii01.pdf
参考サイト:https://www.joa.or.jp/jp/public/sick/condition/femoral_neck_fracture.html
https://www.jsfr.jp/ippan/condition/ip25.html
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