菜食が陥りやすい「たんぱく質」欠如の問題と、植物性タンパク質と動物性タンパク質の違い。正しい食べ合わせで植物性タンパク質で、摂取して痩せやすい体質へ!
IN YOU読者の皆さん、運動はされていますか?
健康になるためには食事だけではなく、是非運動もしてみてください。
- 食事
- 運動
- 休息
今回は運動をしたら必ず摂取して欲しい栄養素であるタンパク質について、
特に動物性と植物性のタンパク質では生体内でどのような違いがあり、
ヴィーガンやベジタリアンのように植物性タンパク質の摂取に偏る場合は
どのような点に注意してタンパク質を摂取するべきなのか考えていきましょう。
タンパク質とは?
そもそもタンパク質とは何なのでしょうか?
前回の記事でも少しタンパク質について紹介しました。
以下、それについての簡単なまとめです。
- タンパク質(英:Protein)はギリシア語の”Proteus”を語源とし、意味は「最も大切なもの」。
- タンパク質が不足すると体組織(主に筋肉)が分解され、筋力低下や様々な疾患の原因となる。
- 植物性タンパク質は「穀物+豆類」という食べ合わせをすることで上手にタンパク質を摂取できる。
タンパク質は筋肉や内臓、皮膚といった体組織を構成する成分でありながら
体内で燃焼させることでエネルギーを生み出すことができる栄養素です。
このように体組織として合成されたタンパク質以外にも血液中や肝臓にタンパク質は存在します。
(肝臓や血液中つまりアミノ酸プールに存在しているのは、正しくはタンパク質ではなくそれを分解したアミノ酸)
これらの体内に存在しているタンパク質の量は常に一定に保たれています。
しかし、タンパク質の摂取が不足してしまったり上記の食べ合わせのような正しい摂取をしなかった場合、体内のタンパク質量を一定に保つために筋肉などの体組織を分解してタンパク質を取り出そうとしてしまいます。
このようなホメオスタシス(恒常性)の機能により筋肉量は減少し、
筋力が低下、生活習慣病や太りやすい体質の原因となってしまいます。
逆に、適度な運動と正しいタンパク質摂取をおこなうことで筋力を向上させ健康な身体を作り上げ、また筋肉量の増加により基礎代謝が上昇するので太りにくく代謝の良い身体を手に入れることができます。
世の中には体脂肪燃焼などと謳った成分が山ほど存在します。
しかし残念なことに、その中でも効果が確立しているものはほんの僅かです。
そのような不安定な効果の栄養素について考えるよりも、
主栄養素であるタンパク質、炭水化物、脂質といった三大栄養素を管理したほうが圧倒的に効果を期待することができます。
以下、三大栄養素とそのような効果が未確定な栄養素の違いについて言及しました。
興味がある方は是非ご一読ください。
成分の効果の確証について
マーケティングの情報操作として、聞いたこともないような微量栄養素や非栄養素の重要性を語っているものを多く見かけます。過去にトマトに含まれている13-oxo-ODAという脂肪酸が体脂肪燃焼やメタボリックシンドロームの改善に効果があるという研究が発表され、またテレビでそれを取り上げられたことによりトマトダイエットというものがブームになりました。
”Potent PPARα Activator Derived from Tomato Juice, 13-oxo-9,11-Octadecadienoic Acid, Decreases Plasma and Hepatic Triglyceride in Obese Diabetic Mice”
こちらの京都大学の研究グループによる研究が、このトマトダイエットブームの発端となっているようですがそれだけではまだまだ研究不足と言いざるを得ません。
通常、ある栄養素が生体内で特定の効果をもたらすことが発見された場合、その研究に続き様々な機関がそれについて研究します。
この沢山の研究をさらにメタ分析することで、最終的に効果が確認されサプリメント開発などが進められます。
アスリートなどに特に人気のサプリメントに「クレアチン」と呼ばれる商品があります。
この成分は瞬発的運動の持久力を高め、筋力を強化する働きを持っています。
このクレアチンについて、学術論文の検索エンジンであるGoogleScholarで検索すると、約345,000件もの論文がヒットします。
それに対し、京都大学の研究グループが発表した上記の論文で研究されている「13-oxo-ODA」をGoogleScholarで検索すると約30件しかヒットしませんでした。
まだ誰も研究していない分野について取り組み、いわばパイオニア的論文であり非常に素晴らしいとは思います。
しかし、この成分が実際に効果的かどうかを示す際にはこの論文のみではまだまだ研究不足であることが理解していただけましたでしょうか。
また、この京都大学による研究では実験対象であるマウスに対し、摂取カロリーのうち60%を脂質由来のものとする異常な高脂肪食を与えています。
これは私たちの食生活ではあり得ない数字(通常は20%程度)です。
また、皆さんもご存知の通りマウスを使った動物実験では、そもそも人間に対してどのように反応するかは確定しきれません。
”トマトの摂取時刻の違いによるリコピンの生体内利用”
こちらの論文ではトマトによる体重増加抑制は確認されず、考察で京都大学の研究について以下のように述べています。
Kimらの研究では、肥満糖尿病の病態ラットを用い、脂肪エネルギー比60%の高脂肪食にトマト成分(13-oxo-ODA)の抽出液を加えた実験食を与えている。本実験と比較すると脂肪摂取エネルギー比が高く、トマト成分も25~50倍量である。Kimらの報告は大量のトマト摂取によって代謝異常を誘発させていると考えられる。
先程も述べましたが、本来はこの成分についてこれらの様な研究がもっとおこなわれ、そしてメタ分析されることでやっと効果を確定することができます。
トマトダイエットブームの発端となったこの「13-oxo-ODA」という成分は最近発見された成分で、その効果を確証付けるにはまだまだ研究不足です。
P.S.
上記で紹介したトマトダイエットブームのきっかけとなった論文は先程から京都大学の研究グループによるものと言及してきましたが、これは柴田大輔 財団法人かずさDNA研究所部長、日本デルモンテ株式会社、千葉県農林総合研究センターとの共同研究です。
少々話が脱線してしまい申し訳ありませんが、このようなまだまだ研究不足の栄養素に踊らされずに、研究がとことん進められた主栄養素である三大栄養素について管理したほうが健康には近道であることを理解して頂けたでしょうか?
植物性タンパク質と動物性タンパク質の違い
前置きが長くなりましたが、本題である植物性と動物性タンパク質の違いについて見ていきましょう。
最初に結論を述べると、これらの違いは
体組織(筋肉)としての合成のしやすさ。
です。
簡単な例を紹介します。
牛肉のステーキを食べた場合です。
これは人間と非常にDNAが近い哺乳類の筋肉です。
これを消化吸収し自分の筋肉として合成し直すのが非常に簡単なことは分かって頂けるかと思います。
積み木で作ったお城を別の形のお城に作り変える程度の難易度です。
しかし、植物性タンパク質の代表格である大豆を食べた際はどうでしょうか。
大豆はそもそも筋肉でもなければ、DNAが人間と極端にかけ離れて違っています。
この全く違ったものを人間の筋肉として作り上げるわけですから、積み木のお城を作り変えるようには行きません。
菜食主義者の中にはそれを普及するために植物性タンパク質について楽観的に主張している方もいらっしゃるようですが、私は正直タンパク質摂取に関しては菜食だと非常に難しいと考えています。
上記では例を用いて非常に簡単に説明しましたので多少の語弊があるかもしれません。
この体組織としての合成のしやすさについてはアミノ酸スコアを通じて正しく説明することができます。
アミノ酸スコアから考える植物性タンパク質の落ち度
アミノ酸スコアと言うものをご存知でしょうか?
そもそも、タンパク質というのは約20種類のアミノ酸により構成されています。
上記の例で紹介したような牛肉のステーキは同じ哺乳類の筋肉ですので、この20種類のアミノ酸の構成が人間と非常に酷似していると言うことができます。
人間が必要としているアミノ酸を適切に含んでいるかを示しているアミノ酸スコアは言わばタンパク質の質を表しているのです。
アミノ酸スコアはその食品のアミノ酸組成(タンパク質がどんなアミノ酸でどのように構成されているか)を理想値であるアミノ酸評点パターンと比較して定められます。
以下、1973年にFAOやWHOにより提案されたアミノ酸評点パターンです。
イソロイシン | ロイシン | リジン | SAA | AAA | スレオニン | トリプトファン | バリン |
40 | 70 | 55 | 35 | 60 | 40 | 10 | 50 |
各食材のアミノ酸組成は”食品可食部のたんぱく質1g当たりのアミノ酸組成表“により確認できますので、実際に比較していきましょう。
イソロイシン | ロイシン | リジン | SAA | AAA | スレオニン | トリプトファン | バリン | |
理想値 | 40 | 70 | 55 | 35 | 60 | 40 | 10 | 50 |
牛肉 | 55 | 99 | 110 | 48 | 88 | 56 | 13 | 58 | 大豆 | 52 | 91 | 73 | 29 | 100 | 45 | 15 | 53 | えんばく | 48 | 81 | 51 | 63 | 100 | 39 | 17 | 65 |
*牛肉は「サーロイン皮下脂肪なし生」、大豆は「分離大豆たんぱく」の数値を参考にしています。
上記の表を見てもらえば分かる通り、牛肉はアミノ酸評点パターンによる基準値をすべて満たしています。
100%基準を満たしているため、牛肉のアミノ酸スコアは100です。
それに対し、大豆タンパクはメチオニン、ヒスチジンを合計したSAA(含硫アミノ酸)において基準を達成していません。
この基準を達成できなかったアミノ酸を大豆の”第一制限アミノ酸“と呼びます。
第一制限アミノ酸であるSAAの基準を82%しか達成していない大豆タンパクのアミノ酸スコアは82となります。
えんばくも同様にアミノ酸評点パターンの基準値を満たしていません。
えんばくの第一制限アミノ酸はリジンで、これを92%しか満たしていませんのでアミノ酸スコアは92となります。
このように植物性タンパク質はアミノ酸スコアが100にならない、いわゆる人間の筋肉には合成しづらいタンパク質なのです。
このタンパク質の質の悪さを主な原因として、植物性タンパク質は筋合成において動物性タンパク質に劣ることは数多くの論文で発表されています。
”Ingestion of whey hydrolysate, casein, or soy protein isolate: effects on mixed muscle protein synthesis at rest and following resistance exercise in young men”
”Meal Distribution of Dietary Protein and Leucine Influences Long-Term Muscle Mass and Body Composition in Adult Rats”
ですが、植物性タンパク質の弱点が分かってしまえば改善するのも簡単です。
アミノ酸スコアを補填し、植物性タンパク質を完全タンパク質にする。
アミノ酸スコアが100のタンパク質を完全タンパク質と呼びます。
大豆も一部の方々の間ではアミノ酸スコアが100の完全タンパク質であると言われていますが、疑わしい部分が多くあります。
アミノ酸スコアの基準であるアミノ酸評点パターンはもともとプロテインスコアと呼ばれるもっと厳しい基準でした。
それに改定が重なり、現在は1985年にFAO、WHO、UNUにより制定されたものが採用されることが多くなっています。
上記では73年にFAOとWHOのみで提案したアミノ酸評点パターンを参考にしたので、大豆のアミノ酸スコアは82となりましたが、85年のものと比較すると大豆のアミノ酸スコアは100となり完全タンパク質と呼ばれるようになりました。
現代では完全タンパク質と呼ばれる大豆ですが、肉や卵といった動物性タンパク質と比べるとSAAが不足していることは確かです。
ですが、上手に食品を食べ合わせることによりアミノ酸スコアを補填する事ができるので、その方法を紹介します。
この記事の冒頭でも述べましたが、植物性タンパク質の上手な摂取方法として
「穀物+豆類」
という食べ合わせが当たり前となりつつあります。
ヴィーガン先進国であるイギリスにはヴィーガンボディビルダーが多く存在しますが、
彼らがタンパク質摂取について口を揃えて言う言葉は、
Combination
です。
穀物+豆類というCombinationが体づくりには必須なのです。
実際にアミノ酸評点パターンを用いて考えてみましょう。
イソロイシン | ロイシン | リジン | SAA | AAA | スレオニン | トリプトファン | バリン | |
理想値 | 40 | 70 | 55 | 35 | 60 | 40 | 10 | 50 |
大豆 | 52 | 91 | 73 | 29 | 100 | 45 | 15 | 53 | えんばく | 48 | 81 | 51 | 63 | 100 | 39 | 17 | 65 | 平均値 | 50 | 86 | 62 | 46 | 100 | 42 | 16 | 59 |
上記の表では大豆(豆類)とえんばく(穀物)のタンパク質を1:1食べ合わせた場合を考え、それらのアミノ酸組成の平均値を一番下の行に記載しました。
この平均値とアミノ酸評点パターンを比較すると、全ての基準を満たしアミノ酸スコアが100、つまり完全タンパク質であることがわかります。
これは、SAAに欠ける大豆にSAAを多く含むえんばくを、そしてえんばくではリジンが第一制限アミノ酸ですがこれは大豆が多く含んでいます。
このようにお互いに足りていないアミノ酸を補填し合うことで、植物性タンパク質でも動物性タンパク質のような完全タンパク質を作り出すことが出来るんです。
これが体作りの方程式、イングリッシュヴィーガンボディビルダーに言わせるところの
Combination
なのです。
ボディビルダーでなくとも運動と体づくりは健康を維持するために非常に大切な要素ですので、
彼らに習い「穀物+豆類」というCombinationで健康を手に入れましょう。
いかがでしたでしょうか。
植物性タンパク質は動物性タンパク質と比べると人間にとっては品質の悪いタンパク質ですが、
上手に食べ合わせることでしっかりとタンパク質として活用することができます。
また、このような食事法と運動を是非実践して健康な体作りに励んでください。
最後にこちらの論文を紹介させてください。
”妊娠時の植物性タンパク質栄養が出生子の発育に及ぼす影響とその栄養効果の改善”
こちらの論文では大豆と米というCombinationのタンパク質摂取をおこなったマウスの栄養効果が、米のみのタンパク質摂取をおこなったマウスに比べ劣っていたことを発見しています。
もちろん先程も述べた通り、この論文で全てを確定することはできませんが、
食べ合わせのみではアミノ酸スコアの点に置いてまだ不十分なのではないか、またそれ以外の要因で動物性タンパク質に劣るのではないか、ということを示唆しています。
まだまだ菜食の正しい食事法は研究不足で、上記の論文のようなパラドックスについて考えていく必要があります。
菜食がこれからメインストリームになるに並行して、このようなタンパク質の研究は欠かせません。
前回の記事でも言いましたが、今後もっと研究が進み菜食でも混食同様の優れた栄養管理ができるようになる日が来ること願っています。
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