新型コロナ感染で「糖尿病」に重症化の恐れ!血糖値と深く関わる「三大栄養素」のお話
新型コロナ感染で「糖尿病」に重症化の恐れ!
血糖値と深く関わる「三大栄養素」のお話
こんにちは、管理栄養士のRIKEJOです。
現在、新型コロナウイルスの感染者が急増し、国民全体の緊張感が高まっています。
ところで、このウイルスに感染した場合、重症化するリスクがある病気のひとつとして
「糖尿病」が挙げられていることを皆さんはご存知でしょうか。
参考:井出ゆきえ執筆『新型コロナは糖尿病があると重症化しやすい理由(DIAMOND ONLINE)』
国内における糖尿病の人口は増加の一途を辿っており、
日本人の8〜9人に1人は糖尿病を患っているとも言われています(平成28年度国民健康・栄養調査)。
なお糖尿病と新型コロナウイルスの感染のしやすさ、重症化のしやすさについては、
アメリカ糖尿病学会の見解によれば、糖尿病であるということ自体より、
血糖値のコントロールが関係するようです。
そこで今回は、血糖値と三大栄養素との深い関係についてお話しようと思います。
血糖値の正常化には、
栄養バランスの取れた食事が何よりも重要
血糖値をコントロールするためにはバランスの良い食事が欠かせません。バランスの良い食事とは何かを知るために、まずは「食品の分類」についてご紹介しましょう。
食品の分類の仕方はいくつかあるのですが、
今回は「糖尿病食事療法のための食品交換表(上図)」に基づいた
6つの食品グループについてお話しします。
こちらの食品交換表とは、糖尿病の患者さんが食事をバランスよく、
適正な量で食べられるように作られたもので、様々な食品を1単位=80kcalとして表しているのが特徴です。
この表を栄養指導で用いる際には、6つの各食品グループから、それぞれの食材を
1日に何単位ずつ摂れば適正な食事内容となるかをお伝えします。
1日に必要な単位数の説明は少し煩雑であり、一般の方には単位数はさほど重要ではありませんので
今回は食品の分類についてのみ、ご説明することにします。
炭水化物を多く含む食品
私たち人間、特に日本人は一般的に、1日に必要なエネルギーの半分以上を炭水化物から摂取しています。
①穀類・芋類
まず1つ目には、ご飯、パン、麺など、主に主食となるものがこの食品群に当てはまります。その他にも、芋類やかぼちゃ、レンコン、とうもろこしなど、炭水化物が多い野菜や豆類も含まれます。
②果物
厳密には①を構成する主な糖質はグルコース(ブドウ糖)ですが、②の果物を構成する主な糖質はフルクトース(果糖)です。
両者では糖質の種類が異なるため、血糖値への影響や体内で果たす役割も違います。
タンパク質を多く含む食品
タンパク質は私たちのからだの血や肉を作るもとになる栄養素です。③魚介・大豆とその製品・卵・チーズ・肉
こちらには主菜、メインのおかずとなる食品が当てはまります。部位によっては脂を多く含むものもあります。
④牛乳と乳製品(チーズを除く)
ヨーグルトなどの乳製品がこちらに分類されます。乳製品はラクトース(乳糖)を多く含む食品なので、
糖尿病食事療法のための食品交換表では、
同じタンパク質でも③とは別に分類されています。
脂質を多く含む食品
脂質は効率の良いエネルギー源です。脂溶性ビタミンの吸収にも必要ですが、脂質は③と④にも含まれているため、
わざわざ油脂類で取らなくても欠乏することはありません。
⑤油脂・脂質の多い種実・多脂性食品
バターやマーガリンなどの油脂類がこちらに当てはまります。アボカドやベーコン、ナッツなども脂質が多いため、こちらに分類されます。
ビタミン・ミネラルを多く含む食品
エネルギーを作る手助けや、からだの調子を整える手助けをする栄養素です。⑥野菜・こんにゃく・海藻・きのこ
ビタミン・ミネラルとともに食物繊維も多く含みます。その他
調味料や菓子類、アルコールなどの嗜好品にもカロリーは含まれています。食品の分類は大まかに以上の通りです。
そして、バランスの良い食事とは
①(穀類・芋類)、
③(魚介・大豆とその製品・卵・チーズ・肉)、
⑥(野菜・こんにゃく・海藻・きのこ)、
の3つグループの食品が揃った食事のことを指します。
またこちらは1日で揃えばいいというわけではなく、毎食揃えて食べる必要があります。
では、なぜ、血糖値のコントロールにはバランスの良い食事が欠かせないのでしょう?
そこで次は、血糖値に対して特に大きな影響を及ぼす栄養素「三大栄養素」についてお話を進めていきます。
血糖値に深く関与する「三大栄養素」とは?
炭水化物、タンパク質、脂質を三大栄養素と呼びます。
そのそれぞれについて説明をしていきます。
炭水化物
炭水化物は糖質と食物繊維で構成されています。しかし、炭水化物から摂取するエネルギーのうち、
食物繊維に由来する部分はごくわずかであり、ほとんどは糖質に由来されるため、
炭水化物=糖質と考えて良いと思います。
●糖質の役割
糖質は、約4kcal/gのエネルギーを産生します。そして、脳、神経組織、赤血球、腎尿細管、精巣、酸素不足の骨格筋など、
通常はグルコースしかエネルギー源として利用できない組織にグルコースを供給します。
ちなみに脳は、体重の約2%の量ですが、総基礎代謝量の約20%を消費すると考えられています。
例)基礎代謝量が1500kcal/日の場合
脳のエネルギー消費量=1500×20/100=300kcal
つまり300/4kcalで75g/日のブドウ糖が必要です!
糖質の摂取不足は、エネルギー不足に陥りやすく、
免疫力の低下にも繋がりますので、極端な制限は避けましょう。
タンパク質
タンパク質は他の栄養素から体内で合成できないため、必ず食べ物として摂取しなければなりません。もし、タンパク質は欠乏すると「クワシオルコル」という病気を引き起こします。
タンパク質を構成するアミノ酸は20種類あり、
そのうち9種類は食事から直接摂取しなければならないため、必須アミノ酸と呼ばれます。
●タンパク質の役割
私たちのからだの重要な構成成分となる他に、酵素やホルモンとして代謝を調整したり、抗体として生体防御(=免疫)に働いています。
また、糖質からのエネルギーが足りない場合などに、エネルギー源としても利用されます。
なお、タンパク質は約4kcal/gのエネルギーを産生します。
脂質
栄養学的に重要な脂質には、脂肪酸、中性脂肪、
リン脂質、糖脂質、ステロール類があります。
コレステロールは脂肪酸とは構造が異なりますが、
食品中ではその大半が脂肪の中に存在します。
●脂質の役割
脂質のエネルギー産生量は約9kcal/gであり、炭水化物やタンパク質の2倍以上のエネルギーを産生します。
このことから、ヒトはエネルギー蓄積物質として、
優先的に脂肪を蓄積すると考えられています。
エネルギー産生以外にも細胞膜の主要な構成成分となります。
コレステロールは胆汁酸に変換されたり、
性ホルモン、副腎皮質ホルモンなどのステロイドホルモンやビタミンDの
前駆体になったりなどの役割もあります。
図表出典:富士フイルムヘルスケア研究所
n-6系脂肪酸やn-3系脂肪酸は、体内で合成できず、欠乏すると皮膚炎などが
発症するため、必須脂肪酸と呼ばれています。
「三大栄養素」は血糖値にどのように影響するのか?
よく栄養指導でみられるのは「高カロリー=血糖値上昇または血糖値のコントロールを悪化させる」という誤解です。
恐らく糖尿病患者には肥満の方が多いので、このような誤解が生じるのだと思います。
このような誤った認識で食事療法を行った場合、食事バランスが崩れ、
症状を悪化させる恐れがあるため、危険です。
また、あるいは、「血糖値には甘い食べ物(のみ)が関与する」と考えている方もおられるようですが、
これも間違い。どういうことか、説明していきましょう。
グラフ出典:糖尿病ネットワーク
そもそも、カロリーは血糖値に影響しません。
血糖値には糖質の量が影響してきます。
炭水化物はほぼ糖質で構成されているので、100%が血糖値に影響します。
そして食べてから急激に上昇し、1〜2時間後にピークがきます。
タンパク質にも糖質は含まれており、こちらは50%が血糖値に影響します。
糖質と比較すると緩やかに上昇し、緩やかに上昇し、緩やかに下降します。
脂質は血糖値の上昇にほとんど影響を与えません。
しかし、摂取しすぎると血糖値が下がりにくくなるという特徴があります。
特に寝る前など、食後の活動量が少ない時間は要注意です。
また、肥満が進むほど血糖値のコントロールが難しくなるので、脂質の摂りすぎは避けましょう。
このように各栄養素ごとに血糖値への影響が異なります。
どの栄養素も、私たちが健康に過ごすためには欠かせません。
毎食主食・主菜・副菜を揃えてバランスよく食べることで、
血糖値の急激な上昇を避けつつ、
必要な栄養素を過不足なく摂取することが出来るのです。
血糖値のコントロールにも免疫力アップも
ポイントになるのは「栄養のバランス」
血糖値のコントロールのためには、適正な食事バランスと量が重要です。そして、血糖値にはカロリーではなく糖質の量が影響します。
血糖値にも免疫力にも、これが良い!という魔法の栄養素は存在しません。
バランスよく食べることで各栄養素の過不足を防ぎ、健康の維持・向上を図りましょう。
今後も皆さんに正しい栄養の知識を提供して、日々の食生活に貢献していきたいと思います。
ここまでお読みいただいてありがとうございました!
次回もどうぞお楽しみに。
参考文献:『日本人のための食事摂取基準2020年版』
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