新型コロナで世界が注目する漢方薬の裏にある残留農薬問題|漢方専門家が教える、安心な漢方薬を入手するためのポイントとは?
新型コロナで世界が注目する漢方薬の裏にある残留農薬問題|漢方専門家が教える、安心な漢方薬を入手するためのポイントとは?
冬が近づくたび、毎年のようにインフルエンザの流行が話題になりますね。
一般的に知られている治療薬としては
タミフルやリレンザ、ゾフルーザなどがありますが、
漢方を知る人間のあいだでは、
実は風邪やインフルエンザには
漢方薬が非常に有効であることが知られています。
そしてコロナ禍の今、
実際に臨床で漢方薬の効果が世界的に見直されてきています。
私の周りの多くの医師や薬剤師は、
声をそろえて「風邪には漢方」とおっしゃっています。
しかし、だからと言って漢方薬であれば何でもよいわけではなく、
必ず気を付けていただきたいポイントがいくつかあります。
今回は、漢方の世界に長年携わってきた私が
意外と知られていない漢方薬にまつわる裏事情や、
安心・安全な漢方薬を入手する方法をお伝えします。
風邪、インフルエンザ、そして新型コロナにも有効と言われる漢方薬
実際のインフルエンザに対する漢方薬の臨床研究
今年は新型コロナに翻弄され続けていますが、いよいよインフルエンザ流行の季節が迫っています。
インフルエンザの治療薬と言えば、2018年に販売開始された
「ゾフルーザ」が記憶に新しいところですが、
1回飲めば済むので便利と言われる反面、
簡単に耐性ウイルスが出現してしまうことが報告され、
特に、12歳未満の子どもに出てきやすいことが明らかになっています。
もしゾフルーザ耐性のインフルエンザウイルスに感染すれば、
ゾフルーザを飲んだとしても治療効果が乏しくなる上、
症状が継続する期間が長くなることが発表されています。(※)
その一方で、インフルエンザに対する
漢方薬の効果が実証されているのは刮目に値します。
インフルエンザの治療に、漢方製剤の「麻黄湯(まおうとう)」を使うと、
抗ウイルス薬のタミフルと同じ程度の症状軽減効果があるという研究結果を、
福岡大病院の鍋島茂樹・総合診療部長らが明らかにした。
新型インフルエンザへの効果は未確認だが、
タミフルの効かない耐性ウイルスも増える中、注目を集めそうだ。
日本感染症学会で4月に発表された鍋島部長らの研究は、
昨年1月~4月に同病院を受診し、
A型ウイルスを検出した18~66歳の男女20人の同意を得て実施。
うち8人はタミフル、12人は麻黄湯エキスを5日間処方した。
ともに発症48時間以内に服用し、高熱が続く時は解熱剤を飲んでもらった。
服用開始から平熱に戻るまでの平均時間は、
タミフルが20.0時間、麻黄湯が21.4時間でほとんど違わなかった。
解熱剤の平均服用回数はタミフルの2.4回に比べ、
麻黄湯は0.6回と少なくて済んだ。
麻黄湯のインフルエンザへの効能は以前から承認されており、
健康保険で使える。
(平成21年5月8日 読売新聞朝刊より)
新型コロナに対して漢方を用いた治療が大きく期待されている
そして昨今問題になっている新型コロナウイルスも風邪やインフルエンザの仲間です。
本場の中国では、この新型ウイルスに(以下COVID-19)も
漢方(中国では中医学といいます)が
非常に有効であることが明らかになってきています。
そのため、現時点では未だ標準治療のない新型コロナウイルスに対し、
漢方製剤を用いた治療はますます期待が高まっており、
なんと、有効率は90%以上と言われています。
中国ではCOVID-19の軽症、中等症、重症の幅広い範囲に
「清肺排毒湯(せいはいはいどくとう)」という処方が適用されています。
清肺排毒湯は、漢代の張仲景が著した『傷寒雑病論』にある、
外邪によって引き起こされる病に対する、
以下の四つの名処方を組み合わせたものが基本となっています。
◆麻杏甘石湯(まきょうかんせきとう)
◆射干麻黄湯(やかんまおうとう)
◆小柴胡湯(しょうさいことう)
◆五苓散(ごれいさん)
【麻黄湯の基礎組成】
麻黄 9g、炙甘草 6g、杏仁 9g、
生石膏 15~30g(先煎)、桂枝 9g、
澤瀉 9g、猪苓 9g、白朮 9g、
茯苓 15g、柴胡 16g、黄芩 6g、
姜半夏 9g、生姜 9g、紫菀 9g、
冬花 9g、射干 9g、細辛 6g、
山薬 12g、枳実 6g、陳皮 6g、藿香 9g
中華人民共和国国家衛生健康委員会が2月に発表した内容では、
この「清肺排毒湯」で治療がされたと確認済みの701 症例のうち、
130症例が治癒および退院、51症例の臨床症状が消え、
268症例の症状が改善、212症例は悪化しなかったとされ、
また「清肺排毒湯」の有効治癒率は 90%以上にもなるとのことでした。(※)
また、中央指導グループ専門家グループのメンバーを務める
中国工程院の張伯礼院士は、
中国中央テレビ局(CCTV)の質問に対して、
以下のように答えています。
新型コロナウイルスとの闘いにおいて、
中国全土の中医薬系統は医療従事者約3200人を湖北省に派遣し、
588人からなる国家中医医療チーム4チームを立ち上げ、
金銀潭病院、仮設病院の雷神山医院、湖北省中医学・西洋医学結合病院、
江夏方艙医院(臨時医療施設)などで治療に当たっているが、
現時点で、患者398人を受け入れたが、重症化した患者は1人もおらず、
約50人がもうすぐ退院を予定している。
総じて言うと、とても良い効果を得ている。
中医学(東洋医学)の効果についてどうかという点については、
説得力のある指標が2つある。
1つは、患者が治癒するのに必要な時間が短くなっているかどうかという点、
もう一つは軽症患者が重症化していないかという点。
私自身が湖北省中医学・西洋医学結合病院で見た患者の重症化率は
わずか2%台だった。
また、現時点で、臨時医療施設で重症化した患者は1人もいない。
このように臨床を通じて、新型コロナウイルスに感染した軽症患者に対して、
中医薬は非常に有効であると、私は強く確信している。
しかし、重症化すると、西洋医学をメインとする必要がある。
西洋医学を採用して、呼吸や循環をサポートし、
命を支えるというのは絶対に必要であり、
それらの治療法がなければ、患者の命を助けることはできない。
その場合、中医学は脇役となるが、
それが不可欠なケースもある。
このように、
漢方製剤には風邪などのウイルスに非常に有効なことが
多くのエビデンスにより証明されてきましたが、
実は様々な問題を抱えています。
日本が抱える様々な漢方の問題点
漢方を正しく扱える専門家の不足
日本では、中国や韓国と異なり、漢方を扱える専門家の数が圧倒的に足りません。
そのため、漢方を扱うクリニックやドラッグストアがあるといっても、
実際に東洋医学の正しい診断(弁証論治)を満足に受けられるところは
まだまだ少ないというのが実情です。
そのため、落語にもある葛根湯医のように、
「風邪には何が何でも葛根湯」といったような、
患者さんの状態をよく把握もせずとりあえず処方してしまうような、
誤った使い方をしておられる方も多く見受けられます。
そもそも風邪には、悪寒や寒気、のどの痛みなど
様々な症状があります。
その症状や患者さんの体質に合わせて処方を選ぶのが、
正しい漢方薬の使い方です。
またその症状によって養生法も異なり、
これを誤ると逆に長引くことにもなりかねません。
こちらの記事も参考にしてみてください。
★30年間自分の体で検証しました。「風邪には葛根湯」は間違うと効かない&悪化する、正しい漢方の風邪薬の選び方と養生について
ですので、
皆さんにはちゃんと漢方的な診断(判断)をしてもらえる所で
自分に合った漢方薬を入手して頂きたいと思います。
安全、安心な漢方薬を選ぶのが難しくなっている
また、現在の漢方薬の問題点として、
漢方薬の原料の供給不足により価格が高騰し、
処方に入っている生薬の品質低下、
そして重金属や農薬の汚染が問題化していることが挙げられます。
現在、漢方で使われる生薬の90%以上は輸入に頼っており、
そのほとんどは中国です。
中国では、人件費の高騰や、
中国国内での漢方需要の増大によって、
大きく生薬の価格が上昇しています。
このことは、品質の良い生薬の入手が困難になり
製品価格の上昇を招いています。
現在のように保険で漢方を使うのが、
将来的には困難になるのではないかと危惧しております。
漢方薬でとりわけ深刻な「残留農薬」の問題
他にも、私はこれまで生薬の輸入販売に関わってきましたが、
残留農薬の問題はとりわけ深刻です。
これは医薬品に限らず、
たとえば、桂皮は食品のニッケとして
御菓子や香辛料としても輸入されますし、
棗や枸杞は中華料理などでも使用されます。
食品、医薬品に限らず、
残留農薬の問題は常についてくるのです。
2018年5月、農民連食品分析センターの自主調査によって、
農薬378成分について検査をしたところ、
8種類の生薬のうち、5種類から残留農薬が検出されています。(※)
検出されたのは、ネオニコチノイド系農薬や
除草剤「2,4-D(ニーヨンディ)」など。
神経に作用し、ミツバチ大量死の原因ともされている
ネオニコチノイド系農薬については皆さんもすでに
ご存知かと思いますが、
「除草剤2,4-D」というのは、
水田や芝の除草などでも用いられる農薬であり、
ベトナム戦争で枯葉剤の材料として使用されたものです。
検出された成分が最も多かったのはチンピ(みかんの皮)で、
5成分、痕跡も含めると9成分が見つかっています。
農民連食品分析センターでは、
2003年にも漢方生薬の5種類の残留農薬を調査し、
そのうち4種類からパラチオンなどが検出されたと
発表していますが、
2003年から15年たっているにも関わらず、
漢方生薬の基準値は設定されないままであるため、
今回の調査に踏み切ったのだそうです。
結果として、2003年の時点では検出されなかった、
ネオニコチノイド系のアセタミプリドとイミダクロプリド、
痕跡ではチアメトキサムがチンピやタイソウ、ソヨウから見つかり、
さらにチンピからは除草剤の2,4-Dが見つかったといいます。
実際、最近私の周りでも、
菊花や薬用人参で多くの残留農薬が見つかりました。
台湾や中国の生薬市場でも、
多くの残留生薬が残っている生薬が見つかっており、
安全な生薬の確保が大きな課題となってきております。
中国で社会問題化する、偽物の漢方薬や生薬
また中国国内においては、
偽物の漢方薬や生薬が出回り、社会問題化しています。
特に高価な生薬(一般に高貴薬と呼ばれます。)といわれる
牛黄(ごおう)、冬虫夏草(とうちゅうかそう)、阿膠(あきょう)などは、
多くの偽物が流通しているといわれています。
市場やネットで極端に安い生薬があれば、
ほぼ偽物と思って間違いないと思われます。
このことは日本に限らず、
中国、EU、台湾、アメリカなど、
多くの専門家や製薬会社が頭を抱えており、
それぞれの生薬の残留農薬の検査や
真偽の鑑定などを行っていますが、
私の知る限り、
日本で正しく安全な生薬の
鑑定ができる人はごく僅かです。
安心・安全な漢方薬や生薬を購入する時に気を付けるポイントとは?
そこで皆さんに気を付けて頂きたいのは、
漢方薬や生薬を購入される際は、
・なるべく大きい信頼できる会社
・信頼できる専門家のいるお店
を選ぶようにして頂きたいと思います。
特に出所の怪しい漢方薬や生薬は、
農薬問題だけでなく、有効成分も不安定だったり、
偽物(実際に過去日本で人が亡くなられています)
をつかまされることもあるので注意が必要です。
たとえ大きな企業であっても、
生産国の末端の農家まで管理しきれていない可能性もあります。
トレーサビリティが確立されているかどうかが
1つの大きなポイントになります。
また、海外旅行でお土産として購入するのは、
よほど自信がない限り、控えたほうがよいと思います。
これも過去には死亡例があります。(※)
このように様々な問題点を抱える漢方ですが、
それでも最近は、医師や薬剤師さんだけでなく、
漢方や薬膳を習いたいという方が増えてきており、
主婦の方も大勢います。
高齢化社会に伴う慢性病や不定愁訴(体調はすぐれないが、検査には異常がないなど)
の方々が増加するなか、漢方は素晴らしい成果を出しています。
人生百年時代と言われるようになりましたが、
是非とも皆さんには上手に東洋医学を活用して、
健康で長生き上手になっていただきたいです。
内服薬だけでなく針灸や養生法も多くあり、
奥が深く大変良く効きますよ!
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