子育てのお悩み相談に、有機畑のキッチンで働く現役ママがお答えします|『子供が野菜を食べません』
子育てのお悩み相談に、
有機畑のキッチンで働く現役ママがお答えします|
『子供が野菜を食べません』
こんにちは、ヨウコです。オーガニックレストランを、夫と経営しています。私は調理担当、夫は有機JASの認証を受けて、お店で提供する野菜を作っています。
お客様のほとんどが子育て中の方で、
皆様とオーガニックや料理についてお喋りをすることは、私の楽しみの一つです。
その中で、考えさせられたこと、発見したこと、面白かったことなどを、
キッチンで一人黙々と作業をしていると、思い起こすことがあります。
これを、IN YOU読者の、同じく子育て中の方と共有できたらと思い、
筆を執っています。
今回考えたのは『子どもが野菜を食べない』というお悩みです。
『うちの子、ここでは食べるのに、
家では野菜を食べません』
これは割と頻繁に、ご相談いただくお悩みです。
「ここでは食べるのに」というフレーズを嬉しく思いながら、
私はこう答えています。
「いつもと違う場所だから頑張って食べてくれたのかな?
そのうち食べるようになるから、お母さん、そんなに心配しないで!」
私も子育て中ですから、子供の好き嫌いが気になるのはよく分かります。
こんな仕事をしていますが、実は私も夫も、小さい頃は好き嫌いだらけでしたし、
息子にも苦手な野菜が結構あります。
ですが今は、私も夫も野菜が大好き。
そういったわけで、そんなに心配しなくても大丈夫だと思っています。
とは言え、できるだけ好き嫌いはない方が、作る方も食べる方もハッピー。
それに、嫌いなものを避け続けると、それを好きになるきっかけができないので、
こう続けます。
「だけど、ちょっとだけ子どもと野菜が仲良くなれる工夫をお教えしますね」
その工夫とは、
1、「本当に美味しい野菜の選び方」の工夫
2、「野菜の美味しさを引き出す調理方法」の工夫
3、「五感で野菜を食べさせる」ための工夫
これからその具体的な内容をお教えします。
オーガニックレストランの調理担当が教えるその秘密。
大人も子供でも、野菜嫌いの方のお役に立てるはずです。
ちょっと待って!
その野菜は本当に美味しい野菜ですか?
まずは、皆さんにお伺いしたいのですが、
「その野菜、あなたは本当に美味しいと思って子どもさんに食べさせていますか?」
実は、こんなまずい野菜…と思いながら食べさせてはいませんか?
子供の味覚は大人よりもはるかに敏感です
子供の味覚は敏感です。味を感じる「味蕾(みらい)」と呼ばれるセンサーは、生まれた時には既に備わっており、その数は1万個といわれます。
その数は年齢とともに急激に減少し、大人になると、数は半分になるといわれています。
また、子供は、苦いもの、酸っぱいもの、辛いものは、本能的に嫌いです。
大人になってこれらが食べられるようになるのは、
これら味の刺激に慣れるからというのと、
刺激を感じにくくなるからというのがその理由です。
参考:武井啓一『子どもの味覚・嗜好の 発達と食行動を探る』
ですから、大人でもエグみがあるな、とか、苦いなと感じるような野菜は、
子どもにとってはもっとエグく、苦く感じる野菜なのです。
エグみの強い野菜は、食べないのが正解!?
エグみのある野菜というのは、実は、肥料の窒素を必要以上に与えられた野菜です。窒素をたくさん与えると、色が濃く、大きな、一見、立派な野菜ができます。
しかし、過剰な肥料は硝酸性窒素(硝酸塩)という形で植物体内に溜まり、
これがエグみの原因になります。
さらに「メトヘモグロビン血症」という酸欠状態や、
ニトロソ化合物という発がん性物質の生成に関与しているのではないか、
という指摘まであります。
そして、EUでは野菜に含まれる硝酸性窒素の基準値が定められているのに、
日本では定められていません。
農林水産省は、野菜に含まれる硝酸性窒素の危険性について
明確には分からないとしながらも、それを減らす調理法などを
ホームページで紹介していますのでご興味のある方は御覧ください。
参考:「野菜等の硝酸塩に関する情報」
更に、硝酸性窒素を多く含む野菜は急激に大きくなるため、軟弱で、
虫がたくさん寄ってきます。
ですから、それを綺麗な姿で出荷するために通常、多くの農薬を使用しています。
以上の、硝酸性窒素自体の危険性と、農薬の危険性という2つの理由から、
苦味やエグみのある野菜は、子どもばかりではなく、大人であっても避けるべきです。
エグみがある野菜を、健康に良いからという義務感で食べるのは間違いなのです。
エグミが分かる敏感な味覚の持ち主=子供にこそ、
「無肥料野菜」を
それでは、どのような野菜を選べば良いのでしょう。私は、農薬不使用で、且つ肥料をほとんど与えず育てられた野菜をおすすめします。
オーガニック野菜の一部や、自然農法で作られた野菜が当てはまります。
手前味噌になりますが、ほぼ無肥料で作る我が家の野菜、本当に美味しいんですよ。
思い込みだと思われるかもしれませんので、いくつか実験の結果を示したいと思います。
『有機栽培ホウレンソウの品質について(北海道文京短期大学 荒川他)』
という論文がありますが、そこで紹介されている平成6年実施の実験では、
「…(有機栽培のホウレンソウは)食味試験ではハウスに比べて
特に甘味、歯応えで評価が高かった」という結果が得られています。
出典: https://www.jsfst.or.jp/nenzi/Proceedings/42taikai.pdf
また、平成21年の『野菜の美味しさ検討部会報告書』によれば、
タマネギについて、調理、官能評価を行った結果、
「有機栽培の方が味に深みがあり、明確に良いと評価された」とあります。
出典:http://www.yasaitobunka.or.jp/oishisa/report_21/rpt21_02-02.html
私達のお客様の中には、大人の方であっても、味覚がとても繊細で、
野菜が食べられないと仰る方がいらっしゃいます。
この記事を読んでくださる方の中にも、そのような方がいらっしゃれば、
是非、無肥料で育てた野菜を食べてみて下さい。
野菜のエグミが分かる敏感な舌の持ち主の方だからこそ、
その違いを必ず分かっていただけるはずです。
美味しい野菜こそ、美味しく料理を
いくら美味しい野菜を準備していても、食卓に出すことを避け続けていては、
子供が野菜を好きになる日は絶対に来ません。
どんなに子供さんがその野菜が苦手であっても、
口にするチャンスは作り続けるべきです。
そのためには、野菜以外の食べ物も含めて、なるべく色々な味に触れさせて、
それらの食べ物に親近感を持たせることが非常に大事なのです。
子供が野菜嫌いでも抵抗なく食べてしまう調理法
よく言われるように、細かく切ってハンバーグやパンケーキに混ぜ込むのもいいですが、それは、せっかくの野菜本来の味わいを分からなくしていますよね。
せっかく美味しい野菜を準備したのだから、
野菜の美味しさを引き出す、そんな料理方法を試してみましょう。
子供を野菜好きにするための調理法①
「じっくり加熱する」
大人には、さっと加熱した、歯ごたえやクセを生かした調理法も好まれますが、小さい子供にはじっくり加熱した、甘い野菜を準備してみましょう。
例えば人参。じっくりじっくり加熱した人参は、とってもコクが出て、甘くなります。
細く千切りにして、少しだけ油を引いた冷たいお鍋に入れます。
それに軽く塩をして、蓋をして、火をつけます。
後はじっくりじっくり加熱するだけ。
人参から出る水分で加熱しますが、もし焦げそうなら少しだけ水を入れて。
オレンジ色が黄色っぽく変わって、もうこれ以上加熱したら焦げてしまうという
ギリギリのタイミングで火を止めます。
これだけ食べてもとっても美味しいですが、ドレッシングをかけてサラダのように食べたり、
酢飯に混ぜてちらし寿司にしたり、卵焼きに入れたり。
冷凍もできるのでまとめて作るのがオススメです。
また、ブロッコリーは、いつもより長く茹でてやると、
青臭さが取れて、子供にとっては口当たりよく食べやすくなります。
焼き芋が美味しいのも、じっくり加熱するからです。
加熱方法を変えるだけでも、野菜は味が変わりますので、色々と試してみて下さい。
子供を野菜好きにするための調理法②
「揚げてみる」
少し大きい子どもさんには揚げ野菜も喜ばれます。サクサク、カリカリ、ぽりぽり、パリパリの楽しい食感で、
おやつ感覚で食べてくれます。
私の実の息子は春菊や、人参の葉っぱのように、香味のある野菜は苦手です。
そこで、これらを食べさせるために、天ぷらにします。
揚げたての天ぷらに塩や天つゆを付けて、「味見をしてー」と頼みます。
ご飯の前にお行儀が悪いのですが、揚げたての美味しさと、
空腹という調味料で、「もっとちょうだい」と言いながらぱくぱく食べてくれるのです。
いずれも、とてもシンプルな調理法です。
だからこそ、美味しい野菜でないと、美味しくなりませんのでご注意下さい。
逆に、美味しい野菜であればあるほど、シンプルな調理方法の方が野菜を活かすことが出来ますので、
是非お試しあれ。
五感で野菜に触れさせてみてください
私達のオーガニックレストランは、店の目の前の畑で野菜を作っていますので、
収穫体験をしていただくことがあります。
その時の子どもたちの表情と言ったら!
おっかなびっくり、だけど興味津々。
収穫した野菜はお家で召し上がっていただくのですが、
「いつもは食べないのに今日は食べました」なんてご報告をいただくことも多く、嬉しい限りです。
昨日は、カラフルな二十日大根(ハツカダイコン)をご準備した所、
普段、大根は食べないお子さんが、「綺麗だねー」と興味を持って、
食べてくださったそうです。
目で楽しんで、触って感じて、匂いを嗅いで見る。
今は食べられなくても、野菜と仲良くなっておくことは大切なことです。
そして、いちばん大事なのは、
楽しく温かい食卓の雰囲気
色々とご紹介してきましたが、一番大事なのは、
冒頭でお伝えした通り、周りの大人が神経質になりすぎないことです。
美味しく、楽しい雰囲気で食べるということが一番大事です。
食べることが苦痛になると、実際以上に食べられません。
「どうして食べないの!」「食べないと立派な大人になれないよ!」と言いたいところですが、
ご心配なさらなくても大丈夫です。
だってほら、私、こんなに野菜大好きな大人になれましたから。
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