農家が種を自家採種したら懲役10年? 罰金1000万円? まもなく国会で審議される「種苗法改正」の真相とは?
農家が種を自家採種したら懲役10年?
罰金1000万円?
まもなく国会で審議される、
「種苗法改正」の真相とは?
IN YOU読者の皆様であれば、本格的な農業とはいわずとも、家庭菜園をしていたり、いずれしてみたいと思っている方も
多いのではないでしょうか?
私も例に漏れず、特にこのコロナ禍以来、食料難の時代が来ると踏んでいて、
せめて子供に食べさせる安心な食材を少しでも自分たちで賄うことが出来るよう、
オーガニックの種を購入して、小さなお庭で無農薬野菜を育てています。
もちろん収穫後は来年のために種採り(自家採種)する予定です。
ところが、現時点で家庭菜園に影響は及ばないようですが、
今後日本では農家が種を自家採種したら懲役10年、罰金1000万円になる可能性が
出てきていることをご存知でしょうか?
農林水産省は今年3月に、上記のような罰則の可能性を含む、
農家による自家採種を禁じる「種苗法改正」案をとりまとめて先の通常国会に提出しましたが、
多くの反対論が出た結果、一旦、見送りとなりました。
しかし廃案とはならず、継続審議が決定。
そのため、秋に臨時国会が開かれれば、そこで議論される可能性があります。
そもそも種苗法とは?
種苗法とは、植物の新しい品種を開発した人や企業などの権利を守る法律です。種子には大まかに分けて2種類があります。
「登録品種」と「一般品種(固定種もしくは在来種ともいう)」です。
品種改良を重ねて新品種を開発した際に農林水産省に品種登録すると、
25年間(樹木などの永年性植物は30年)に渡って
無断で譲渡や販売、増殖ができなくなります。
これが、いわゆる著作権保護された品種、登録品種です。
対して一般品種は、品種登録をされたことがない品種と、
25年または30年経過して登録切れになった元登録品種を指しています。
ただし現行の種苗法では例外があり、農家が購入した登録品種を育て、
そこで出来た種を採取して(自家採種)保存し、
翌年以降その種子を撒いて栽培を続けることが一部を除いて容認されています。
この例外から、種苗法とは、種子を購入する時は開発者の知的財産を守り、
育てた後は農家の独立性を重んじる、
開発者と農家双方のメリットのバランスが取れた法律であることが分かります。
種苗法の何を改正しようとしているの?
ところが、今回の種苗法改正案では農家によるその登録品種の種の自家採種、自家増殖が「一部を除き、原則OK」から「一部を除き、原則禁止」に大きく改正される予定です。
この規定が導入されれば農家は登録品種の自家採種、自家増殖が出来なくなり、
今後は種や苗の権利者にお金を払って(自家採取または増殖の)許可をもらうか、
使用する全ての種苗を購入しなければならなくなります。
つまり、一気に、開発者優位の法律に変わるということです。
そして、違反した農家は10年以下の懲役と1000万円以下の罰金
が課せられることになることになるといわれています。
なぜ、種苗法は改正の必要があるの?
政府は、今回の種苗法改正について、シャインマスカットに代表される優良品種の海外流出を防ぐため、
という目的を前面に押し出しています。
ところが実は、この種苗法は現行のものも、もちろん改正後も
日本に限って適用される国内法であり、海外での取り締まりは出来ません。
もし海外流出を止めたいと考えるのならば、
流出先として危惧される国で意匠登録または育種登録するのが唯一の対策です。
農林水産省自身も、2017年11月号の『農畜産振興機構(alic)』の広報誌に、
その食料産業知的財産課が下記の様に寄稿しています。
「この事態(シャインマスカット等の海外流出)への対策としては、
種苗などの国外への持ち出しを物理的に防止することが困難である以上、
海外において品種登録(育成者権の取得)を行なうことが唯一の対策となっています」
引用:「alic農畜産業進行機構広報誌」https://www.alic.go.jp/koho/kikaku03_001040.html
つまり、いくら種苗法を改正しても結局、海外流出を止めることはできない、
ということ。
よって改正の本当の意図は別のところにあるのではないか
ということを、現在、多くの方が指摘しています。
登録品種は一般品種より少なく、
わずか10パーセントなので大きな影響はない?
今回の種苗法改正に関して自家採種できなくなるのは登録品種のみで、登録品種は一般品種に比べて少なく、10%しかないため、
概ねの品種には影響がありませんので大丈夫です、
と言うのが政府の言い分ですが、本当でしょうか。
実は、登録品種は近年ものすごい勢いで増加しています。
2016年までは82種だったものが、
種子法撤廃となった直後、2017年に3倍以上の289種に。
2018年には356種、2019年には387種に急増。
現在、品種名として残っているもの全てを基準にすると、
確かに、政府の主張する数字に誤りはないように見えますが、
実際に今栽培中の品種を調べてみると、とても10%では収まりません。
例えば、沖縄で栽培されているサトウキビ10品種のうち9品種は登録品種で、
政府の言い分とは真逆の90パーセントが登録品種となっています。
他の都道府県でも穀物、いちご、枝豆、果樹などでは、
自家増殖できる品種よりも登録品種が圧倒しているのが実態です。
出典:『タネはどうなる⁈』山田正彦著
種は誰が開発しているのか?
この改正で得をするのは・・・
40年ほど前までは、野菜の種子も、国が保護していた米、麦、大豆と同様に国産100%、そして伝統的な固定種でしたが、今では野菜の種子の90%が種子会社が開発したF1の品種になり、
価格も従来は一粒1〜2円だったものが、今では一粒40〜50円となっています。
第二次世界大戦以後、「緑の革命」を経て、
いつのまにか私たちが購入する野菜の種子の70%はモンサント(現バイエル)、
ダウ・ディポン、シンジェンタといった多国籍種子企業によって
生産されるようになってしまいました。
これらの会社は元々は化学肥料や農薬のメーカーでしたが、次々と種子会社を買収。
その後、種子、化学肥料、農薬の3つをセットで販売するビジネスモデルを確立して急成長を遂げました。
画像引用:「ビジネス+IT」 URL:https://www.sbbit.jp/article/cont1/36568
出典:『タネはどうなる⁈』山田正彦著
種苗法だけを見ていても真実は分からない–
実は3つがセットになっている法改正
実は、この法改正を俯瞰してみると、2018年に国民にほとんど知られず衆参両院で合計12時間足らずの審議で
あっさり撤廃された主要農作物種子法(種子法)、
また今回の種苗法改正、
さらにもうひとつ、種子法撤廃とほぼ同時に通った「農業競争力強化支援法」の
3つがセットになっている実態が見えてきます。
それぞれの法律の詳細については割愛しますが、
「種子法撤廃」により国が守っていた主食の米、大豆、麦を
公的機関が安く開発するのではなく、多国籍種子企業が参入できるように解放し、
「農業競争力強化支援法」で
今まで蓄積してきた育種の知見を多国籍種子企業に譲渡、
そしてさらに「自家採種を禁止」して多国籍種子企業の種子を
農家に毎回購入させる・もしくは許諾料の支払いを農家に要求する仕組みを作る、
という流れです。
日本だけ見ていても分からない–
世界中で巻き起こる種子法撤廃と
“モンサント法案”と言われる自家採種禁止法
実はこの種子法廃止と自家増殖禁止のセット導入は、1980年以降、多国籍種子企業が各国で使ってきたビジネスモデルです。
これに伴い、各国で作られた法案の中味は異なりますが、
共通する流れは以下のようなものです。
①:
他国との自由貿易協定などを通じて
UPOV(ユポフ)1991年条約の批准とそれに基づく国内法案が迫られます。
このUPOV条約(植物の新品種の保護に関する国際条約)は1961年に最初、
種子の開発者の権利を定める為に成立したもの。
当初は農家が種を保存する事は当然の権利として考えられていましたが、
1991年の条約改定時に農家による自家採種は種の育成者の承諾がなければ許されなくなりました。
②:
法制度の変更により、農家はタネの購入が必要とされ、自分たちのタネを使った農業ができなくなり、
種子企業から種子を毎回買わなければならなくなります。
そして、登録された種子の多くは外国企業のものであり、
結局、種子市場を独占する遺伝子組み換え企業であるモンサント社を利するものであるとして、
「モンサント法案」というあだ名がつきました。
出典:ドキュメンタリー映画「種子ーみんなのもの?それとも企業の所有物?」
URL:http://www.parc-jp.org/video/sakuhin/semillas.html
「モンサント法案」によってインドの農民20万人が自殺!
インドは1980年代に公共的な種子法を廃止して、その後モンサント法と言われる自家採種禁止法を通しました。
そして多国籍種子企業に種子企業が買収され、
遺伝子組み換えの「Btコットン種子」と、
(10万件の訴訟が出ている農薬である)ラウンドアップがセットになって販売された結果、
種子価格は導入時には安かったにも関わらず、すぐに釣り上げられ、
その債務で20万人の農民に自殺者が出て、大問題になっています。
中南米では各国で「モンサント法案」への反対運動が勃発!
UPOV条約を推進した中南米でも自家採種禁止法案が2010年代に次々に生まれましたが、メキシコ、チリでこそ廃案になったものの、ホンジュラス、コロンビア、グアテマラでは
法案が成立してしまいました。
ただし、グアテマラでは大きな反対運動が起こり、その後、廃案に。
ホンジュラスやコロンビアでは現在も大きな反対運動が続いています。
ベネズエラ、アルゼンチン、ブラジルでも類似の法案が出されますが、
反対の声は強く、ベネズエラでは逆にモンサント法の制定を禁止する法案が可決されています。
出典:ドキュメンタリー映画「種子ーみんなのもの?それとも企業の所有物?」
URL:http://www.parc-jp.org/video/sakuhin/semillas.html
そして今、狙われているのは日本
そして今回、日本では関税を引き下げ、日本の農業や医療などの多岐にわたる分野で大きな問題を引き起こすとして批判されているTPP(環太平洋パートナーシップ協定)の
第18条・第7項目でUPOV1991年条約が推進されています。
これに従って2018年には種子法が廃止され、今回の種苗法改正つまり
モンサント法案(自家採種禁止法)が間も無く国会を通ろうというところまで
来ているのです。
これが通ってしまえば、今後日本がどのような展開になっていくのか、
インドや中南米諸国の例を見れば明らかではありませんか?
種苗法改正反対のアクションとして
私たちが今すぐできることは?
さて、この成り行きを私たちは指をくわえてみているしかないのでしょうか?いいえ、私たち日本国民一人一人は、
正当な手段で国や自治体に訴えることができます。
自分の小さな声なんて、聞き入れてもらえないと思いますか?
いいえ。
実際に、以下に紹介するような手法等によって
先に撤廃された種子法を実質復活させる種子条例が既に、
18の道県にて制定されています。
これに引き続き、今回の種苗法改正に対しても、
私たち一人一人が声を上げていきましょう。
①「国に意見書を出す」よう、地方議会に請願や陳情を
国に「種苗法改定案の取り下げ(廃案)または慎重審議を求める意見書」を提出するよう、地元議会に請願または陳情で求めることができます。
陳情書の雛形が「日本の種子を守る会」のサイトにありますので、それを参考に書いてみましょう。
日本の種子を守る会
②国会に請願や陳情する
誓願書、または陳情書を作成し、請願の場合は紹介議員(議員事務所に連絡して依頼)を通じて国会に提出できます。
誓願書と陳情書のサンプルはこちら
③国会議員に働きかける
地元選出国会議員や衆参の農林水産委員会メンバーへFaxや電話で働きかけを!両議員の委員会名簿リンク→衆議院農林水産委員会 参議院農林水産委員会
参考:「日本の種子を守る会」URL:https://www.taneomamorukai.com/shubyouaction
未来にとって必要なことなら他人任せにせずに、
行動を起こしませんか?
幼い息子がいる身として、今後彼が生きていく世界が少しでも暮らしやすいところであるように・・・
私自身は今外国で暮らしているものの、日本人である以上、私自身もいずれ日本に帰った時に
遺伝子組み換え食品だらけで何も食べられないような状況にならないよう、
できることはやるべきだと考えています。
そのため、今回この記事を書くことを決めましたし、
私のできるパート(役割)を何でもいいから果たそうと思って筆をとりました。
今日本は、とても重要な岐路に立っています。
自分にもできる小さなパートを果たすことで、
日本を少しでも住みやすい素敵な国にしていきませんか。
オーガニック食品やコスメをお得に買えるオーガニックストアIN YOU Market
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