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日本のエコタウン事業は廃棄物ゼロを実現できるのか。SDGsの先駆けともいえる承認地域の具体的取り組みを解説します!

日本のエコタウン事業は廃棄物ゼロを実現できるのか。SDGsの先駆けともいえる承認地域の具体的取り組みを解説します!


みなさん「エコタウン」という言葉をご存知でしょうか?

名前の響きから自然があふれる田舎町のような印象を受けるかもしれません。

実はエコタウンとは、国が行っている事業の一環であり、比較的人口の多い都会もエコタウンとして認定されているのです。

今回は、あまり知られてないエコタウンがどんな事業なのか、どんな取り組みが行われているのかをご紹介します。

そもそもエコタウンってなに?街の名前じゃないの?



冒頭でお伝えした通り、エコタウンとは国が行っている事業の名前です。

この事業は「ゼロ・エミッション構想」という構想に基づいて作られた制度です。

2015年にSDGs(持続可能な開発目標)が国連総会で採択され、令和に入るとメディアでも盛んに取り上げられるようになりました。

実は、エコタウン事業はそれよりも18年も前の1997年に始まった事業なのです。

SDGsの先駆けとも言えますね。

ゼロ・エミッション構想とは?



環境省では「ある産業から出るすべての廃棄物を新たに他の分野の原料として活用し、あらゆる廃棄物をゼロにすることを目指す構想」と定義されています。

この考えは国連が提唱したもので、「環境を汚したり気候変動を引き起こしたりする廃棄物を出さない仕組みを目指しましょう」というものです。

エコタウン事業とは?



1980年代後半から1990年代前半にかけて起こったバブル景気により、日本では大量にものが消費され捨てられていました。

それに伴い廃棄物が増加し、ゴミの処分場すら余裕がなくなる状態でした。

環境問題は深刻化するばかりで、このままではまずい!となって創設されたのがエコタウン事業です。

この事業では、自治体が地域の産業や技術を生かして、最終的に廃棄物をゼロにすることを目標に街づくりを行います。

自治体の取組を国が精査し、承認されればエコタウンとして認定されます。

日本のエコタウン事業のモデルとなっているが、デンマークのカルンボーです。

ここでは火力発電所から出る排熱が工場や地域の熱を使う施設に提供されたり、産業排水が高度処理され工場で再利用されたりしています。

日本でもカルンボーを見習って、廃棄物ゼロを目指して様々な取り組みがされているのです。

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エコタウンの承認地域は26地域! あなたの住んでいる街もエコタウンかも?

では、どんな地域がエコタウンになっているのでしょうか。

2021年現在、以下の地域がエコタウンとして承認されています。
1997年度 
北九州市、岐阜県、長野県飯田市、川崎市

1998年度 
福岡県大牟田市、札幌市、千葉県・千葉市

1999年度 
秋田県、宮城県鶯沢町(現栗原市)

2000 年度 
北海道、広島県、高知県高知市、熊本県水俣市

2001年度 
山口県、香川県直島町

2002年度 
富山県富山市、青森県

2003年度 
兵庫県、東京都、岡山県

2004年度 
岩手県釜石市、愛知県、三重県鈴鹿市

2005年度 
大阪府、三重県四日市市、愛媛県

※年度は承認年度
引用:「エコタウンの歩みと発展」環境省  

街だけでなく、県や都の単位でエコタウンとして承認されている事がわかります。

また、川崎市や札幌市など人口100万人を超える大都市もエコタウンとされているのです。

エコタウンでは、実際にどんなことが行われているの?3つの具体的事例

ここではエコタウンで行われている事例を3つ紹介します。

神奈川県川崎市



川崎市は東京に隣接し、人口150万人を超える大都市です。

大正時代から開発が進み、京浜工業地帯として現在でも様々な工業製品が製造されています。

しかし、多くの製品が生み出される裏側で、1960年代~70年代には大気汚染や水質汚濁などの公害が発生してしまったのです。

また、東京のベッドタウンとして人口が増え、排出されるごみの量が増大してしまいました。

その結果、ごみ処理能力が追い付かず1990年には「ごみ非常事態宣言」を出すほどになったのです。

このような経験を経て、川崎市では環境負荷軽減に取り組み1997年にエコタウンの承認を受けることになりました。

川崎市の取り組み

川崎市の工業団地では以下のような取り組みが行われています。
・紙類の廃棄物を団地内企業で再生する

・焼却施設から出る廃熱を再利用する

・高度処理された排水を再利用する

・生ごみをコンポスト化して肥料として活用する

公害やゴミ問題に苦労したことから環境に目を向けたからこそ、このような取り組みに結びつきました。

福岡県北九州市



エコタウンとしては最も成功している自治体と言えるでしょう。

北九州市も、川崎市と同じく北九州工業地帯として産業が栄えた反面、公害に苦しんでいました。

多くの工場から毎日ばいじんやばい煙が排出され、当時は青い空が見えなかったといいます。

洗濯物を干せば黒く汚れ、窓を開けて寝ると顔がススで汚れ、海は排水で真っ黒になるほどの環境でした。

体調不良の人間が後をたたず、ついには労働者の妻たちが公害に対して抗議運動を開始し、環境改善への取り組みが始まりました。

このような公害の歴史があったからこそ、行政、企業、市民が一体となって問題に取り組み、奇跡的に環境が回復したのです。

この経験で培った技術や政策が評価され、エコタウンとして承認されました。

北九州市の取り組み

北九州市では以下のような取り組みが行われています。

・大学と連携した環境計の基礎研究や技術開発を行う

・リサイクルや環境ビジネスの展開を行う

・ベンチャー企業の支援を行う

・九州エコタウンセンターを設立する

企業、大学、自治体が連携して技術開発や問題解決に活発に取り組まれています。

北九州エコタウンセンターでは「ゴミ削減の意識」「エネルギーの大切さ」「循環型社会」について学習することもでき、環境教育が根付いている都市と言えるでしょう。

新型コロナが流行する前は、国内外から年間で10万人もの視察が訪れるほどのモデル事業になっています。

香川県・直島



直島は近年アートの島として非常に人気の観光スポットになっています。

その直島が「エコアイランドなおしま」として廃棄物対策に力を入れていることはご存知でしょうか。

直島がエコタウンとなったきっかけは、隣接する豊島で産業廃棄物が放置されたことに端を発しています。

この出来事は豊島事件として取り上げられ、問題となりました。

県や自治体との協議の結果、放置された産業廃棄物は、最終的には直島で中間処理されることになったのです。

この中間処理施設を建設する条件として、直島と香川県の間で、以下の4つが締結されました。

・公害を起こさないこと

・地域の活性化につながること

・住民の賛同が得られること

・デメリットに適切に対応すること

これらは「エコアイランドなおしまプラン」として実行され、この取り組みが評価されて、直島がエコタウンとして承認されたのです。

エコタウン・直島の取り組み

直島では以下のような取り組みが行われています。

・廃棄物から金、銀、銅、鉛、亜鉛など貴重な金属を回収する

・リサイクル施設から出る熱を発電に利用する

・環境調和型のまちづくり(啓蒙活動、環境教育・環境学習等)

直島は離島であり、物資の移動にコストがかかるというデメリットがあります。

そのデメリットをどう克服するかが鍵になってくるでしょう。

エコタウンのメリットは?

今回紹介した自治体の事例をもとに、エコタウンのメリットを紹介します。

企業・自治体のメリットは?

・環境事業に取り組むことで自治体や会社のイメージが向上する

・エコタウン内の企業で連携して問題解決に取り組める

・リサイクル率、リサイクル量が向上する

エコタウンに住む住民のメリットは?

・環境意識が向上する

・環境関連の職業の雇用が増加する

・環境教育を子供のころから受けられる

エコタウンではリサイクルやリデュース、リユースに関する技術を持ったの企業も集まっているため、環境関連の職業に就きたい方にはうってつけの地域かもしれませんね。

エコタウンはこれからどうなっていく?



SDGsが掲げる持続可能な社会に向けて、リサイクルや再生エネルギーは重要性を増しています。

エコタウンで開発された技術やシステムは、これからの社会に必要なものが多くあり、期待が寄せられています。

また、ゼロ・エミッションは、今の世界において非常に重要な考え方です。

現在の地球は、温暖化や海洋プラスチックなど多くの問題を抱えています。

この問題を少しでも解決するために、エコタウンは非常に重要な役割をもっており、他の地域の見本となるでしょう。

1997年にエコタウン事業が始まって依頼、北九州市を筆頭として、大学や企業がリサイクルや新エネルギーについて盛んに研究しているところもあります。

しかしながら、エコタウンとして承認された当初より、環境活動がトーンダウンしている地域があるのも事実です。

このような地域では今一度、地域全体を巻き込んで活動する必要があります。

エコタウンに住んでなくてもできる!ゼロ・エミッションへの挑戦



もちろん自分が住んでいる地域がエコタウンでないからといって、できることが何もないわけではありません。

・ごみの分別を正しく行う

・ゴミとして捨てずに回収スポットへ持っていく

・生ゴミを堆肥化する

など、小さなことですが、個人レベルで取り組めることがたくさんあります。

エコタウンとして承認された地域は、公害や廃棄物に悩まされていたために環境活動に力を入れるようになったという背景がありました。

「自分が住んでいる地域が環境問題を抱えていないので関係ない」 というスタンスではいけません。

環境汚染は、日本だけでなく地球全体の問題です。

地球に住む者の責任としてゼロ・エミッションを実現できるよう、一人ひとりが努力をする必要がありますね。


参考:『「エコタウン」が地域ブランドになる時代』関満博

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