今こそ知るべき!お粥に学ぶ禅の心。不安定な時代を生きる私たちが取り入れたいライフスタイルとは
今こそ知るべき!お粥に学ぶ禅の心。不安定な時代を生きる私たちが取り入れたいライフスタイルとは
今年の新型コロナウイルスの流行で、私たちはそれまで当たり前だった多くのことを失いました。
これからはよりいっそう、鋭い感性や自分の価値観、自分の体と向き合うことが必要だと多くの方が感じていらっしゃるはずです。
そこで今回は、心と体を磨くため「朝のお粥」を通じて禅の考え方を取り入れる、そんなライフスタイルを提案します。
ご興味のある方はご一読いただけると幸いです。
お粥を通して自分自身と向き合う
禅宗のお坊さんの朝食はお粥です。
これに倣い、私たちがお粥を朝食に取り入れると、
・禅の食に関する考え方を取り入れることで「食べる」ことを見つめ直すきっかけができる
・お粥を通して、自分自身と向き合う時間が増える
・お粥を通して、自分自身と向き合う時間が増える
という効果が期待できます。
不安要素の多いこの時代。
自分自身をしっかり持ち、芯を持って生きていくため、禅を生活に取り入れてみましょう。
ここからは、禅における食事の考え方とお粥の関係について述べ、次に基本のお粥の作り方を解説します。
注)この記事の中では、禅は「悟りを開くための修行」として、また禅宗は「座禅修行を主に行う仏教の宗派の総称」として定義してお伝えいきます。
お粥と禅の関係とは
食べることを禅に学ぶ
皆さんの直近の食事について思い出してください。
いつ、誰と、何を食べましたか?
それはだれが、どのように作りましたか?
また、それを食べて心と体はどうなりましたか?
そんなことは思い出せないし、意識していないという方が大半でしょうか。
そんな中、深く食事と向き合うことを、修行の一部としている人がいます。
それが禅宗のお坊さんたちです。
私たちの身近にある禅
禅と聞いてもピンとこない、という方は多いかもしれません。
しかし、禅をルーツとするものは、たくさんあります。
水墨画、華道や、茶道、能のような文化や芸能、床の間のついた書院造りや、枯山水を中心とする日本庭園のような建築物は、全てそうです。
懐石料理という言葉も同じです。
普段意識していなくとも、禅は、色々な形で私たちの生活に取り入れられているのです。
禅宗では「座禅」による修行が有名ですが、それ以外のすべての行動もまた修行であると考えられています。
曹洞宗を開いた道元は、『典座教訓』(てんぞきょうくん)『赴粥飯法』(ふしゅくはんぽう)という書物の中で、食の考え方、作法について述べており、食を修行の重要な要素と捉えていたことが分かります。
食べ方の作法や、食事を準備する手順など、細かな決まりごと多くがありますが、今回は「五観の偈」(ごかんのげ)を紹介します。
五観の偈
五観の偈とは、私たちが食事の前に「いただきます」と言うように、お坊さんたちが食事の前に唱える言葉です。それは、
一、功の多少を計り彼の来處を量る
(こうのたしょうをはかり、かのらいしょをはかる)
→どのような天の恵みや、人の苦労があってこの食事が並んでいるのか考える
二、己が徳行の全缺と忖って供に応ず
(おのれがとくぎょうのぜんけつとはかってくにおうず)
→自分がその食にふさわしい行いが出来ているかを考える
三、心を防ぎ過を離るることは貪等を宗とす
(しんをふせぎとがをはなるることはとんとうをしゅうとす)
→慢心を防ぎ、過ちや、むさぼることから離れる
四、正に良薬を事とするは形枯を療ぜんが為なり
(まさにりょうやくをこととするはぎょうこをりょうぜんがためなり)
→食事は薬であり、体が朽ち果てないようにするためのものである
五、道業を成ぜんが為に応に此の食を受くべし
(どうぎょうをじょうぜんがためにまさにこのじきをうくべし)
→修行をなすためにこの食事を頂く
参考:曹洞宗近畿管区教化センター『お経入門』食事の偈
という言葉からなっています。
元は漢文ですので、読み方や、意訳には多少違いがあるかもしれませんが、私は上のように理解しました。
一つ一つの言葉に深い意味があります。
共通しているのは、食べ物に深く、真摯に向き合い、感謝して食べるということです。
自分を律しながら、必要な分だけ、無駄なく食べ物をいただくのだという姿勢を感じます。
私たちがこの不安定な時代を生きていくために必要なのは『健康な心と体』です。
健康な心と体を作るのは『食』です。
この五観の偈に照らしたときに、あなたは正しい食ができていますか?
お粥を食べて、心と身体を磨く
曹洞宗のお寺の朝ご飯は、粥座(しゅくざ)といい、その字の通り「お粥」です。
おかずは漬物とお塩であり、非常に質素です。
先に述べた、食事への考え方を知ったうえで、なぜ朝食がお粥なのかを考えてみましょう。
その理由の一つには、水分の多いお粥は、少量のお米でより多くの人数の食事を賄えるという経済的な理由があったようです。
しかしながら、一番の理由は味気ない(と感じることもある)お粥を毎日繰り返して食べ続ける、または作り続けること自体にあるのではないでしょうか。
「またお粥か…」という慢心を克服することが修行であり、これを続けることで感覚が鋭敏になる。
その結果、体調の変化、お米の滋味深さ、ひいては食のありがたさを、敏感に感じるようになる。
つまり、お粥というシンプルな食べ物を食べ続けることで、お坊さんたちは心と身体を磨いていると考えられるのです。
お粥の十徳
先ほどの『赴粥飯法』の中に、『粥有十利』(しゅうゆうじゅうり)つまり今風に言うと、お粥の10のメリットが記してあります。
それによれば、お粥には
色、力、寿、楽、詞清辯、宿食除、風除、飢消、渇消、大小便調適
の効果があるのだそうです。
参考:典座ネットブログ 精進料理とおかゆ7 おかゆに十の利点あり
訳すなら、
食べれば、体に力がみなぎり、長く生きられる。
言葉が清らかになり、胃もたれしないし、風邪もひかない。
消化が良く、空腹感を減らし、便通もよい。
というところでしょうか。
最初にこれを知った時、本当に長く生きられるのかなど、根拠が不十分だと感じました。
しかし、これは、お粥自体にその効果があるということではなく、朝のお粥を続けることで、自分自身が体調の変化に敏感になり、結果としてそうなるということではないかと推察しています。
朝食にお粥のすすめ
私たちが心と身体を磨くために座禅のような修行を生活に取り入れることは難しいですが、『五観の偈』と『朝食にお粥を取り入れてみること』はできそうです。
お粥は、先に述べたような効果があるばかりではなく、何よりもその温かさやクリーミーな味わいが朝食にはぴったりです。
究極にシンプルなお粥の作り方
ここで、基本的なお粥の作り方を復習しましょう。
炊いたご飯から作る場合は、ご飯の倍量の水で炊くのが目安です。
生のお米から作る場合は以下の通りです。
〇倍粥というのは、水がお米の何倍かということを表します。
5倍粥ならお米が50gの時に水を250g、7倍粥ならお米50gの時に350gの水を入れます。
私は、炊き方は鍋でご飯を炊くのと同じように考えています。
浸水して鍋を火にかけ、煮立ったら一度しゃもじでなべ底から混ぜ、少しだけ蓋をずらして極弱火。
20分ほどしたら火を止め、15分蒸らす。
出来たら少し塩をします。
これだけシンプルな調理法ですので、材料が味を左右します。
特に、塩は商品によって味が随分違います。
産地や、製造方法に目を向けてみるのも良いでしょう。
お粥のお供には梅干しを
お粥のお供の定番は梅干し。これにはちゃんとした意味があります。
梅干しは多くの唾液を分泌させます。唾液に含まれるアミラーゼが、お米のでんぷんを糖に分解して、甘みを感じさせてくれるようになります。
また、酸っぱいクエン酸は、体内のクエン酸回路を活性化させてくれるので、糖や脂質の代謝も活性化することができるのです。
お粥生活の注意点
お粥は、通常の白米と比べたときに、同じ重さであっても、水分量が多くカロリーが低いという特徴があります。糖質やカロリーの摂取を控えている人にとってはうってつけですが、エネルギーを確保したい場面では不適です。
野菜を足したり、たんぱく質を足して、栄養バランスを整える必要があります。
また、のど越しがよく、口当たりの優しいお粥ですが、噛まずに飲み込みがちです。せっかく消化の良い食べ物でも、飲み込んでしまえば、負担がかかる事になってしまうのでご注意を。
『人を待たせてもお粥待たすな』という言葉があります。
お粥が出来たら、なるべく出来立てを食べてくださいね。
1月は季節のお粥を取り入れて
1月は、7日の人日の節句の七草粥や、15日の小正月に小豆粥など、おかゆを食べることとされる日があります。これはそれぞれに邪気払いの意味があるとされています。消化によく、お腹の中から体を温めてくれるお粥を食べることで、冬の病気にかかりにくくしようという意味があるのです。
お粥を通して自分自身と問答を
病気の時など、体調を壊したときに食べるものと思われがちなお粥ですが、日々の生活に取り入れることのメリットがお分かりいただけましたか?
あなたも、お粥を作る時、食べる時、スマホやテレビから離れてみましょう。
自分自身のこと、食べ物のこと、周囲のことについて、深く考える時間が、私たちには必要です。
自分自身に問いかけること、つまり問答は、禅においても悟りを開くために必要だとされています。
お腹の中から感じるお粥のぬくもりは、この困難な時代に何を選ぶべきなのか、何を食べるべきなのか、どのような態度であるべきなのか、あなたなりの答えに導いてくれるはずです。
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