【イタリア発レポート】美食の国イタリアでヴィーガンを続ける女性に質問!気になる日常生活や人間関係、恋愛事情は?
完全菜食主義者と訳されるヴィーガン。
「主義」とつくことで、
なんだか厳めしいような感じがし、
また、マイノリティであることから、
世の中ではネガティブな印象を持つ人も
少なくないかもしれません。
しかし、多くのヴィーガンは、
当然ながらその他の人々と同様に、
日々の生活に喜びを見出し、
時に悩みながら人生を謳歌しようとする
普通の人々です。
私の住むイタリアは「美食の国」と言われ、
動物性食品とは切っても切れないようなイメージがありますが、
そのイタリアでもヴィーガンの人たちは存在します。
今回は、ヴィーガン歴5年の女性に、
日常生活や人間関係、恋愛事情など、
多くのことをうかがうことができましたので
お伝えいたします。
知られていないヴィーガンの日常
動物愛護や環境保全など様々な理由で
ヴィーガンという生き方を選択する人が世界的に増えています。
とはいえ、口にするものに加え、シルクやウールといった、
動物に由来する製品の使用も避けるヴィーガンは、
まだまだ少数派です。
イタリアでも、ヴィーガンは
全人口のわずか2%程度というデータがあります。
そのため、動物の権利に関する
ヴィーガンの訴えを耳にすることはあっても、
彼らの日常生活を知る機会は
あまり多くはありません。
そこで、ヴィーガンになって
5年になるイタリア人女性にインタビューをしました。
イタリアで暮らすヴィーガンの日常を覗いてみましょう。
イタリアでヴィーガンとして生きる
アンナさんとリッカルドさんご夫妻
日本語を少し学び、
観光で日本を訪れたこともあるアンナさんは、
公務員として働くかたわら、
アーティストとしても活躍中。
素晴らしいお料理の腕を持つ主婦でもあります。
小津安二郎や村上春樹が好きという
夫のリッカルドさんもヴィーガンです。
ヴィーガンになったきっかけは「うさぎ」
アンナさんとクオーレディパンナくん。他にも3羽のウサギを飼っています。
Q:ベジタリアンからヴィーガンになったと聞きましたが、
そのきっかけを教えて下さい。
アンナ:ウサギを飼ったことが始まりでした。
これまで猫を飼っていたことはありますが、
ウサギを飼い始めて意識が変わりました。
ウサギは獲物になりうる動物。
ウサギのとる行動を見て、心を寄せていくうちに
ベジタリアンになることを決めました。
動物を利用して生きるのはやめようと思ったんです。
Q:それで、まずはベジタリアンになったんですね。
アンナ:最終的にはヴィーガンになるつもりでした。
でも、いきなりヴィーガンになるのはちょっと怖くて。
栄養面で偏りが出るのではないか、
体調を崩すのではないかと、
すぐには踏み切れませんでした。
まずはお肉を少しずつ代替食品に変えていき、
栄養士にも相談しました。
特に体調面で問題はありませんでしたが、
定期的に血液検査もしました。
そうしたら、お肉を食べていた時と数値に差はなかったんです!
ヴィーガンならではの栄養面の課題、
サプリでもお肉でも結局は同じという事実
Q:栄養面で特に気を付けていることは何ですか?
アンナ:ヴィーガンはビタミンB12が不足しがちです。
ヴィーガンになって数年間は
体内に残っているので問題ありませんが、
いま現在はサプリで補完しています。
でも、これは皆さんも一緒なんですよ。
なぜなら、こういう仕組みになっているから。
ビタミンB12は土の中にいるバクテリアが作るもの。
それを動物が草を食む時などに体内に取り入れ、
人間はそのお肉からビタミンB12を摂取します。
でも大量生産のために
飼育されている現在の家畜は
土からビタミンB12を摂取する機会が無くなり、
ビタミン剤から栄養を補給しています。
だから結局は同じことですね!
★ビタミンB12も摂れる!奇跡の藻『ブルーグリーンアルジー』
イタリアでヴィーガンになって諦めるのが難しかった食べ物
Q:ベジタリアンだった期間はどれぐらいですか?
アンナ:1年ほどです。ヴィーガンになって約5年間が経ちます。
ベジタリアンになり、
そのうちヴィーガンの知り合いができました。
そこで、動物が食肉になる過程などで
酷い扱いを受けていると知りました。
こうした映像を目にしたところ、想像以上に残酷で...
これが決定的でした。
必要ならダンボールを食べる方がましと思ったぐらい。
でも実はヴィーガン料理はすごく美味しくて、
ダンボールを食べる必要なんてないと
すぐに分かったんですけどね(笑)
とはいえ、完全にヴィーガンになるのは難しくて。
私はお刺身やお寿司が大好きだったので、
お魚を諦めるのは辛かったです。
アンナさんのお料理。今はヴィーガン食材でお寿司を楽しまれています。
イタリア人ヴィーガン、アンナさんおすすめのレシピ
写真左が「海の香り漂うリングイネのパスタ」
簡単で美味しいレシピをアンナさんに教えていただきました。休日のランチにどうぞ!
~海の香り漂うリングイネのパスタ~
◆材料
・全粒粉のリングイネ
・ズッキーニの花
・わかめ
・塩漬けのケッパー
・エクストラバージンオリーブオイル
・ニンニクパウダー、イタリアンパセリ、レモン汁、野生のフェンネル(ドライハーブ)、お醤油、黒コショウ、塩
◆作り方
1、パスタ用のお湯を火にかけて、材料を準備します。
2、ズッキーニの花は、茎の部分の固い部分と分けます。
まず茎の部分をエクストラバージンオリーブオイルを入れたフライパンでソテーし、
塩コショウを振って、最後にお醤油をひとまわしします。
3、同じフライパンにスプーン1杯程度のケッパー、
刻んだワカメ、ニンニクパウダーと水少々を入れて、
中火で4分炒めます。同時にリングイネを茹で始めます。
4、3のフライパンにズッキーニの花の部分とお水少々を入れ、6~7分ほど炒めます。
5、固めに茹でたリングイネをフライパンに入れ、完璧なアルデンテになったら完成です。
お皿に盛り付けたら、イタリアンパセリと黒コショウ、
(あれば)野生のフェンネル、
レモン汁とエクストラバージンオリーブオイルをかけて召し上がれ!
冠婚葬祭ではどうする?ヴィーガンの人間関係の難しさ
どこの国でもついて回るのが人間関係。
日本は人と違うと反発を招きやすく、
食事を取り分けて食べる習慣もあるため、
ヴィーガンとして生きる上で疎外感を抱く場面が多いかもしれません。
イタリアでは、こうしたストレスが少ない反面、
人間関係がかなり密。
誕生日や結婚式、子どもが生まれれば洗礼式など、
人が集まる機会が多いもの。
アンナさんを始め、イタリアで暮らすヴィーガンはどのように対処しているのでしょうか。
大事な人のお祝いごと!パーティに行く/行かないの基準は?
Q::ヴィーガンゆえに苦労する部分は、
人間関係によるものが大きいのではないかと想像します。
アンナ:苦労している面は間違いなくあります。
もちろん、不便と感じるかどうかは人によるので、
そうでもないという人も実際います。その人次第。
でも、家族・親戚の集まりやパーティなどは絶対にお肉が出ますからね。
なので、自分を受け入れてくれる人と優先的な関係を作りました。
そして、集まって食事をするときは、
私自身が作った料理も持ち寄るようにしました。
皆にもヴィーガン料理の美味しさを伝えられるし、
私もそれを食べればいいわけですから。
こうすることで、興味を持ってもらえることもあります。
見た目も華やかなアンナさんのお料理
Q:レストランで食事をするときや結婚式など、持ち込めない場合はどうしますか?
アンナ:前もってお願いできる時は、
ヴィーガン向けの食事を準備してもらいます。
こうしたお願いができる関係の人のパーティに出席する感じですね。
でも、それが叶わないけれども、どうしても行きたい時は、
直接その場でシェフに掛け合ってみるか、
最悪は飲み物だけで我慢します。
どうでもいいやと思える人や、
嫌なコメントをされるだろうと事前に分かっている時は行きません。
家族との関係。ヴィーガンが受け入れられないイタリアならではの難しさ
Q:イタリアは日本よりもずっと自己主張が許されますが、
食に関しては保守的な考えの人が多いですよね。
一般的に家族はリスペクトしてくれるものですか?
アンナ:これは完全に家族次第。
同性愛の問題と同じで、受け入れるかどうかは家族によります。
それに、ヴィーガン側の問題も。
例えば、最初はそれぞれが好きなものを食べればいいと思っていても、
時間が経つにつれて、近くでお肉を食べられると
不愉快な気持ちになってしまうということもあります。
私も最初は大丈夫でしたが、だんだん辛くなってきました。
魚はまだ我慢できますが、お肉の塊、
特に動物の形がそのまま残っている料理は、
正直に言うと耐えられません。
友情-出会いと別れ
Q:新たなステップを踏み出すたびに
友人関係も変わっていくものですが、
やはりヴィーガンになった時も変化はありましたか?
アンナ:ええ、これはあります。
ヴィーガンの知り合いが増えて、
新しい仲間との絆が強まる一方、
それまでの友達と少し距離ができてしまうことはあります。
相手から離れていったこともありました。
ただ、ヴィーガンが他のヴィーガンと知り合った時には、
兄弟のような気持ちを抱くものなんです。
動物や環境問題に深く関心を寄せ、
その問題を完全に理解していても、
実際にヴィーガンになれる人は
そんなに多くありません。
苦しみを乗り越えたもの同士の深い絆もたくさん生まれました。
アーティストでもあるアンナさん。自宅リビングにはご自身の作品(大作!)が飾られています
気になるイタリアでのヴィーガン恋愛事情
Q:アンナさんとリッカルドさんは、
結婚してからヴィーガンになったんですよね。
アンナ:ええ、私がヴィーガンになる数年前に、
夫のリッカルドがヴィーガンになりたいと言い始めました。
だんだんとお肉を食べないようになり、
私にもそうするよう勧めていました。
ウサギを飼い始める前のことです。
Q:アンナさんの知人の中には
ヴィーガンと非ヴィーガンのカップルはいますか?
おそらく日本の読者の皆さんも、
この辺りは興味津々だと思うのですが(笑)
アンナ:そうね、ヴィーガンと非ヴィーガンのカップルは結構見てきました。
極端なケースでは、女性がヴィーガンで男性はハンティングが好きなカップルもいたの(笑)
でもね、残念ながら上手くいかないケースが多くて。
なぜかというと、倫理的な問題だから。
倫理観は本当に大きな壁になる。
それぞれが好きなものを作って食べればいいとか、
そういった日常的な話ではないの。
だから、結局折り合いをつけるのが難しくなってしまうんですね。
誰が料理をして誰が片付けるか、
といった類の話だったらもう少し簡単だけれども。
イタリアでヴィーガンになることを阻む深層心理
Q:話が少し戻るのですが、
ヴィーガンの主張を深く理解し、120%賛同しても、
ヴィーガンになるのは難しいとのお話がありました。
これは具体的にどういうことか教えてもらえますか。
アンナ:色々な理由があるけれども、その中の一つは深層心理。
ヴィーガンになるということは、多くの人にとって、
子どもの頃に両親や祖父母から教わってきた
知恵や知識を否定する行動にもつながります。
その教えを否定するということは、
母親を否定するような気持ちになります。
(筆者注:イタリアにおいて母親(マンマ)は非常に特別な存在。最大級のリスペクトが払われます)
健康面でも倫理面でもヴィーガンになるべきだと分かっていても、
どうしてもヴィーガンになれない人も多い。
自分に無理強いをさせられないと、かなり難しいです。
ユーモアあふれるお料理の数々
イタリア人ヴィーガンアンナさんからIN YOU読者の皆さんへ
「日本のお友達へ。
私はヴィーガンになったことがきっかけで、
『動物を自由に』という意識を広めるため、
フェイスブックなどを通じて
様々な方法でメッセージを発信しています。
動物愛護を訴えると
『動物と同様に植物も生きているじゃないか』
といった非難の声や、
『食べるために殺されたものを感謝して食べることが大事』
といった意見も出てきます。
オオカミが鶏を食べるのは自然の摂理。
人間も生きていくために食事をします。
しかし、人間は他の動物の肉を食べたりはしません。
なぜなら人間の体は肉食にできていないからです。
そして倫理的にも、
人間には動物を奴隷にすることなく、
生きていく知恵と力があります。
宇宙に行くほどの知能と技術があるのですから、
動物と共生することは可能です。
日本は違うことをする人が叩かれやすい社会ですよね。
それゆえに難しいことも多いでしょう。
でも、日本人はかなり繊細な国民だと思います。
ですので、日本でこのような思想が広まれば、
より多くの賛同を得ることでしょう。
戦いの道が狭く長いとしても、それは正しいことです。
愛を込めて
アンナ」
オーガニック食品やコスメをお得に買えるオーガニックストアIN YOU Market
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