有機農業や自然農法、色々あるけど結局はどの農法が一番安全なの?【結論:農法とは単なる思想で安全とは関係ありません】
有機農業や自然農法、色々あるけど結局どの農法が一番安全なの?【結論:農法とは単なる思想で安全とは関係ありません】
有機農法や自然農法、炭素循環農法など様々な農法があります。
消費者はどの農法が一番安全だろうと悩み、生産者であれば自身が取り組む農法が一番正しいと思いがちです。
しかし、記事の結論を先に述べると、農法は所詮、生産者の思想であり、安全性とは全く関係ありません。
この記事のレベルは、農業を全く知らない初心者消費者向けに書いています。
✓日頃、スーパーに並ぶ野菜が、どのような生産方法なのか知りたい!
✓とりあえず安全な野菜は有機野菜を選んでおけばいいの?
この記事を読めば、上記の答えが分かるようになります。
この記事を書いている私は、九州で有機農業を営む農家です。
農家にしか分からない農業の世界を、誰にでも分かるように解説したいと思います。
農法比較の前に、慣行農業と有機農業の違いを知ろう!
まずは、慣行農業と有機農業の違いを知ることが重要です。
なぜなら、有機農法や自然農法などのこだわり農法を知る以前に、必ず知っておくべき農業の基本事項だからです。
✓慣行農法=化学肥料や農薬を使用する農法
✓有機農業=化学肥料や農薬を使用しない農法
と覚えておきましょう。
以下、少しだけ詳しくそれぞれを解説しますね。
慣行農業は肥料や農薬を普通に使う農業です
慣行農業は、通常の農家が行っている農業です。化学農薬や化学肥料を使って作物を生産します。中には農薬や肥料をできるだけ減らす努力をされている生産者もいます。
作物の成長や病気、収穫時期や品質などをコントロールしやすく、市場が求める定時(いつも)、定量(同じ量を)、定質(同じ品質で)に適した農業です。
流通してスーパーやデパートに並ぶ多くの作物は、慣行農業で栽培されたものになります。
安心安全のJA(農協)の野菜はどうですか?と質問を受けたことがありますが、一般的にJAの野菜は化学農薬や化学肥料を使っている慣行農業です。
有機農業は肥料や農薬を原則、使わない農業です
農林水産省では、有機農業を次のように定義しています。- 化学的に合成された肥料及び農薬を使用しない
- 遺伝子組換え技術を利用しない
- 農業生産に由来する環境への負荷をできる限り低減する
これだけでは理解が難しいと思いますので、少し解説しますね。
有機農業が先に書いた慣行農業と大きく違うことは、人間の都合(経済性や生産性)のみを重視しないことです。
自然の仕組みを理解して、田んぼや畑にいる動植物全体のバランスを考えながら作物の生産活動を行います。
だから、先程の定義にあった化学肥料や農薬、遺伝子組換え技術を使用しないのです。
しかし、有機農業は肥料や農薬を使用しないため、慣行農業に比べて生産者が作物をコントロールするのが難しくなります。
なので、市場が求める定時(いつも)、定量(同じ量を)、定質(同じ品質で)に適さない農業です。
有機野菜がスーパーの端っこにちょこっと置いてあり、量や品目が少ないのはそのためですね。
そして、この有機農業の中に有機農法や自然農法など、消費者が安全性に迷う農法が入っているわけです。
有機農業の中に含まれるこだわり農法の紹介
さて、ここからが本題の農法比較です。実は、あなたが聞いたことある以下の農法は、全て有機農業の中に含まれます。
有機農業はその思想や考え方で自然農や自然農法、有機農法や炭素循環農法などに枝分かれしていくのです。
一旦、全体像をお見せしますね。これは学術的なものでなくあくまで記事を書いている私が考えている有機農業の区分けです。
実際には自然農と有機農法を組み合わせた農法や、炭素循環農法と自然農法を組み合わせたものなど、多種多様な農法が存在します。
以下に紹介する農法は決して覚える必要はありません。あなたが聞いて気になったときに、この記事のことを思い出しまた読みに来てくれたら嬉しいです。
以下に紹介するこだわり農法は、原則、全て農薬や化学肥料を使用しません。
「自然農」は全く何もしない究極の農法
本当に何もせず、自然に任せて作物を作る究極の有機農業です。肥料は一切使いません。耕さず草を刈らず、種は花咲かじいさんみたいに播くなど、普通の農家では考えられないような農法です。
「自然農法」は自然農より作る意思が影響する
自然農に比べると少しゆるくなります。肥料は与えないか植物性のものを少々与える程度です。畑は耕したり耕さなかったり、除草もしたりしなかったりと作物を作ろうとする農家の意思が影響します。
「炭素循環農法」は土壌微生物活動を重視する
土壌微生物活動を重視して、肥料は植物質や炭素源が主体ですが除草もしますし、耕うんもします。自然農法に似ていますが、この農法の中にも耕し方が異なるなど様々です。
「有機農法」は法律で監視されている
他との大きな違いは、国がJAS法という法律で管理する、有機JAS認証制度があることです。年に1回、第三者からほ場の検査を受ける等かなり厳しく管理された農法です。
しかし、JAS規格を守っている以外は、慣行農業に近いところもあります。
有機JASについては私のブログでも詳細に解説していますので、興味のある方はご参考下さい。
>>有機野菜と無農薬野菜の違い【ずばり法律に監視されるか否かです】
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結局、農法とは単なる思想で、安全とは関係ありません
混乱してきましたので、再整理です。
自然農であれ自然農法であれ、炭素循環農法であれ有機農法であれ、化学合成の農薬や肥料を使用せず、環境に負荷をかけないようにしていることは皆同じです。
このように、どの農法が一番安全でどの農法が危険などとは言えないものなのです。
思想で枝分かれするが、原点はみな同じ
✓自然農は有機農法の農産物と比較して味が濃く美味しい
✓有機農法は有機JAS認証があるため自然農より安全
農家同士でも、このような醜い言い争いをしている姿を見かけます。
しかし、書いてきたように自然農も有機農法も同じ有機農業で同じ仲間なのです。
※どちらも化学肥料や農薬は使用しません。
細かく見ていけば、同じ農法の中でも枝分かれしています。
例えば、私のように有機農法で有機JAS認証を取得していても、ほとんど肥料を使わず、基本的に耕さず除草は最小限と自然農法に近い方もいれば、同じ有機JAS認証農家でもトラクターで耕し有機質肥料をたっぷり使う生産者もいます。
このように、
結局、農法とは『生産者の思想』です。
つまり、
生産者で農法が異なる理由は、
彼らの思想が異なるからに過ぎないのです。
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生産者の人生経験や考え方が違うだけ
もう一度言いますね。農法とはその生産者の思想です。
生産者が今まで人生で経験したこと、食に対する価値観、知識の深さや属する組織などで、
・肥料を使うか使わないか、耕すか耕さないか
・草を取るか取らないか
等が少しずつ変わっていて、それが農法となっているだけです。
なので、もし、あなたに気になる生産者がいれば、その方の思想を尋ねてみましょう。
生産者の思想にあなたが共感できれば、その生産者の作る野菜があなたにとって最も安全な野菜となること間違いないですよ。
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