パーム油を使った商品が引き起こす深刻な環境問題|今私たちができることとは
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近年、生産量が爆発的に増えているパーム油。
安価で扱いやすいために世界中の企業から人気を集めているパーム油が、
いま大きな問題を引き起こしています。
私たちの生活に深くかかわっているパーム油について、
いま知りたい知識と問題解決へのヒントをまとめました。
どうしてパーム油の使用に問題があるの?
かつてパーム油は「トランス脂肪酸を含まない、ヘルシーな植物油」として使用を推奨されていました。
そのイメージが強い方は、いまさらパーム油を悪者扱いされてもピンとこないことでしょう。
いったいなぜ、そしていつから、
パーム油が「避けなければならないもの」になったのでしょうか。
そこには、パーム油をめぐる環境が大きくかかわっています。
それを知るために、パーム油の歴史から振り返ってみましょう。
パーム油の歴史と現状
パーム油の原料になるアブラヤシは、アフリカ原産の植物です。
もともと西アフリカでは、昔から各家庭で使うパーム油を手作りしていました。
そんな状況が激変したのが、数十年前のことです。
アブラヤシはとても生産性が高く、
大豆などの一般的な植物と比べると同じ農地面積で数倍もの油がとれるといわれています。
またパーム油には加工しやすいという特徴があり、
アブラヤシから生産した油は何にでも応用することができます。
こんな便利な油を企業が放っておくわけがありません。
さらに、トランス脂肪酸を含む食用油の代替品として認められたこともあり、パーム油の需要は飛躍的に高まりました。
1990年代以降は原産地のアフリカよりも東南アジアで盛んに栽培されるようになり、
現在はマレーシアとインドネシアの二国で世界のパーム油の8割以上を生産しています。
パーム油使用で起こっている環境破壊
パーム油を生産するためには、アブラヤシを植える必要があります。
アブラヤシを植えるには、広い農地が必要です。
その農地を得るためには、元から存在している森を伐採し、畑に作り替えなければなりません。
これが、パーム油を「環境に悪い油」にしている具体的な原因なのです。
パーム油の主要な産地のひとつであるボルネオでは、
年間35万ヘクタールの熱帯雨林が農地開発により消失しています。
開墾のために森を焼き払うこともあり、
その際に排出される温室効果ガスも大きな問題になっています。
生活の場である熱帯雨林がなくなったことは、野生動物にも深刻な被害をもたらしました。
ボルネオには、この島にしか存在しない固有種の動物が数多く生息しています。
豊かな森に住むオランウータンやテングザル、ボルネオゾウなど、
貴重な絶滅危惧種が、住む場所を奪われて数を減らしつつあるのです。
被害は動物たちだけではありません。
油を精製する工場では、地元の労働者や児童までもが低賃金で危険な労働に従事させられています。
また昔から熱帯雨林とともに生きてきた先住民族の人たちが、
農地開発のために村を強制退去させられるという事件も起きています。
私たちが知らないうちに消費しているパーム油には、こんなにも多くの問題があったのです。
また近年では、過剰摂取による健康被害も懸念されています。こちらの記事もぜひご覧ください。
健康被害も懸念される様々な市販食品に紛れ込む恐ろしいパーム油に隠された問題と、知られざる裏の事情とは。
パーム油はどんなものに使用されているの?
私たちが毎日口にする食品、洗剤やシャンプーなどの日用品など、
パーム油はさまざまな物に利用することができます。
今や生活のほとんどにパーム油がかかわっているといっても過言ではありません。
毎日の生活の中で、私たちはどれくらいパーム油に触れているのでしょうか。
パーム油が具体的にはどんなものに含まれているのか、簡単にまとめてみました。
パーム油の需要が最も多いのは食品業界!
パーム油の主要な用途は、食品への利用です。わが国ではあまり一般的ではありませんが、地域によってはサラダ油と同じような感覚で、揚げ物や炒め物などの家庭料理に使うこともあります。
パーム油は食用油の中でも安価で需要が高く、食品メーカーでの利用例はそれこそ枚挙にいとまがありません。
代表的な例を挙げてみましょう。
チョコレートやカレー、マーガリンなど
油には、食べ物をおいしくする効果があります。
そのため私たちの身の回りにある食べ物には、大抵の場合何らかの形で油が入っています。
たとえばチョコレートやラクトアイスなど、しっとりとした食感と濃厚なコクを出したい物によく使われます。
また、油は冷えると固まる性質があるので、加熱する前までは固めておきたいカレールウなどにも使用されます。
おいしさをプラスする目的で使用されている食品例は、とにかく多彩。
菓子パンのフィリングや和風ふりかけなど、意外なものにも入っています。
もちろん、マーガリンなど本来の「油」としてのニーズもあります。
もはやパーム油が入っていない食品を探すほうが難しいというほど、
パーム油は私たちの食生活に深くかかわっています。
揚げ油としても
パーム油は、動物性の油やほかの植物性油脂に比べてずっと安価です。
大量に油を使う「揚げる」という調理法では、
揚げ油をパーム油に変更するだけで大きなコストカットが見込めます。
そのため、ファーストフード業界やスナック菓子のメーカーなど、
フライフードを扱う大手メーカーの多くがパーム油を使用しています。
原材料については産地などを確認するけれど、
揚げ油までは気にしていなかったという方も多いのではないでしょうか。
しかも揚げ油は食品表示を見ても「植物性油脂」としか表示されない場合が多いので、これは知らずに摂ってしまう可能性が高いケースです。
パーム油使用は化粧品・衛生用品にも!
パーム油に精製・蒸留などの化学的な処理を施すと、
グリセリンや脂肪酸など工業用に利用できる物質ができあがります。
これを「オレオケミカル製品」といいます。
食品グレードのパーム油から作ったオレオケミカル製品は、安心安全。
肌に直接つける化粧品にも問題なく使用できます。
食品に比べて抵抗感が少なく、ナチュラル派にも受け入れられやすい利用方法といえます。
ハンドクリームや口紅などに
オレオケミカル製品のうち、おもにグリセリン系を使用するのが化粧品やスキンケアの分野です。もともと油なので、保湿力は抜群。
潤いを保つ目的で、ハンドクリームやリップクリームに配合されます。
またパーム油には口紅の形を保ち、扱いやすくする効果もあります。
つやつやとした発色の良さもオイルのもつ特徴です。
ところで、パーム油に限らず口紅の原料はわかりにくいものです。
普段使っている口紅が何から作られているか、ちゃんと知っている人のほうが少ないくらいでしょう。
口に入る可能性も少なくないのに、何からできているか知らないというのはちょっと不思議なことです。
この機会に、たまには口紅の原料をしっかりチェックしてみることをおすすめします。
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歯磨き粉にも!
実は、歯磨き粉にもパーム油が使われています。パーム油には界面活性剤としてのはたらきがあり、この特性を活かして洗剤や石けんにもよく利用されます。
特に歯磨き粉は、直接口に入るものなので食品グレードの原料の利用が求められています。
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パーム油は石けんや食器用洗剤などにも使用されている
石けんも、古くからの油の利用法のひとつです。
動植物の油を使った石けんの登場は今から五千年前ともいわれています。
パーム油もまた、洗剤のメーカーにとって欠かせない原料となっています。
洗剤としての利用
わが国でも昔から親しまれてきたパーム油利用法のひとつが、食器用洗剤です。パーム油を界面活性剤として使用した洗剤は、折からの環境汚染対策のニーズにのって「河川を汚さない洗剤」の定番に成長しました。
パーム油を使用した洗剤は、石油系の合成界面活性剤のような毒性をもたない安全な洗剤ですが、パーム油を使用することで東南アジアの環境劣化にかかわってしまったという点は否定できません。
環境に優しいはずの洗剤が、まわりまわって熱帯雨林を破壊してしまったのです。
現在はメーカー側の努力で環境保全に取り組みつつパーム油洗剤を生産することが可能になりました。
しかし、こうした事がまた起きないとも限りません。今後は私たち消費者の側にも、情報を受発信する努力が必要になるといえるでしょう。
☆コスパも抜群!完全オーガニック洗剤「HAPPI」
こちらの記事も参考にしてくださいね!
これからは洗濯洗剤の品質を私たち消費者がリードする時代です|オーガニック洗剤HAPPI愛用者は世の中を変えうる賢明な消費者群~仕事をしながら子育ても頑張る人気ライターがHAPPI洗剤を試してみたvol.08〜
石けんやシャンプーなど
食器用や掃除用の洗剤とは別に、身の回りで使う石けんやシャンプー、コンディショナーにもパーム油が使われています。
こういった製品には、汚れを落とすほかに、お肌に優しく適度な潤いをキープすることが求められます。
しっとりさせるのなら、パーム油の得意技。
手肌に優しい石けんや、洗髪後の髪にオイル成分をプラスしてくれるコンディショナーは、乾燥に悩むユーザー層に大いに利用されています。
食器用洗剤とはまた違う意味で、的を得た利用法といえます。
こんな意外なものにも使用されるパーム油!
そのほか、近年急速にニーズが高まっている分野がバイオ燃料としての利用です。
パーム油は性質が安定していて安全性が高く、また長期保存が可能なので、燃料としても利用価値は高いのです。
今後石油からのシフトが進む中で、より一層ニーズが増加することが予想されます。
さらに意外なことですが、実は市販のドッグフードの中にもパーム油が使用されているものがあります。
適度な油は被毛の艶をよくするといわれています。
人間と違って健康への悪影響が懸念されているといった話はありませんが、気になる方はフードの表示を確認してみてください。
環境を破壊しているパーム油、避けるには?
「パーム油はなぜ環境に悪いのか」を知り、さらに「パーム油はどんなものに含まれているのか」を解説しました。
それでは、これらの知識を得た今、私たちはパーム油の使用を避けて東南アジアの森を守ることができるのでしょうか。
残念ながら、その答は「NO」です。
「買い物するときに、品質表示をよく読んでパーム油と書いてある製品を避ければいいのでは?」と思われるかもしれません。
しかし、わが国ではパーム油には表示の義務はないのです。
多くの製品ではパーム油は単に「植物性油脂」と表示されます。
これだけでは、使用されているのがパーム油なのかどうか知ることができません。
今の日本では、食べるものや使うものにパーム油が含まれているかどうかを表示から知ることはできないのです。
しかも、パーム油は今や生活に欠かせないもの。
疑わしいものをすべて買わないようにしていたら、何も買えなくなってしまいます。
パーム油が入っている製品を買わないようにする、というのは現実的な方法ではありません。
熱帯雨林を守る!パーム油の認証規格RSPO
それでは、私たちは一体どうすればいいのでしょうか。
解決のヒントはパーム油の認証規格RSPOにあります。
RSPOとは「持続可能なパーム油のための円卓会議」の略。
世界自然保護基金(WWF)が中心となって設立された、
自然環境に悪影響を与えないパーム油生産を推し進めるための機関です。
RSPOはパーム油の生産にかかわる大手企業と協力して、一定の条件を満たした農園をRSPO農園として認定しています。
認定条件は、
「絶滅危惧種が生息する森は開墾しないこと」
「熱帯雨林を育む水源を保護すること」
「労働者の労働環境を改善し、賃金を保障すること」など。
いずれも、今後のパーム油業界にとって重要な条件です。
RSPO認証規格は、パーム油を避けるのではなく持続可能な利用に変えていくためのひとつの指標です。
生産者と消費者、そして熱帯雨林の三者をいずれも排除することなく、ともに生きていくための足掛かりともいえます。
パーム油を原料として利用する化粧品メーカーや食品大手企業の多くが、
今後はRSPO認証を受けた農園のパーム油だけを使用すると宣言しています。
私たち消費者も、商品を購入する際には、
「RSPO認証を受けたパーム油だけを使用しているか」
などチェックすることが必要になってくるでしょう。
それが持続可能なパーム油使用への第一歩になるのです。
パーム油使用による環境破壊を防ぐために私たちにできること
これからも増え続けるに違いないパーム油の需要に対し、
私たちひとりひとりが高い意識をもつことが求められています。
RSPO認証を受けたパーム油を使用しているメーカーを、選んで利用するのもそのひとつです。
かけがえのない熱帯雨林を守るために、私たちができる小さな一歩を踏み出してみませんか?
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