最近注目を集める「植物肉」とは? デメリットはないの? 植物肉市場の現状と健康・社会への影響を考える。
最近注目を集める「植物肉」とは?
デメリットはないの?
植物肉市場の現状と健康・社会への影響を考える。
最近、特に注目されるようになった「植物肉」。スーパーやコンビニなどでも販売が始まり、
「大豆ミート」と呼ばれる大豆由来の植物肉や、
「大豆ミート」を使った惣菜などを目にする機会も
増えたのではないでしょうか。
そこで、今回はそんな植物肉を巡り、植物肉とは何か、
またそのメリットやデメリットは何かなどについて
ご紹介し、考察してみようと思います。
そもそも、植物肉とは何か?
植物肉とは、大豆などの植物原料から出来た「人工肉」のことです。
味や食感を肉に似せて作られており、肉の代替品として使用されています。
私自身も何度も食べたことがありますが、初めて食べた時は、
実は植物肉と言われるまで気付きませんでした。
食感やジューシーな風味もまさに肉!で、
ハンバーガーやラザニアなどの肉料理をヘルシーに美味しく楽しむことができます。
なぜ、植物肉が選ばれるのか?
植物肉は、欧米諸国におけるヴィーガンやベジタリアンといった「菜食主義」の普及によって、近年、注目を集めています。
宗教的理由から肉を食べない選択をする方もおられますが、
近年は、健康志向、動物愛護という倫理的観点から、また環境保全のため、
などその動機は様々です。
現代は、教育水準が世界的に高まり、
著名人を始めとする、個人の情報発信の影響力が拡大するなど
一般の人々が社会について積極的に考え、行動できる世の中へと発展しているかことも、
食分野での選択肢をこのように広げたといえるでしょう。
まら2015年に、WHOが「ソーセージやハムといった加工肉には発がん性物質が含まれている」と
発表したことも、植物肉を選ぶ人が増えている要因のひとつです。
肉を加工する際に使われる化学物質や、高温による調理が発がんに繋がるとされているのです。
世界、そして日本の植物肉市場の現状
農林水産省の調査によれば、植物肉市場は 2018 年に 全世界で119 億ドル規模に達し、2025 年には 212 億ドルにまで成長する見込みだといいます。
特にアメリカでは、「ビヨンドミート」や「インポッシブル・フーズ」などの
植物肉を製造・販売する企業が多く、家庭料理にも手軽に植物肉を取り入れられる環境が
整いつつあります。
さらに、アメリカの植物肉市場における特徴は若者にも選ばれているという点が特徴的です。
アメリカで問題視されている運動不足や高カロリーの食生活による、子どもの肥満解消に
植物肉は役立つと期待されているのです。
参考:https://www.maff.go.jp/j/jas/attach/pdf/yosan-27.pdf
新型コロナウイルス感染拡大も消費拡大の追い風に
2019年末から2020年にかけて世界中を席巻した「新型コロナウイルス」、通称「COVID−19」の影響で、アメリカではコロナウィルス感染拡大防止策の一貫として、
食肉処理施設が閉鎖され、市場に出回る食肉が減少、
ハンバーガーショップでハンバーガーが売り切れてしまうような事態が発生しました。
これによっても、コロナ禍で安定して供給可能な植物肉に注目が集まっています。
そして、冒頭でも述べた通り、日本でも植物肉の市場は広がっています。
食肉加工大手のN社やI社がオリジナルの植物肉ブランドを立ち上げて、市場に参入。
コンビニエンスストア大手・Sは、
「大豆は栄養価が高く、持続可能な食材である」という考えから、
2020年8月25日から、九州を皮切りに大豆ミートを使ったパンやおにぎり、
お惣菜などの商品を販売すると発表しました。
参考:https://www.sej.co.jp/company/news_release/news/2020/133514.html
日本でも少しずつ家庭や外出先での植物肉を選択できるようになってきているのです。
良い点ばかり挙げられる植物肉。
でも、デメリットはないの?
健康面や環境面など、社会に様々な良い効果をもたらすと話題の植物肉ですが、
本当に良い面しかないのでしょうか?
植物肉が普及することで新たな問題が起こる可能性はないのか、
という観点からも考えてみましょう。
植物肉は環境問題を本当に解決できるのか?
植物肉は、畜産で食肉を生産することと比較すると、水源の確保や炭素の減少に繋がるという恩恵が期待出来ます。
牛肉1kgを作るためには、15,415ℓの水が必要です。
これに対して、小麦粉1kgは2,000ℓで作ることができます。
肉は、食料の中でも多くの水を使うものなのです。
今、世界では6億6500万人の人が、綺麗な飲み水のない暮らしをしてます。
植物肉を選択することは、このような人たちが飲み水を得る可能性を高めることに繋がります。
また炭素は、家畜を育てるにあたって食べる穀物や、フンから排出されます。
これが、大気中の二酸化炭素増加に繋がっています。
これに関連し、物肉を販売するアメリカのインポッシブル・フーズは、
2018年の売り上げをもとに研究の結果を発表しました。
もし消費者がインポッシブル・フーズの植物肉を使用したバーガーを意図的に選択したとすると、
アメリカの全自家用車が2.5億マイルを走った際に発生する温室効果ガスの発生を防ぐことができるといいます。
植物肉は私たちを確実に健康に導けるのか?
一方で、大豆などの農作物からできる植物肉には、農薬問題の危険性をはらんでいます。平成29年度の日本における食用大豆自給率は25%で、輸入に頼っているのが現状です。
日本では、180日以上分解されず、土壌に残留する農薬の使用は出来ないとされていますが、
その基準は国によって異なります。
日本の大豆輸入元TOP3は、アメリカ、ブラジル、カナダです。(平成30年度時点)
そこで、ブラジルの農業を一例として見てみましょう。
近年、ブラジルでは、農薬使用の禁止の基準が
「皮膚や目に直接触れると痛みやかゆみ、かぶれなどを引き起こすか」から、
「接触したり、体内に入ると命に関わるか」へと、以前よりも基準が下がりました。
これによって、これまで使用許可がなされていなかった農薬が使用可能になりました。
すなわち、以前まで危険とされていた薬物を使って、
これまで以上に早く大量に大豆を作ることができるようになったということです。
つまり植物肉には人体・健康への悪影響、さらには植物肉に改善が期待されていた
環境問題をさらに加速させてしまいかねない側面を持っています。
植物肉が食の多様性を破壊し、持続可能な社会の実現は難しいものにしてしまう
可能性があるのです。
肉は本当に体に悪いのか
実は、先ほどご紹介した、「WHOが発表した加工肉には発癌性物質が含まれるという」調査結果に対しては、誇張しすぎではないか、との声もあります。
この件について、ガンについて研究を行うオックスフォード大学のティム・キー教授は、
次のように述べました。
「赤肉や加工肉を食べるのを一切止める必要があるというのではないが、たくさん食べる人は減らす方向で考えるといいかもしれない。ベーコンサンドをたまに食べてもたいした害はない。何事もほどほどにというのが、健康な食生活の基本だ。」
さらに私個人の考えでは、表面的な部分にとどまっている環境問題への意識が、
過度な「肉食は悪」という健康意識を生み出してしまっているのではないか、とも感じます。
さらに、BBCニュースに出演したインペリアル・コレッジ・ロンドンのテレーサ・ノラット博士は、
肉を食べないということに対して、以下のような意見を表明しました。
「赤肉や加工肉をとる量を減らすべきだが、(肉を食べるのと)同時に果物や野菜由来の繊維質が豊富な食生活が必要だ。一生を通じて適切な体重を維持し、アルコール摂取を抑え、活発に運動するのが望ましい。」
そして、肉を食べることで得られる体へのメリットにも目を向けるべきこと、
そして癌の理由を肉食生活のせいだけにすべきではないことを指摘しています。
赤肉には鉄分や亜鉛、ビタミンB12が含まれており、
人間に必要な栄養を供給してくれる源という側面もあるのです。
本当に良いものは何なのか、一度立ち止まって考え、
そして、選択しよう!
既にご紹介した通り、人々が植物肉を選ぶ理由は、様々ですが、
健康や社会、環境などを良いものにしたいという「ポジティブな想い」が
その大半ではあると思います。
しかし、良かれと思って起こした行動が二次被害に繋がることがないように
立ち止まって、考え直すことが、植物肉を選択する上でも必要ではないでしょうか。
また植物肉を製造・販売する企業側の言い分を鵜呑みにするのも危険です。
植物肉の市場は、私たちの受け入れ体制も含めてまだまだ発展途上です。
賛否両論があることを意識に止め、今後も事態の推移に注目する必要があると思います。
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