【特集/信州の伝統野菜を知る、食す、守る】長さ、食感、香りが良い「常磐牛蒡」とは?
さて、前回に引き続き、信州の伝統野菜についてのレポートをお送りします。今回は現地にて野菜ソムリエ、薬膳コーディネーターの増田朱美さんにお話を伺ってきました。
【特集/信州の伝統野菜を知る、食す、守る】70種以上の伝統野菜がある長野は奇跡の県!】
地域の野菜の基本として、野菜の作物が「季節ごとに違う」、「地域によって違う」ということについては意味があると増田さんは言います。夏野菜には体を冷やす作用があり、逆に冬野菜は体を温める作用があります。例えば、ゴーヤは熱してもビタミンCが破壊されない野菜です。ゴーヤと言えば沖縄ですが、沖縄は夏が暑く、葉物などの作物が育ちにくい地域です。沖縄の人々は暑くて汗をかくため、ビタミンCが欠乏しやすくなるのでゴーヤをチャンプルなどでよく食べていました。
信州の伝統野菜は南の地域(南信)のものが多く、信州の南を代表する地域である飯田では山に囲まれているために、人の移動がしにくい場所です。そのため、そこで暮らし始めた人々が元来そこにあった種を選抜していって、その土地にあったもの、おいしいと思ったものだけが現在も残っている傾向にあります。
基本的に地域外での消費を考えられたものはほぼなく、その土地で必要とされ(厳密にいえばそれを食べるしかなかった)、その地で消費するために作られています。よって市場流通していないものが多く、信州の伝統野菜の価値は「ある決まった時期にそこでしか栽培できない」ということにつきます。この地域の方は春は山菜と冬につけていた漬物をよく食べていたそうで、伝統野菜は季節ごとにありますが、春だけないのも特徴的です。
伝統野菜のレシピ(郷土料理)はその地域でしか知られていないことが多く、10km離れた隣町では全く知られていないこともあります。これは母から子へと受け継がれていた料理方法が、核家族化などにより、伝承できなくなってきている背景があります。
長寿の町、長野県ですが、その所以の一つに、「漬物とリンゴ」があります。漬物に含まれる塩分をリンゴに含まれるカリウムで吸収していたのです。カリウムには体内の余分なナトリウム(塩分)を排出し、血液の流れを改善してくれる働きがあるため、血圧を下げる効果があるといいます。塩分摂取量が多い東北地方の人は全国平均と比べて高血圧ですが、リンゴを多く食べるリンゴ農家の平均血圧は全国平均並とも言われています。
伝統野菜は昭和40年代からジワジワと廃れてきていますが、それでも尚作り続けている生産者は「使命感」が強く、ほぼ採算は合わずにやっているといいます。採算が合わない理由としては、手間がかかることと、にも関わらず収量は少ないためです。おまけに一定期間のみの出荷で、物流コストも下がらないことが挙げられます。一般的な市場流通品目は作りやすくなり、また大量型に市場がシフトしていったため、結果として取り残される形となってしまいました。それでも伝統を残さなければいけないという強い気持ちが農家の心を動かしているのです。
この後、伝統野菜を育てている農家さんともお会いしましたが、今回の取材では「常磐牛蒡」に注目してみました。
長さ、食感、香りが良いと三拍子そろった「常磐牛蒡」とは?
江戸時代当地区常盤村は天領であったことから、幕府の役人の出入りが多く、天保の頃役人の手により瀧の川赤茎牛蒡が入れられました。当地区で栽培してみると収量が多く肉質も軟らかかったことから改良が加えられ現在に至ります。以前は一大産地で全国に販路を広げており、大正6年には生産組合が設立され、農家の高齢化や減少により生産量は少なく地元市場や地域イベントで地元消費者によりほとんど消費されているのが現状です。
生産地域は長野県の最北端に位置する、飯山市、木島平村、野沢温泉村、中野市の一部、栄村の2市3村で構成。地域のほぼ中央を千曲川が流れています。
きんぴら、丸煮、しぐれ煮や炊き込みご飯などによく利用されています。豪快なごぼうの太煮も有名です。丸のままのごぼうを4センチくらいに切り、アクぬきして茹で、塩、醤油で味付けし、すりごまをからませていただくのがおすすめだそうです。大葉で直根の揃いが良く丈夫なため、やや重い土壌でも形状の良いものが生産されます。長さもあり、食感と香りが良いと三拍子そろったごぼうの優等生。千曲川が運んだ肥沃な堆積土壌で栽培されているので、スが入りにくくアクが少ないことが特徴です。もちろん市場に多く出回っていないので気になる方はこの機会にぜひ。
60cm以上で太さ1.5cm~2.5cmが細、2.5cm~3.5㎝が太、それ以上が2L、Sは45㎝以上で細・太がある。
毎年栽培地を替えることから連作障害がなく、土壌消毒は行わないそうです。アブラムシ防除の薬剤はJA指導に沿って使用しており、肥料は同地区で製造されているEM菌を使用した有機肥料を多く使用しているとのことです。
伝統野菜は「食べ方もセット」つまり作法なわけですね。それはそれとしてお茶や牛蒡のタルトなどかなり色々な使い方としても牛蒡は活用できますよね。私も趣味でやっている畑で何度か牛蒡を作ってみたことがありますが、とにかく「抜く」のが大変。折れてしまったら商品にならないのでとても手間がかかる野菜だと思います。ぜひ、信州の伝統野菜、「常磐牛蒡」(期間限定発売)を手に取ってみてはいかがでしょうか?
この記事が気に入ったら
いいね!しよう