楽しいだけじゃない海辺の知られざる危険性|離岸流の事故に細菌感染、毒ありエイが増加中?安全に海で過ごすためのポイント6選
海の思い出というと、どういうものを思い出しますか?
私は海水浴場の前で育ったので、記憶がないのに、
海で遊んでいる赤ちゃんの時の写真がアルバムにあったりします。
当然、溺れかけたり、怪我をしたりという苦い思い出も沢山あります。
海の危険というのは、生物によるもの、潮によるものなど様々です。
これらは場合によっては
救助に来てくれた人が亡くなってしまうことがあるほかの事故とはまた違った要素を持つものです。
予想をしていなかったことで、怪我や重大事故にならないように、知識を持っておいてください。
海は思った以上に危険!甘く見ると痛い目に合う
思わぬ海の危険!被害者はまさかの自分?
海で起こる事故はどれぐらいの種類があるか、ご存知ですか。
・毒のある生き物
・離岸流
・溺水
・熱中症
・低体温症
・潜水病
・岩礁での負傷
・高波
・高所からの転落
・廃棄物での怪我
等多くのものがあります。
人身事故者数2,631人
マリンレジャーに伴う事故者数809人(7割が、釣り、遊泳中の事故)
死者、行方不明者数1,059人
これは、平成29年の海上保安庁の統計です。
特に沖に向かって流される離岸流は危険で、死亡事例多く報告されているのが現実です。
特によくあるパターンはフロートによる事故ですね。
海に浮く子供が乗って遊ぶ遊具ですが、
風が強い日に使用すると、流されてしまうことがあります。
4歳児がおぼれた事故もあります。
お子さんは耳管に水が入りやすく、
方向感覚をすぐに失ってしまうので溺れてしまうことが多いです。
プールで泳げるのと、海で泳げるのは別物です。
海は、急に深くなる場合がある上に波も急に変わるので、
出かける前に、そこがどんな海岸や磯なのか確認しましょう。
海で感染症にかかる?
地味に危険なのは、サンゴ、カメノテ、フジツボ、カキ等の岩礁にとりつく生き物です。
動かないし、毒もないので侮りがちです。
岩場で転倒すると、こういった破片で皮膚を切ってしまうことがあります。
怪我をすると、海では非常に危険です。
免疫力が落ちていなければ心配ないとはいえ、海水は結構汚いですよ。
瀬戸内海で転んでカキの殻で足の裏をざっくり切ったことがありますが、
断面がジグザグなのでなかなか治らなかったです。
ビブリオ・バルニフィカス
主に暖かい海水中の甲殻類や魚介類の表面や
動物性プランクトンなどに付着しつつ増殖し、周囲の海水中にも遊出します。
2~3%の塩分濃度で良く増殖し、
汚染された魚介類の摂取や皮膚の創傷などから人に感染します。
健常者では下痢や腹痛を起こすこともありますが、
重症になることはほとんどありません。
しかし、免疫力の低下している人や特に肝硬変などの
重大な肝臓疾患のある人なとでは注意が必要となります。
また、治療のために鉄剤の投与を受けている貧血患者も
注意が必要という指摘もあります(医系微生物学:朝倉書店、初版本p.211)。
(中略)細菌が血液中に侵入し、数時間から1日の潜伏期の後、
峰巣炎等の皮膚病変の拡大や、発熱、悪寒、血圧の低下などの
敗血症様症状を起こし、生命を脅かすことがあります。
この細菌が血行性に全身性感染をおこした場合、
致死率は50~70%と非常に高くなります。
米国ではメキシコ湾沿岸の州を中心に
1988年から1995年までに300例以上の報告があります。
国内でも現在までに分かっているだけでも100例以上が報告されています。
「国立感染症研究所 感染症情報センター」
傷がある状態で、海に入るのは危険です。
釣り具などが破棄されていると、怪我のもとになります。
破傷風の心配もありますので、靴を履くようにしてください。
現実に東日本大震災の津波で海水に着水した人が、
破傷風を発症した例が国立感染症研究所によって報告されています。
海底にヘドロが溜まっている海が日本では多いのですが、
細菌はその中の窒素やリン、有機質が好きです。
私たちが海を汚すと、増えていく危険性があります。
他に考えられる問題は、海水の誤嚥による感染症ですね。
海水でおぼれた場合、水を思い切り吸い込んでしまって、
肺胞まで海水が到達することがあります。
水分は、排出されますが、
菌類が肺に入り込むことで誤嚥性肺炎を起こすことがあります。
海でおぼれた後、熱などが出た場合は即刻病院に行きましょう。
食べられる?美味しい?でも危険な生き物が海にはいっぱい!
人が食べなくなったから?エイが発生中
エイ類はその多くが暖海に棲息し,
日本近海には13科63種が棲息している.
沿岸に棲息する種としてはアカエイなど
10種類以上が知られており,
そのすべてが尾部背面基部近くに1ないし数本の毒棘を持っている.
毒棘には鋸歯状の細い側歯があり,その所々に毒腺が存在する.
毒棘は種類によっては数 cm 程度のものから
数十 cm に達するものもある(Fig. 3)1)~4).
エイ刺傷による臨床像は大きく 2つに分けられる.
すなわち,1つは棘自体による外傷であり
これは刺創,裂傷となる場合がある.
もう1つの臨床像としては毒棘に含まれる毒素の影響がある5).
エイなどの海洋生物が有する毒の成分は
一般に粗毒と総称される蛋白・高分子ペプチドで,
極めて不安定なため解明が進んでいないのが現状であるが
活性が確認されており,
これまでに10 種類のアミノ酸が同定されている5)~9).
毒による局所症状としては激しい痛み,腫脹,内出血,知覚異常などがあり7)~12),
またしばしば壊死に陥る3)13)14).
全身症状は,悪心,嘔吐,痙攣,血圧低下,呼吸困難,不整脈15),などで,
時として死に至ることもある7)~12).
エイ毒はタンパク毒であるため,創部洗浄,デブリードマンの他に
40~45℃ の温浴を30~90 分間かけて行うことが特異的な効果をもつ1)~17).
「エイ刺傷により腸管脱出をきたした 1 例波崎済生病院外科,同 内科*日本医科大学大学院医学研究科臓器病態制御外科学(第 1 外科)**柏原 元 田尻 孝** 中村 慶春宮下 正夫** 内田 英二** 笠井 源吾*」
テレビなどでエイが増えているという報道を見たことがある人もいるでしょう。
エイが増えてアサリなどの食害が増えているというのが、
漁業関係者の悩みなのです。
エイを捕食するサメがいなくなっていることが理由として挙げられますが、
もともとは人間が食べていたのを食べなくなったという現実があります。
アカエイはカスベと呼ばれ、淡泊な白身の魚です。
死んでから時間が経つと独特なアンモニア臭がするのが難点ですが、新鮮なものならば臭くありません。
エイは引用した論文の記載の通りの毒を持っています。
何があっても、尾の棘だけは触ってはいけません。
のこぎり状の棘はそれ単体でも凶器で、腸管脱出などの傷を負わされることもあります。
クラゲは厄介者?
夏の海の危険生物というと、クラゲを思い出す人が多いでしょう。
普段はプランクトンを食べて、ふよふよと漂っています。
ですが、水温が高くなって、海中の窒素やリンが増えプランクトンが増えると、一気に増えるのです。
ミズクラゲ
日本で最もポピュラーなクラゲ。
関東の海岸に大量に打ち上げられるのはこの種類です。
カツオノエボシ
かなり強烈な毒を持つクラゲ。
触手が非常に長くビニール袋と間違えられる姿をしています。
アカクラゲ、サナダクラゲ、レンタイクラゲとも呼ばれます。
アンドンクラゲ
活発に動く危険なクラゲです。日本の海域にはどこでもいます。
カギノテクラゲ
北海道や東北で夏に発生するクラゲ
クラゲに関しては、この他にもアレルギー反応を起こす人もいます。
・呼吸困難
・チアノーゼ
・皮膚が冷たく湿った感じになる
・血行不良
これがアレルギー反応の症状です。
クラゲ毒自体の症状は次のようなものが一般的です。
・強い痛み
・かゆみ、蕁麻疹
・末梢性神経痛(痛みが半年以上続くことがある)
排水溝に詰まるわ、人を刺すわで嫌われ者のクラゲですが、
鑑賞生物として人気でもあります。
ペンギンやウミガメの仲間は好んでクラゲを食べるなど、
海のごちそうとしての側面も持っています。
人間もクラゲの活用法として、
日本海側で大量発生するエチゼンクラゲを食用に出来ないかという声も上がっています。
クラゲ毒への応急処置は
毒を不活性化するための温湿布や、冷却による鎮痛などがあります。
ただ、子供が刺された場合は、この方法は毒の周りが早くなるので避けた方がよいです。
海の危険な生き物の種類
海水温の高温化で、南方の生き物が首都圏の海岸にやってきています。
今後100年で海水温が、2.9度上昇するという試算があります。
過去100年では海水温が1度上昇して、
南方の生き物の生息域が広がっているので、遭遇しないようにしてください。
ミノカサゴ
綺麗な魚ですが、背びれに毒があります。
マテ、ヤマノカミと呼ばれることもあります。
この魚もエイと同じくさばいて食べればそれなりに美味しい魚です。
オニダルマオコゼ
沖縄など暖かい海の岩礁やサンゴ礁にいます。
怖い顔の魚で、背びれに毒があります。
非常に鋭い棘で、靴を貫通してしまうこともある程です。
毒はハブ毒よりたちが悪く、死者が出ることもあります。
ただ、沖縄では美味しい食材として海人が捕っています。
ゴンズイ
海のナマズの仲間で、関東圏でも遭遇する魚です。
ゴンズイ玉という集団を作ります。
ひれに毒があって、刺されると、激しい痛みが生じます。
吐き気などが生じることもあります。
これも食べられる魚ですよ。
イモガイ
アンボイナという種が非常に有名です。
沖縄、奄美の他、高知、和歌山、千葉など暖かい海に生息します。
魚を吹き矢のような棘に込めた毒で気絶させてとらえる珍しい生態を持っており、
インスリン(血糖をコントロールするホルモン)に類似した構成の毒だと言われています。
沖縄ではハマナカーとアンボイナのことを呼びます。
刺された後、浜への道中程で倒れてしまうことからだと推測されます。
症状はめまい、複視、のどの渇き、だるさなどが
実際の症例として報告され、致死率の高い毒性生物です。
潮干狩りの時に食べられる貝と間違えて掴んでしまう例が多いです。
ダツ
魚が体に刺さって死ぬことがあると言ったら皆様驚くでしょう。
でも、ダツという魚はその習性からよく事故が起きます。
光るものがあると、それに向かって飛び出してきます。
ヘッドライトなどに突進してきますので注意しましょう。
スズと呼ぶ地方もあります。浅い海を好む魚です。
今までご紹介した魚とは違って、毒はないですし、サヨリによく似たお味です。
刺身がおいしいという人もいます。
他にもウミヘビなど危険な生き物は山ほど海にいますし、食べてはいけない生き物も多いです。
磯の蟹などを何も知らない人が味噌汁にしたら、
スベスベマンジュウガニという毒蟹が混ざっていて中毒したという話も聞きます。
特に暖かい海を好む海の危険な生物は、多くいます。
サンゴの生息北限が新潟県と、神奈川、千葉あたりです。
危ない魚はいないと思っていたら、
実は側にいたということがあり得ますので、うかつに生き物に触らないでください。
食べられるものもいますが、
釣りなどで外道としてかかっても、いきなりつかんだりしない方が賢明です。
死んでも棘が動く種が多いからです。
海でトラブルを起こさないために必要な事
持っていくべきもの
日焼け止め
経口補水液など水分を補給できるもの
大判のタオル(止血、保温に使える)
傷洗浄に使える蒸留水
長袖の衣類
靴
ポイズンリムーバー
防水ポーチに入れたスマートフォン
遊泳をしない場合も、スマートフォンは手許に置いておきましょう。
意識を失ったりした場合、GPSで探査してもらえます。
水は毒のある生き物の棘を洗い流すのにも使えます。
海で怪我をしたら、すぐに真水で洗い流して、海水につけないことが原則です。
また日焼け止めはできるだけ、オーガニックの物を使ってください。
日焼け止めの化学成分が海に流れ出る可能性があります。
自分にとっても、環境にとっても優しいものを選びましょう。
熱中症にはきちんと対応する
海の中にいると、涼しい気がしますが、
実際は海水温が30度以上になることもあります。
体が常時濡れている状態なので、汗による蒸発で体を冷やすことも出来ません。
時間を決めて、水分を摂取してください。
また、飲酒をした状態で海に入ってはいけないのです。
体が弱ると、感染症や、毒性生物による中毒も重症化します。
毒性生物に接触しない
事前に海水浴場に、毒のある生き物が出ていないか確認しておきましょう。
大人ならば、危険生物の情報を自分で入手して判断できますが、
子供は遊びに夢中になっていて気が付かないことがあります。
もし噛まれたり、刺されたりした場合は、即座に病院に行きましょう。
無理に棘や牙を抜こうとすると、毒が回ってしまいます。
多くの魚の毒はタンパク毒なので、45度以上のお湯にしばらくつけると、活性を失います。
痛みは和らぐので、応急処置としては有効です。
困ったら、すぐに人を呼ぶ
毒性生物に刺されたと気が付かなかった人が、
助けを求めた相手に有毒な生き物による傷だと教わって助かった例があります。
海で具合が悪くなったり、怪我をしたりした場合は、躊躇なくライフセーバー等を呼びましょう。
禁止区域に入らない
釣りや潮干狩り、サーフィン等を目的に、遊泳や潮干狩りが禁止されているエリアに行く人が毎年必ず出ます。
遊泳エリアならスタッフがいますので、
すぐ対処できますが、そのほかの場所は人が来ないことがあります。
自己判断はやめましょう。
もし危ない目に合っている人がいたら
おぼれている場合は、必ず後ろから近付いてください。
前から近付くと、しがみつかれて自分まで被害にあいます。
落ち着かせたのち、岸からの救援を待ちましょう。
完全に意識がない状態で浮いている場合は、周囲に毒のある生き物がいないか確認します。
クラゲの中には、
数メートルの刺胞を持っている種もあるので被害にあった可能性もあるからです。
海が楽しい場所になるかどうかは、あなた次第!
海での注意を2つ申し上げるとすると、
ライフセーバーの言うことは必ず聞くということと、ごみは必ず持って帰るということです。
ライフセーバーや管理者の言うことを聞かずに
痛い目に合う人を小さなころから見ていますが、あれは自業自得です。
廃棄物による事故はテグスの絡まり、釣り針のささり、
プラスチック片やガラス片での負傷といった事故をほかの人に及ぼします。
注意をしてもクラゲやエイは出るときは出ます。
でも廃棄物は、注意すれば事故を防げる、その違いは大きいですよ。
海に行くなら日焼け止めは絶対オーガニック!
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参考文献
「有明海全体を通した問題点と原因・要因の考察 」
「国立環境研究所 日本のサンゴの変化から世界が見える」
「環境省_串本海域公園_危険な生きもの|ゴンズイ」
「CiNii 論文 – クラゲの大量発生の実態」
「CiNii 論文 – わが国で大量発生するクラゲの種類」
「国立感染症研究所」
「水 圏 の富 栄養 化 と細菌 栄 養 摂 取 関 文威」
「症 例溺水により多量の海水と土砂を吸引した1例干野 英明1)* 渡辺 英明1) 斉藤 安弘1)澁谷 由江1) 小場 弘之2) 」
「平成 29 年における海難発生状況(速報値)海上保安庁」
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