土壌におけるケイ素とアルミニウム| オーガニックを理解する上で最低限理解したい「土壌肥料の基礎知識」その②〜「農学博士」スエタローが教えるオーガニック農業講義vol.13〜
土壌肥料の基礎知識その3としては、
土壌の肥沃度を決定する粘土鉱物について解説していきます。
粘土鉱物は、土壌の骨格に当たる部分です。
筋肉に当たる部分が土壌有機物(別名:腐植)です。
粘土鉱物の後に、腐植の特性について解説報していきます。
この粘土鉱物の特性を理解することによって、
その1で解説した、「土壌コロイドがどうしてマイナスの荷電を有しているのか?」
「土壌コロイドにおいても、マイナスの荷電の多少が存在するのか?」
結論から書きますと、土壌の粘土鉱物というのは非常に複雑でありまして、
化学の知識を駆使しないと理解できない部分があります。
でも、それを思い切って飛ばしました。
簡単な図で説明していきます。若干、無理もあるかもしれませんが、
詳しいことを知りたければ、私に相談するなり、
別のホームページなり土壌関係の本を参照してください。
大事な講義ですので、頑張っていきましょう。
1.オーガニックの土台「粘土鉱物」の特性
1)土壌コロイドの集合体「粘土鉱物」
まず、粘土鉱物というのは、先の土壌コロイドの最小単位でありまして、
粘土鉱物の集団が土壌コロイドを形成していると考えてください。
ですから、粘土鉱物というのは、
土壌コロイドよりも非常に小さい、ミクロの世界の話であるということです。
2).海外の有機野菜が育つ土壌。
粘土鉱物ってなに?
粘土鉱物は、主に2つの化合物によって構成されています。
その2つというのは、『ケイ酸』と『アルミナ』です。
ケイ酸とは、ケイ素の酸化物で化学式ではSiO2と書きます。
アルミナとは、アルミニウムの酸化物で化学式ではAl2O3と書きます。
覚えいますか?
「オ・シ・ア・テ・カ」を、学生の頃習いましたよね?
オは酸素のO2
シはケイ素のSi
アはアルミニウムのア(Al)
テは鉄のテ(Fe)
カはカルシウムのカ(Ca)
これら、オ・シ・ア・テ・カの中で、酸素がなぜ一番多いのでしょう?
それは、4つの元素は、
単体(→ケイ素、アルミニウム、鉄、カルシウム単独のこと)ではなく、
酸化物の形(ケイ酸、アルミナ、酸化鉄、石灰)で土壌中にも存在しているからです。
その中の粘土鉱物を構成しているのが、ケイ酸とアルミナになるのです。
3).ケイ素四面体とアルミニウム八面体
ケイ酸とアルミニウムを立体構造で示すことにしましょう。
図1に『ケイ素四面体』および『アルミニウム八面体』を示します。
実は、この二つを基本単位として、粘土鉱物が構成されているということです。その程度で結構です。
立体構造で示しましたが、
ケイ素の周りには酸素(O)、アルミニウムの周りには水酸化物(OH)と酸素があります。
漠然と、これだけ理解していただきたいのです。
実は、この水酸化物(OH)がポイントになります。
「あるんだ!」というだけでいいです。
2.粘土鉱物の種類と詳細な構造
粘土鉱物には、これから説明していくカオリナイト、モンモリロナイトの他、
ハロイサイト、バーミキュライト、イライト、クロライト等、豊富に存在します。
しかしながら、複雑な話になりますので、カオリナイトとモンモリロナイトに絞って、話をしていきます。
1).カオリナイト粘土
ケイ素四面体とアルミニウム八面体が1:1の割合で結合した粘土鉱物で、
『1:1型粘土鉱物』と称します。その代表例として、『カオリナイト粘土』があります。次行きます。
2).モンモリロナイト粘土
他方、ケイ素四面体とアルミニウム八面体が2:1の割合で結合した粘土鉱物で、
これを『2:1型粘土鉱物』と称します。その代表例として、『モンモリロナイト粘土』があります。
3.2:1型モンモリロナイト粘土の荷電特性
1).マグネシウムは元はアルミニウムだった
「それでは、なぜ、土壌コロイドはマイナスの荷電を帯びているのでしょうか?」
いよいよ、これから説明です。図2にモンモリロナイトの荷電特性のモデルを示します。
図1で示したケイ素四面体(Si)とアルミニウム八面体(Al)をそれぞれ『層』にしました。
2:1の割合ですから、3つの層でできていることが分かりますね。
ハンバーガーみたいなものです。
図2の左側の真ん中がアルミニウムですね。
3本の手(プラスの電気)を持っているのです。
そこにSiと一緒に仲良く手をつないで、プラスとマイナスが打ち消しあっていると考えてください。
ところが、図2の右側はアルミニウムの代わりに、
マグネシウム(Mg)に置き換わってることが分かりますか?
マグネシウムは、カルシウムと同じように、塩基ですね。
そして、2本の手を持っています(プラスの電気です)。
前号の土壌コロイドのところを思い出してくださいね。
前号のその2の図2を見てください。Mg2+とAl3+があって、
それぞれ2本の手と3本を持っていますよね。
実は、風化(長い年月をかけて、岩石が水や生物の作用でぼろぼろになって、
細かい石→砂→土になっていく現象です)によって、
この2:1型粘土鉱物の中に存在するアルミニウム原子が、
粘土鉱物の形が変わらない状態で、
ほぼ同じ大きさのマグネシウムの原子にすんなり置き換わってしまうのです。
これを『同像置換』または『同型置換』と称します。
この同型置換によって、3価(3本の手)の陽イオンであったアルミニウムが、
2価(2本の手)の陽イオンであるマグネシウムに置き変わるわけです。
荷電特性(手の数)が変わるということですね。
このとき、もともと、アルミニウムとケイ素の間で、
電気的バランスを保っていたのに対して、
マグネシウムに置き換わることで、マイナスの荷電が一つ余分になることがお分かりですか?
このことが、モンモリロナイト粘土全体がマイナス荷電を帯びているということなのです。
その1の図2で示した、土壌コロイドがマイナスの荷電を帯びていることが説明できるのです。
そして、プラスの陽イオンを電気的に引き付けているのです。
2).一度マグネシウムに置き換わる後は半永久的にマイナス荷電
→永久陰荷電
さらに、同型置換によってマグネシウムに置き換わった後、
この粘土が物理的・化学的に破壊されない限り、
また、土壌のpHが変化しても、このマイナス荷電は永久に存在します。
土壌コロイドにおいて、
『CECの値が大きい土壌ほど肥沃である』ということです。
マイナス荷電が多いということですね。
反対に、『CECが低ければ痩せた土壌である』ということです。
マイナス荷電の数が少ないということですね。
これを『永久陰荷電』と称します。
粘土鉱物全体において、80~90%以上占めていると考えてください。
他方、この永久陰荷電の他、同図において、破壊原子価において生ずる荷電特性があります。
これは、次の1:1型粘土鉱物のところで説明します。
結論から記しますと、この粘土鉱物は『土の王様』と称され、
この粘土を多く含む土壌は、一般的に肥えた土壌であるといえるのです。
残念ながら、日本には少ない土壌です。
4.1:1型カオリナイト粘土の荷電特性
1).粘土鉱物の切れっぱし?
1:1型粘土鉱物には、先のモンモリロナイト粘土と異なり、
永久陰荷電による荷電特性を有していません。
それでは、「どういう荷電特性なの?」ということになりますね。
この粘土鉱物には、始めと終わりがあります。
割りばしでも棒でも、手で折ってみてください。
そばやうどん、ラーメンを食べるために二つに切り離すのではなく、
思い切って、棒を折るんです。
折った端っこは、ギザギザに壊れた感じですよね。
実は、粘土鉱物にも、両端っこは、壊れた感じになっているのです。
本号の図1でも出しましたね。
そこにある水酸化物(OH)が重要になってくるのです。
図3にアルミニウム八面体とケイ素四面体を層にした形で、カオリナイト粘土を示します。
粘土鉱物の左右は壊れた状態を表しました(テカテカ!!!)。
この左右の壊れた状態を『破壊原子価』と称します。
この破壊原子価は、図2で示したモンモリロナイト粘土にもあります。
両端は壊れた状態ですからね(粘土全体の20~10%程度)。
2).pHによって土壌の「痩せ」度は変化する
この破壊原子価には、水酸化物(OH)が存在します。
これが、土壌のpHの変化によって、OHの水素イオン(H+)が離れます。
これが離れたとき、酸素においてマイナスの電気が生ずるのです。
つまり、土壌のpHが高くなれば(酸性状態から微酸性・中性付近)、
水素イオンが離れることで、マイナス荷電を生じるということなのです。
反対に、酸性条件下では(pHが低い場合)、水素イオンが酸素イオンに結合して、
マイナスの電気がなくなってしまうのです。
このような荷電特性を『pH依存性陰荷電』と称し、
土壌のpHにより変動する不安定な荷電特性なのです。
実際、1:1型の粘土鉱物は、このpH依存性陰荷電のみを有しており、
先の2:1型粘土鉱物が有する永久陰荷電よりも劣っており、
土壌は相対的に地力の低い、痩せた土壌であるといえるのです。
5.「講堂・電車・バス等の座席の数」の実例
硬い話が続きました。これで最後です。頑張りましょう。
表1にカオリナイトが有するpH依存性陰荷電と、
モンモリロナイト粘土が有する永久陰荷電の違いについて記しておきます。
両粘土鉱物のCEC(塩基交換容量)ならびに表面積の値を比較しても分かりますように、
モンモリロナイト粘土が優れた粘土鉱物であることがお分かりいただけますでしょうか?
今回はこの程度で結構です。
「どうして、粘土鉱物がマイナスの電気を持っているのか?」
そして、
「粘土鉱物の違いによって、マイナス電気の数が違ってくる」
前号でも話しました。
講堂・電車・バス等の座席の数ですね。
大きい行動、二階建て車両ほど、座席数が多いですよね。
モンモリロナイト粘土は正しく、それに匹敵します。
もっと分かりやすく書くならば、カオリナイト粘土よりも大きな胃袋なのです。
ですから、カルシウムやマグネシウムを交換性の形(マイナスの電気と電気的にくっつける)でたくさん、
包み込むことができるということです。
そのことをご理解いただけましたら幸いです。
さて、アロフェンという粘土鉱物ですが、これは火山灰土壌のところで説明します。
また、CECの単位ですが、これは後程、土壌分析の結果に基づいた施肥計算のところで、詳しく解説します。
本日はご苦労様でした。引き続き、頑張って峠を越えましょうね。
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