2020/07/28

小麦の害はグルテンではない！イタリア国立がん研究所の元所長が語る、小麦粉を控えるべき本当の理由

くどうりつこ

イタリア在住。イタリア人の夫、小学生の息子、愛犬と気張らない暮らしをしています。体と心が楽になる記事を提供することが目標。イタリアの謎やあれこれについてブログ「陸と海のあいだ＠イタリア」にボチボチ書いています。

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皆さんは、イタリアの食事と言うと
どのようなものをイメージされますか？

多くの方はパスタを思い浮かべることと思います。

甘いコルネット（クロワッサン）やビスケットで一日を始めたら、
お昼ご飯はピッツァやパスタ。
フォカッチャやパニーニでランチを済ませた忙しい日は、
夕食にミラノ風カツレツを食べ、ティラミスで食事をしめる。

季節ごとのイベントでも、
パスクワ（イースター）にはコロンボ、
クリスマスにはパネットーネがお決まりです。

さて、この全てに共通した食材といえば、

それは小麦粉。

イタリアの食卓と小麦は切っても切れない関係です。

しかし、その小麦の使用を控えるよう提言しているのが、
イタリア国立がん研究所の元所長フランコ・ベッリーノ医師。

その理由は「糖」にあります。

今回は、イタリア国立がん研究所の元所長が語る、
小麦粉を控えるべき本当の理由をお伝えします。

小麦の害は、実はグルテンではない？

小麦と言えばグルテンに関連する問題が挙げられており、
イタリアでも様々な食品に「グルテンフリー」の表示が見られます。

しかし、ベッリーノ医師が問題にしているのは「糖」。
これは、イタリアの小麦粉が挽き方により
分類されていることにも関係します。

イタリアでの小麦の区分方法

日本の小麦粉は、小麦の種類ならびに
たんぱく質（グルテン）含有量によって
強力粉、中力粉、薄力粉と分かれています。

ここイタリアでは、小麦の種類と挽き方で大きく6種類
（タイプ00、0、1、2、全粒粉、セモリナ粉）に分類されます。

中でも、スーパーマーケットで棚の大部分を占めるのがタイプ0と00。
00は主にお菓子作りに、0はパンやピッツァに用いられます。

【タイプ00】
精製された小麦粉。
ふすまと胚芽を完全に取り除いたもので、
100キロの小麦から50キロの小麦粉が作られる。
粒が細かく、ケーキやペストリーに向いている。

【タイプ0】
タイプ00と同様に精製された小麦粉だが、
ふすまと胚芽の廃棄量は28％。
それゆえ少し灰色がかった色になる。
発酵の必要なパンやピッツァ向け。

【タイプ1と2】
半全粒粉。
数字が大きくなるにつれて、
ふすまと胚芽の割合が多くなる。

【全粒粉】
100キロの小麦全てが全粒粉になる。
無農薬栽培以外のものは残留農薬の危険性あり。

デュラム・セモリナ粉：
デュラム小麦を粗挽きに挽いた小麦粉。
粒が硬いためタイプ00のような白い小麦粉にはならない。

「白い小麦は毒！」イタリア国立がん研究所の元所長が警告

ベッリーノ医師が特に問題にしているのはタイプ00。
下記のように警告しています。

「白い小麦粉（タイプ00）は、健康に良い成分、
特に腸を保護する繊維が取り除かれており、
体にとって有害でしかありません。

白い小麦粉を口にする度に、
デンプンが消化・分解されてブドウ糖になり、
それが吸収されて血糖値が上昇します。

小麦粉はグリセミック指数（GI値）が非常に高いため、
血糖値がすぐに上がり、糖尿病、腫瘍、肥満、
その他多くの病気が促進される結果となります。

インスリンがピークに達すると炎症因子が放出され、
炎症が慢性化すると癌細胞が増加します」

（引用：「ilfattoalimentare.it」））

それでは、タイプ00の小麦を作る過程で
取り除かれるふすまと胚芽には
どのような栄養があるのでしょうか。

小麦のふすまと胚芽が持つパワー

小麦や精製される際に失われてしまうふすまや胚芽には、
様々な栄養が含まれています。

小麦の外側の部分であるふすまは繊維が豊富で、
ビタミンBやミネラル塩を含みます。

胚芽は、ビタミンBとE、ミネラル、
多価不飽和脂肪やフェノール化合物といった
抗酸化物質が豊富です。

特に繊維は、コレステロール値の低下に有用。
つまり、血栓の形成を阻止し、
心臓発作や脳卒中を防ぐうえで効果があると言われています。

小麦ふすまや胚芽の食物繊維で免疫システムも機能

イタリア国立がん研究所で所長を務めたベッリーノ医師も、
食物繊維が健康に及ぼす重要性をこのように説いています。

「食物繊維、特に穀物繊維が豊富な人は、
実際に腸癌にかかる数が少ないことが数字で示されています。

それ以外にも、心臓発作、糖尿病、呼吸器系や消化器系の疾患、
さらには感染症にも強いことが分かっています。

なぜなら腸がうまく機能すれば、
免疫システムもうまく機能するから。

タイプ00の小麦粉は、健康に良い成分が全て取りのぞかれ、
非常に高い血糖指数を持つため、
糖尿病、腫瘍、肥満といった問題を抱える人にとっては
有害でしかありません」

（引用：「www.amoreterra.com」））

つまり、タイプ00の小麦は、
こうした栄養をすべて取り除いてできた
デンプンの塊ということになります。

グリセミック指数（GI値）から見た小麦の代替品

（週に一度買い出しに行くスーパーの粉製品の棚。スペルト小麦やライ麦、キノアなども並んでいます）

それでは、小麦粉の代わりに何を使えばいいでしょうか。

ベッリーノ医師の指摘にもあった
グリセミック指数（GI値）に着目してみると、
タイプ00の小麦粉のGI値は85と高く、
これより数値が大きいのは米（精白米）粉の95のみ。

それでは最も低いものはというと、
キャロブ（イナゴマメ）パウダーの15。

これに続き、大豆、ひよこ豆、ココナッツから作られた粉の数値が35以下、

スペルト小麦とカムット小麦（共に古代小麦）、ライ麦の全粒粉が45で並びます。

それ以降は、
そば粉とライ麦（50）
全粒粉（60）
半全粒粉（65）
スペルト小麦と栗（65）
トウモロコシ（70）
玄米（75）と続きます。

参考：『L’ indice glicemico』 (Marie-Laure André)

小麦の害を説く国立がん研究所の元所長とスーパーへ！何を買う？買わない？

イタリアの国営放送RAIが、
国立がんセンター所長を務めたベッリーノ医師と共に
スーパーマーケットに向かい、
同医師が提言する買うべきもの、
控えるべきものを取材しました。

小麦をはじめ、控えるべき食品はこれ！

小麦粉製品

– 市販のパン
白いパンは当然避けるべきだが、
全粒粉のパンであっても原材料名の確認は必須。

デキストロース（ブドウ糖）が使用されている場合は買わないこと。

– ビスケット
砂糖なしのビスケットであっても、
砂糖の代替品が何かを要確認。
普通の砂糖より健康に良くないことがある。

– ケーキ類
グルコースシロップ（液状ぶどう糖）が入っているものは買わない方が良い。

※手作りをする際はタイプ00の小麦粉は使わないこと。
小麦粉がビオかどうかは無関係。

サラミや生ハム、赤い肉

現在社会では赤い肉を食べすぎている。
赤い肉は胃腸関係の癌のリスクを高める。

白米

精製された白米はグリセミック指数が高い。

積極的に摂るべき食品は？

野菜と果物

ベッリーノ医師がビオコーナーで手に取ったのは、
炎症を抑える役割をする玉ねぎ、にんにく、じゃがいも、生姜、ザクロ。

特に玉ねぎには癌を防ぐクェルセチンが豊富の含まれることから大事。

一般の野菜売り場でも、
カボチャ、ネギ、ブラッシカ・ラパ（アブラナ科の植物）、
セダーノディベローナ（セロリの一種）を買い物かごに入れました。

※ビオのものを購入できないとしても、
　野菜と果物は絶対的に体に良いので積極的にとるようにとのこと。

ドライフルーツ・ナッツ類

クルミを毎日1～2個食べることで心臓の病気を防ぐことができる。

魚介類

魚の脂肪は炎症を抑える。
サバは脂肪が多いのでお勧め。

あさりは鉄分やB12が豊富なことから、
少なくとも2週に1回はスパゲッティ・アッレ・ボンゴレを食べるよう推奨。

雑穀・豆

雑穀と豆は健康を維持するために非常に大事。

一度の食事で豆と雑穀を摂ると、
人間に必要なたんぱく質を全てカバーすることができる。

※動物性たんぱく質について反対はしないが、
　毎日口にするのは避けるべき。

玄米（ビオ）

玄米には脂肪酸が含まれており、
これが炎症を抑える。

健康を損ねている人には、
1週間玄米だけ食べ続ける食事療法をすることがある。

※玄米は必ずビオのものを購入。
　無農薬栽培でないものは逆に悪い影響を及ぼす可能性あり。

和食材

場所を健康食品の店に移して、
ベッリーノ医師が手に取ったものは
お豆腐、味噌、そして大根と日本人にはお馴染みの食材。

コレステロールが高い人には、お豆腐がおすすめ。
味噌は消化を助け、大根と人参を半々に入れたスープは便秘に効果的とコメント。

お塩

良いお塩（海水からできた塩）を使う。
※イタリアでは土から掘り出された岩塩で作られた塩が多く売られているため。

パスタ

パンよりパスタの方が好ましい。
これは、パンが血糖値を一気に上げる一方、
パスタは徐々に上がっていくため。

パンを食べたい場合は、
オメガ3と癌を防ぐリグナンが含まれる
亜麻の実（フラックスシード）の粉でできたパンが良い。

小麦の害を説く国立がん研究所の元所長が勧めるのは「粗食」だった！

パンだけで一人当たり年41キロ、
パスタを合わせると年64キロもの小麦を消費するイタリア。

このような食文化の中で、
小麦粉の害を説く国立がん研究所元所長であるベッリーノ医師は、
玄米や雑穀と野菜を主に摂る「粗食」を勧めています。

日本では、料理研究家の土井善晴氏の著書
『一汁一菜でよいという提案』が数年前に発売されたところ、
発行部数が12万部を超える大反響だったそうですね。

具沢山のミネストローネや豆・雑穀類、魚介を使ったスープなどで、
イタリアンな「一汁一菜」もよさそう。

もしパンを添えるなら．．．
ビオの全粒粉か亜麻の実の粉でできたパンと一緒に召し上がれ！