みんなが消費者であり、みんなが生産者である世の中になればいい。現役自然栽培農家が語る農業の現状とあるべき未来。深刻な日本のオーガニック農業を継承するにはどうしたらいい?
みんなが消費者であり、みんなが生産者である世の中になればいい。現役農家が語る農業の現状とあるべき未来。深刻な日本のオーガニック農業を継承するにはどうしたらいい?
日本の農家が減少しているのをご存知ですか?
「オーガニックが身近に売っていない」
これは消費者のみなさんがよく言う、言葉です。
IN YOU読者の皆さんもオーガニックなものを求めて地元の自然食品店やネットスーパーなどをみて回っていることと思います。
しかし、スーパーを歩いても、オーガニックはほとんど見当たらない。
お気付きの通り、オーガニック農作物の生産や作り手が極端に足りていません。
筆者である私自身も兼業農家の生まれで、今農業をやっています。
しかし、なぜ今になって世間では“儲からない”といわれる農業に本気で関わっているのかをお伝えします。
日本の農(食)業文化を次世代に繋いでいくには、どうしたらよいのでしょうか。
減少し続ける農家の現状と農業従事者の高齢化
まず、農林水産省の統計情報をご覧ください。
出典:農林水産省 統計情報 農家戸数より
この統計を見ると年々農家戸数が減少傾向にあることが分かると思います。
平成12年の専業農家が42.6万戸だったのに対し、平成29年では38.1万戸に減少。
同じく第1種兼業農家は、35.0万戸から18.2万戸に減少し、
第2種兼業農家に関しては、156.1万戸から63.8万戸へと大きく減少しております。
続いては、就業人口とそのうちの高齢者数です。
出典:農林水産省 統計情報 農業就業人口より
農業就業人口は、平成22年に260.6万人から平成29年には181.6万人に減少。
そのうちの65歳以上は160.5万人から120.7万人に減少しております。
また、平均年齢はほぼ横ばいです。
これは、高齢者が日本の農業を支えていることはいうまでもありません。
「このままでは日本のオーガニック農業に危機が訪れる」と確信。増え続ける耕作放棄地が身近に迫る。
近所でも耕作放棄地が増えている現実があります。。
手づかずの荒れた田んぼ、野原。
誰もそこで農業をやろうとしない・・そんな耕作放棄地がそこらじゅうにあるのです。
それを目の当たりにすると凄く悲しい気分になり、これらをなんとか活かせないものか・・・
このままでは日本の農業に危機が訪れる、そう確信しました。
農家の生まれでありながら何もしてこなかった自分自身の反省と共に農地を何とか活かしたい、そう感じるようになりました。
大規模な農地を作るには、コストも膨大で厳しい設備投資が必須
しかしこれらを使えるようにするためには、色々なハードルがあります。
土作りからリスタートする必要があり、何年もかかります。
さらに、うまくいっても、規模を大きくするとプラスで設備投資が必要になります。
規模が小さいままだと採算が合わなくなるのです。
また、規模と機械は比例して大きくなり、作業そのものは少人数で足りるようになります。
ですから、大規模な農地になればなるほど、農地全体を細かく見て回るなんて、悲しきかな薄れてしまいます。
自然栽培との出会い。
そんな時、知人の勧めで自然栽培を知り、木村秋則氏の著書「すべては宇宙の采配」や「奇跡のリンゴ」を初めて読みました。
そして自然栽培に関する講座も受講しました。
その教えの一部です。
“土の中はヒトの目では分からない。地上にある状態を観て触れて感じとることだ。
微生物が活発に活動するには、土の中の温度を調べて、栽培始めに適正かを見極めること。
そして、根を張りやすい土壌を作ること。”
参考までに自然栽培とオーガニックの関連性は、
下記に記載がありますのでご興味のある方は読んでみてください。
出典:特定非営利活動法人 日本オーガニック&ナチュラルフーズ協会より
それから、自然農の川口由一氏の考え方も取り入れ、草を自然肥料として扱うことも学びました。
自然栽培にすると収穫量は下手すると半分に下がるかもしれないと言われる。
生業であるがゆえの家族との対立。自然栽培を理解されない。
しかしこれを実際にやろうとすると周囲から全く理解されないのです。
慣行栽培の親世代にいわせると、“肥料も農薬も使わない”って簡単には受け入れてもらえないことでした。
リスクが高いとも言われました。
間違いなく収量が下がるということを心配してのことだったと思います。
でも、私は、その土地に合ったものを栽培し、身体によい作物をより多く生産すればいいだけでは?との疑問が湧き、反対を受けても聞かずに、その一心で畑で栽培を始めることにしました。
ちなみに、米の慣行栽培からの移行による収量は、半分にまで下がるといわれ始めるのは、確かに怖かったです。
周囲からは散々。「自然栽培なんて、虫が寄って来る」って煙たがられますよ
そうこうして行くうちに、
“実践のない学びは知識ではなく、単なる絵空事でしかない。
自分のうちの畑だけでは売り上げに限界がある。”
との理由から、耕作放棄された農地も自分で、歩いて探すことにしました。
しかし、同じ思いで始めようとしている知人から言われたことは散々でした。
“休耕地だったとしても周りは全て慣行栽培ですよ。
しかも、隣接する田畑の地主さんに肥料も農薬も使わないっていうだけ
虫が寄って来る!っていわれるんで気をつかいますよ。”
と、借りることすらままならなく諦めてしまったとも伺いました。
しかし諦めずに続けたところ、私は、運よく友人や知人の耕作していない畑を新たに借りることができました。
何でもいいから育つ作物を探しつつ大豆などを育てることにしたのです。
お客さまに売れるような自然栽培の商品にする。
農家の取引先といえばJAさんです。
JAさんでは慣行栽培との区別になりませんから、自分でお客さまを探すことだって重要です。
経費を絞り、取れた作物のブランド化にも励みました。
どんな素材のパッケージにするか、ラベルはどうするかなどの工夫も凝らしました。
更には、商品のよさが分かる人を求めて都市や地元での直接販売、SNS発信などによる個人直送にも挑みました。
今までにない商いをやって、よいものづくりを求める人に拡散しました。
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自然栽培農業を通してコミュニケーションすること
今では情報はアッという間に広がりますが、何もしないと、アッという間に衰える社会。
農業に従事しているだけでは採算が合わないことも先に述べました。
食に関心の高いIN YOU読者のみなさんは、身体にあった食を求め、
その供給すら自分で作ってしまおうという方がたくさんおられると思います。
最近では会社員を辞めて農家を始める人も多くなってきているようです。
自然栽培農家の役目とはなんなのか。
肥料も農薬も使わない自然な命を育むことが私たちの本来の役目だったはず。
消費者の方々に少しでも現場のリアルを知っていただきたい、
そしてオーガニック農家を応援しともに歩んでいきたいと思い、今日は発信させていただきました。
自然栽培農家である次の私の目標は、繋がりへ貢献すること。
次なる私の目標は、より親しみを感じる人脈との繋がりです。
自然栽培や自然農から得た学びを基に、ヒトと自然の関係性を深める位置づけとして「古代農」という表現を使うことにしました。
みなさんはまだ作り手である農家ではないかもしれませんが、週末農業や、家庭菜園をやったことはありますか?
その際、作物を育てる空間でいろいろな想像を膨らませた覚えはありませんか?
例えば、作物同士が仲良く生育したらどうだろう?
生育が保てるようになったら草を放置したらどうだろう?
原産地の違う作物を栽培すれば寒暖差による収量の変化にも対応できるのではないだろうか?とか…。
まだやったことのない方はぜひ週末からでも、友達と始めるのでもいいので、大切な学びを得るため、何かを作ること、スタートしてみてください。
みんなが消費者であり、みんなが生産者である世の中になればいい。自然栽培、はじめよう。
“みんなが消費者であり、みんなが生産者であり”の世の中になれば、きっと命の尊さを再発見するのではないでしょうか。
そうなれば今の世の中も、良くなっていくでしょう。
共に汗をかいて仕事をし、そこで仲間作りもできるような社会。
これが実現すればこれほど素晴らしいことはない、私はそう思います。
オーガニック・自然栽培農業について
肥料も農薬も使わないって一体どういうことなのか?
肥料による作物の生育に助けになるものは、必要以上であってはならない。
農薬による害もまた長年に渡り、ヒトの健康を脅かすものとなっています。
自然界において有益と称するものを人間は作り出し、それによる害も生み出してきました。
除草剤による植物の命を根幹から絶つ行為そのものは、やがて人間へと跳ね返る。
小動物ほど自然界にないものに影響されやすく、絶滅の一途を辿る状態を何とかしたい。
私は今日もそう思い畑に出ています。
多くの作物は種を蒔くことから始まり、新たな種落ちして増えていく。自然に増えるからこそ命は繋がる。
また、気候に左右されやすいからこそヒトの関与で共存していく・・。
ヒトも他の動植物と同様に食べたものでエネルギーを作り出し生きているということです。
より身体に近い食にこそ健康を維持するヒントがあるのではないでしょうか。
オーガニック農業は、健やかな生命の営みに貢献出来る、世代の繋がる農業だと私は思います。
みなさんもオーガニック農業、一緒にはじめませんか?
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