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有機農業で全世界の人口を養うことが可能な理由。値札に隠された4つの真実の値段から読み解くオーガニックの素晴らしさとは

有機農業で全世界の人口を養うことが可能な理由。値札に隠された4つの真実の値段から読み解くオーガニックの素晴らしさとは


人が何かを選択する時、

「快楽を得るため」
「痛みを避けるため」

このような感情で判断することが多いと言われています。

どちらも間違っていません。

今回は「オーガニックの本質的な部分」に迫ってみたいと思います。

『皆さんはどのような理由からオーガニックを選んでいるのですか?』


ご存知の方も多いと思いますが、農林水産省が2050年までに有機農地を25%に増やし、化学農薬の使用量も5割減を目指すという目標を打ち出しました。

オーガニックは健康にも地球環境にもよいのはすでに明らかになっていることではありますが、そうは言っても「オーガニック=値段が高い」というイメージが拭えず敬遠している方も多いと思います。

確かに値札の販売価格を見ただけなら確実に高く見えますが、値札は本当の価値を示しているわけではありません。

オーガニックは『将来的にみて一般食品よりも安い』という事実がわかっています。

これはなかなか理解されにくいことですが、「オーガニック農業で全世界の人口を養うことは可能なのか」について、以下の3つのポイントから考えていけば納得がいくと思います。

・オーガニックは高いという印象がある方、もしくはその思考を払拭したい方

・ものの本当の価値は値札には表示されていないという真実

・オーガニックは消去法で選ぶのではなく、オーガニックの素晴らしさを知って選ぶと世界が変わる

オーガニックライフ初心者の方にも、すでに実践されている方にもぜひ読んでいただきたいです。

すでに実践されている方はその選択に自信を持ってください。

もしもこれまで「添加物が怖いから」という理由でオーガニックを選んでいるとすれば、「オーガニック自体が素晴らしいから」というポジティブ考えに変わるかもしれません。

オーガニックは本当に高い?一般食品を消費し続けることで考えられる、将来誰かが支払う4つの代償



オーガニックは身近に多くなってきましたね。

みなさまがお住まいの地域には、どのようなオーガニック商品が並んでいますでしょうか。

冒頭でお伝えしたように、

オーガニック=高い

というイメージがあるのはなぜでしょうか。

一般的な理由としては、値札に表示される販売価格が高いというのが多いでしょう。

価格に見合った価値が本当にあるのか?という声も聞こえてきます。

では、一般食品が安すぎるのではないか?という視点から物の価値を見てみるとどうでしょうか。

値札だけでは分からない。オーガニックの本当の価値は将来的コストを下げていたという真実



お買い物をする際には、必ず値札を確認するものですよね。

アメリカ農務省が発表した調査によると、オーガニックと一般商品には最大で82%の価格差があったと報告されています。(※)

単純に値札だけをみると「オーガニックは高い」となりますよね。

では、「表示された価格は商品の本当の価値を示していない」という、思考の転換をしてみましょう。

商品には値札だけでは見えない隠れた4つのコストが存在すると言われています。

オランダ有機野菜のEosta社のキャンペーンに、「True Cost of Food(食べ物の真実の値段)」というものがあります。(※)

こちらのキャンペーンは消費者に食べ物の真実の値段を伝える活動です。

私たちの周りには有機食材よりも慣行栽培の食品が多く、安い食材に隠れた代償やオーガニックの本当の価値を知る機会がないという情報不足の状況です。

商品の値札ではわからない隠れた4つのコスト



1 健康リスクによる将来的コスト

農薬が大量に使われた食品、発がん性のある食品添加物を消費し続けた場合、今は大丈夫かもしれませんが将来的に健康を害する可能性が出てきます。

そうなると治療費が発生します。

幼いお子さまに関しては、幼いうちから超加工食品など過剰摂取し続けると、心身共に健康リスクが高まるという研究があります。

では、購入するときに高いと言われるオーガニックはどうでしょうか。

体を害する添加物や農薬が不使用であることから、将来的に医療費の負担が減る可能性があると考えられますね。

また、農薬を使って栽培する地域でも健康被害による費用がかかり、苦しんでいます。


2 環境破壊に対するコスト

これは慣行栽培が使用する化学肥料や農薬は、製造過程で大量の二酸化炭素が排出され地球温暖化が進みます。

それを解決するための多くの費用が必要になるというコストです。

環境汚染が進む理由のひとつとして、土壌への大量農薬散布、化学物質暴露による水質汚染、そこから生命体の大量死や絶滅なども懸念されます。

養蜂場のミツバチ大量死についてのニュースはご存知の方も多いかもしれません。

養蜂されているミツバチが不自然に大量死しているという発生原因で有力なのは「ネオニコチノイド系農薬」と報告されています。(※)

私の知っている化学肥料・農薬不使用の農家でもミツバチによる受粉を行なっています。

しかしこうしたミツバチ大量死という背景から、日本では受粉用のハチが供給不足になっていることが懸念されているのも事実です。

農林水産省の全国調査によるとミツバチの大量死は、おもに「ダニ類による被害」、「水稲のカメムシ防除などに使用されるネオニコチノイド系農薬ほかによる直接的暴露」、「餌となる蜜源、花粉源の減少」などが原因となっている可能性が高い、としています。(※)


以前、地球温暖化による気候変動でコーヒー栽培地域で「さび菌」が発生しているという事実をお伝えしました。
★コーヒー豆の絶滅危機に立ち向かうゲノム編集技術。社会・環境問題をおざなりにした対策は解決策になりません。コーヒーを愛するライターがお伝えする最新情報【前編】

気候変動の原因のひとつに土壌汚染が考えられます。(※)

また森林火災も地球温暖化による乾燥が要因とされています。

自然火災の原因で考えられるものを詳しく解説した記事をご紹介します。
★世界各地で止まらない森林火災が「第6の大量絶滅期」の引き金に?誕生日に地球へのギフトとして植樹を贈るバースデーツリーのすすめ


それではここで、ひとつ質問です。

土壌汚染、水質汚染、森林火災はどなたがお金を出して回復、浄化させるのでしょうか。

実は、私たち消費者の税金によって支払われます。


3 労働搾取など社会問題に関するコスト

インユージャーナルでは児童労働問題、低賃金強制労働の問題を取り上げてまいりました。
★日本のナッツブームの裏側で起こっている衝撃の事実。生産国の人々の人生を狂わせ、新型コロナで追い討ちをかけるのは安さばかり求める私たち消費者です

普段の生活で意識することがあまりない社会問題、と思われがちですが実は世界中で大きな問題となっています。

フェアトレード商品であれば、生産者の方にも正当な賃金が支払われるのですが、安すぎる食品であったり、上記のようなカシューナッツのお話にあるように、値札にはまったくといっていいほど組み込まれていません。

フェアトレード、オーガニックを選択するということは、将来私たちが支払う代償を減らすだけでなく、『命』という値段には置き換えられないものを守ることにもつながるのです。

農薬などの土壌汚染で、人が生活できる環境を失うことに対する後の費用も発生します。


4 未来を担う子どもたちが支払うことになる次世代代償コスト
この記事をお読みくださっている方、私たちの子どもたち、これから未来を創り上げていく次世代の方が支払うことになるであろうと考えられるのが、以下のコストです。

2018年12月、著名な方々による「農業・食品・金融」に関する真の価格についての討論が行われ、10の結論が出ました。(※)

1 持続可能な健康的な食品(オーガニック)は手頃な価格であり、不健康な食品はより高価になる

2 隠されたコストは消費者から回収すべきではなく、チェーンの最初の地点の根本的問題を改善すべき

3 政府は、一般的に商品に添加される有害物質の投入が将来的に高価になると保証する必要がある

4 汚染物質にさらされた職場環境には措置が必要。持続可能な企業を増やす

5 持続可能な消費システムを構築することで消費者が支出パターンを維持したまま健康的な生活ができるようになる

6 植物由来の食事への移行が気候を救い、肥満蔓延を抑える方法となる

7 栄養不足のコスト、特に肥満における治療コストだけでも世界中で年間3兆ドル。この数字は環境ダメージの総コストを上回る

8 貧困地域での農薬使用の強制をしないこと、豊かな土壌作りを手伝うことが持続可能なビジネスモデルとなる

9 オランダ、スペインで証明されているように、食料システムを持続可能なものにすることで、途上地区の社会情勢が保証される

10 人類の未来の最大の脅威は気候変動、健康危機、土壌肥沃度です。真のコスト改革はこれらに焦点を当てていく

食品や商品の本当の価値を値札につけることは容易ではありません。(※)

ただし、真のコストの原則に基づいて価格設定をする努力については、オーガニックが先駆を切っているのではないかと考えます。

安く設定された一般食品の消費は、のちのち環境汚染につながり、人体までも汚染する可能性があると言われます。

その代償は誰が支払うのかを考えた場合、ほかの誰でもない消費者なのです。

持続可能な生産活動、消費活動とのミスマッチを極力少なくしたものが、私たちが実践するオーガニックライフなのです。


慣行栽培で作られた食料品や商品は表面的には安く見えます。

しかし、上記の代償を考える上で将来的にかかるコストは計り知れません。

一方で有機農産物は上記の代償を軽減させる可能性があり、結果的に安いというわけなのです。

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オーガニック食品は一般食品よりも栄養価が高い?という疑問を科学的に解説



一般食品に対しては残留農薬や発がん性添加物が使用されている可能性があるなど、消費し続けることで様々な健康リスクと関係が疑われるというのは言うまでもありませんし、先ほどお話した代償もあるわけです。

では、素材の持つ栄養価ではどのような違いがあるのでしょうか。

2016年2月に発表された研究によると、オーガニックの乳製品や肉には一般食品に比べてオメガ3脂肪酸が約50%多く含まれていたという内容が発表されました。(※)

理由として、牧草地の動物がオメガ3を多く含む餌や草のある環境で育てられたことが考えられました。

有機農産物は、「化学合成農薬、化学合成肥料、遺伝子組み替え生物」を3年以上一切使用しない土壌で育てられた農産物であり、家畜に関しても自然に近い環境で育てられ、抗生物質やホルモン摂取をせず採餌も有機農産物であることが条件となっています。

土壌に撒かれた化学肥料で育った草を動物が餌とした場合、やはり動物たちの体が変わってくる、それが栄養素としても現れることになるのです。

家畜への抗生物質投与に関しても、ヒトの健康に悪影響を及ぼす可能性があることは既に科学者によって確認済みです。

アメリカ疾病予防管理センターによると、抗生物質を与えられた食品をヒトが食べることで、抗生物質への耐性が生まれる、ヒトが何らかのタイミングで抗生物質で治療が必要になった場合、治療がうまく進まず費用がかさんでいくだけになる、と指摘しています。

ここからわかるのは、抗生物質やホルモン剤を投与された肉や乳製品を摂取するごとに、私たちの体は知らずして耐性を作ってしまっていることです。

乳製品が好き、お肉が好きという方は、通常のお肉よりも「抗生物質・ホルモン剤不使用」で育てられたお肉を選ぶと、将来的なコストはかからない可能性が出てきます。

「オーガニック農業で全世界の人口を養うことは可能である」と結論付けた論文



さて、2050年に有機農地を25%増やすという取り組みについてお話しましょう。

農林水産省で発表されたこの取り組みの詳細は

・農薬50%削減
・化学肥料30%削減

さらに、生産者の支援、病気や害虫に強い品種開発の強化などです。(※)

品種改良についてはまた別の問題もあるかと思いますので、今回は有機農地の拡大にフォーカスしてお伝えします。

今回のテーマである「有機農業で全世界の人口を養うことは可能なのか」という話が登場した背景は、人口爆発がひとつの要因です。


国連の統計によると現在の世界人口は76億人、30年後の2050年には14億人もの人口が増加するという予測があります。

となると、食料生産が重要となるわけですが、国連人口基金によると今のままでは食料が人口に追いつかないという地球規模の飢餓状態が発生するのではと言われています。

先ほど申し上げた将来的にかかる代償コストを考えた場合、農薬散布、化学肥料による環境汚染、水質汚染はさらなる気候変動を招き、持続可能な未来の足かせとなります。

有機農業では30年後の地球を救えない、と一部では言われています。

有機食品は健康にいい、環境にもいいということは誰しも認めることなのですが、世界人口の増加や気候変動の悪化が生産性を下げるため有機農業だけではまかなえないだろうというのが主な理由でした。

2017年スイス有機農業研究所、国際連合食糧農業機関、欧州の研究者らが、有機農業で持続可能な世界を養う戦略



有機農業は世界を救えないと一部の批判がある中、それをひっくり返すある論文が発表されたのです。(※)

論文の中で発表されたのは、以下の3点です。

・肉の消費量を現行1/3に抑える
・穀物を家畜の餌としてできるだけ利用しない
・食品ロスを減らす

この3つのポイントを変えることができれば、有機農業で全世界の人口を養うことは可能であると結論付けました。

肉の生産はとても多くの土地を必要とします。

慣行農業では狭い土地で家畜を効率よく育てるため、温室効果ガスが発生し面積あたり排出量は11倍増えるとされています。

有機農業では畜産一頭あたりの飼育場面積が大きいため窒素量が抑えられます。

肉の消費を抑えることは大量の土地の確保につながるとされ食料安定になり得ます。

また温室効果ガスの排出が減ることで環境保護になっていくというのが一つ目の項目です。

二つ目は慣行農業は穀物をはじめ多くの飼料を必要とする点の対策です。

穀物は人間の食糧でもあるため、動物と人間との間で争奪が起きます。

牛は草を主食とし、豚は雑食ですが、動物の成長を早めるため、生産性を求めるために穀物を餌として与えられます。

この状況は動物にとってストレスとなります。

一方で有機畜産の場合、飼料穀物の使用は国によって異なりますが限度があります。

生産性ばかり求める環境とは違い動物にとってもストレスが減り、人間と動物間の穀物の争奪も減るわけです。

三つ目の食品ロスはかなり深刻な問題があり対策が必要です。

国際連合食糧農業機関によれば現在は1/3の食品が廃棄されているという現状です。

飢餓人口が増えている一方で先進国では飽食が発生しているのです。

食品ロスを縮小させるためにロスとなる生産を減らし、その分空いた土地を持続可能な有機農業に変え有効利用することが目的となります。

有機農業で全世界の人口を養うことを実現するには、誰かほかの人に任せるのではなく、私たちひとりひとりの行動が必要不可欠です。

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消費者の選択肢やライフスタイルを変えていく必要性



前述の次世代コストからも考えられるように、私たちは今が楽しいだけでは将来の健康どころか持続可能な未来ですらも救えません。

『オーガニック=高い』

というイメージはどう変化されたでしょうか。

オーガニックライフを選択している方であれば、その選択に自信を持てます。

オーガニック関連に従事されている方は今後、おそらく需要がさらに高まっていくと予想されます。

私たちにできることは、

・最低限必要なものだけを厳選して消費すること
・無駄をなくすこと
・ものの本当の価値を知って消費すること

なのです。

おそらく、何度も同じことを繰り返しているように聞こえますが、やはりこれに尽きるからです。

そして、今回もっともお伝えしたいことは、

『何かを選択するときに大切なのはオーガニックと危険な食品どちらが痛みを避けられるか』

ではなく、

『オーガニックが素晴らしいから、オーガニックが好きだから、地球や生態系への愛で作られたものだから』というポジティブな理由から選択されると、もっともっと選択に自信が持てると考えます。

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